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新しいラグジュアリーとは? ものづくりと消費を真摯に見つめ直した、スタイリスト井伊百合子の新たな冒険が伊勢丹で始まっています。

様々なブランド、メーカー、企業がそれぞれのやり方で、エシカルなものづくりのやり方を模索しています。大量に作って大量に売る。余ったものはセールにかけて、それでも売れなければ…。こうした現状をよしとせず、新しい流通、循環方法が次々に生まれています。

今回ご紹介するのは、「あたらしいラグジュアリー」をテーマとする伊勢丹新宿店本館4階のセレクトショップ「プライムガーデン」と、スタイリスト井伊百合子さんによる共同プロジェクト「アンドイシュー(&ISSUE)」です。

現状のファッションサイクルを問題視していた両者が、完全受注生産という手法で始めたプロジェクトです。

今回、この考えに共感した6つのブランドと共作アイテムが制作されました。

CIOTA〉DENIM PANTS:BLACK/BLUE ¥29,700 / WHITE ¥27,500

素材は〈シオタ〉のシグネチャーである希少性の高いスビンコットン。「ゴワゴワしていたデニムのイメージが変わる、肌馴染みのいいデニムで一日中穿いていられる」とは井伊さんのコメント。ハイウエストでテーパードのかかったスリムフィットは〈シオタ〉にはない、今回の企画ならではのプロポーションです。

HERILL〉CASHMERE SWEATER:GOLDEN CASH ¥61,600 / BLACK ¥50,600

“ゴールデンキャッシュ”と呼ばれるベージュ色のセーターは、カシミヤのなかでも特に希少性が高く、無染色特有の原毛そのままの風合いを存分に楽しむことができる素材。家庭用洗濯機での洗濯が可能なうえ、毛玉ができづらく使うほどに“とろみ”が生まれるのが特徴です。タックインしてもボトムスのなかでごわごわしないように、ウエストはやや細くフィットするようにアップデートしています。

これらのブランドはもともと「プライムガーデン」で展開していたり、井伊さん自身が着用するだけでなく、雑誌の紙面などでも紹介をしてきた作り手たちだそう。

40歳を目前に控えた井伊さんが、これまで様々なファッションのありようを見聞きしてきたなかで、思い、感じたことをそれぞれのデザイナーと対話することで、今回のコレクションは誕生しました。

LOEFF〉SIDE SLIT MAXI COAT:¥99,000

深いスリットと曲線的なカッティングがフェミニンな雰囲気を漂わせる〈ロエフ〉のマキシコート。素材にはリサイクルウールを使用しています。コートのシルエットに変化をつけられるベルトが付属するものの、ベルトループをあえて排除したのは、井伊さんが試行錯誤を繰り返したのちにたどりついたディテールだそう。

AUBETT〉SHIRT DRESS ¥53,900

立体的で美しいコクーンシルエットが特徴の〈オーベット〉のシャツドレス。高密度に織り上げた、オリジナルのコットン生地を採用しています。リラックスした雰囲気になるラグランスリーブを採用しつつも、通常より襟先が長く、剣先が鋭く尖っているのが特徴で、シャープな印象が独特のコントラストを生んでいます。

このコレクションは「伊勢丹新宿店」本館4階ザ・ステージ♯4と、三越伊勢丹オンラインストアにて開催されている、一般受注会にて注文を承っており、11月頃より随時デリバリーを行っていきます。

BEAUTIFUL SHOES〉RACE UP SIDE GORE BOOTS ¥68,200

「10年間、こんなはき心地のいいブーツに出合うことはなかった」とまで井伊さんに言わしめた〈ビューティフル シューズ〉のブーツ。廃盤となっていたこのモデルが、つま先部分の丸み、かかとのシェイプなど、細部をチューニングして復活しました。

SEEALL〉WORK JACKET ¥53,900 / BELTED PANTS ¥38,500

セットアップでの着用可能な〈シーオール〉のワークジャケットと、太めのベルトがウエストに配されたハイウエストパンツ。生地は井伊さんが一目惚れしたという、異なるウールのたて糸とよこ糸を、交互に編んで生まれるシャンブレー生地。このグレーとベージュの中間にあるような上品な色合いも魅力のひとつです。

ちなみに、このプロジェクトはシーズンレスに今後も継続していく予定だそう。ものを買うという行為を改めて見つめなおさせてくれるこの企画、継続して注目していきたいと思います。

最後に今回の企画に際しての、井伊さんの言葉を掲載させていただきます。

————–

直感は大事です。でも、瞬間的な直感だけではものが買えない、と最近特に感じています。ものを買うときに、頭のなかに引っかかる懸念があります。十年後の私も持てるだろうか。どんな人、どんな考えによってつくられたものか。愛せる理由はあるだろうか。

そういった課題に納得したうえで買い物をしたいのだけれど、買い物をする客としてお店に足を運ぶとき、 もののデザインの工夫や価格のワケ、生産の背景を知る機会は少ないように感じていました。 欲しいときにすぐに買えて、シーズンごとに絶えず移り変わり、 セールにかけられるものを嬉しく感じることにも、これでいいのかな? と思うことがあります。 生活の大切なピースのひとつである“衣”をとりまくスピード感や、ファッションの提案のされ方が、 40歳を前にして、自分の価値観とずれてしまっているように感じたんです。

今回、お話をいただいたときに、受注生産という方法、また、デザイナーさんの考えを伝える機会をつくることを提案させていただきました。ひとつのものができあがるまでの時間を発信し、アイテムが届くのを待つあいだも、商品がつくられていく過程をインスタグラムで実況中継のようなものをお届けできればと考えています。

デザイナーさんからは、受注生産が、産業システムのなかで必ずしも正しいあり方であるとは限らないと聞くこともありました。一部分に負担が集中することのないよう、プライムガーデンを含めて話し合いをし、ブランドごとによりよい方法を取ることになっています。

ものを作る過程で、デザイナーさんが語ってくれたイシューや、それにたいして行われている工夫を学ぶことは、とても楽しいこと。作り手の話を聞いて、この人のつくったものならばやはり着続けたい、と思う言葉がたくさんありました。私自身も受注会に立って、その言葉もみなさんに伝えていきたいです。

明日から着られる。そんな楽しさもあります。でも、私自身がそうであったように、服はどうやって選ぶのだっけ?と見つめ直す時期になっている方がいらっしゃるかもしれません。⻑い目で考えたときに欲しいものであるのかどうか、どんな人がつくっているのかを知ることができ、ひと呼吸置いて考えられる買い物が選択肢があったらいいと思いました。

感覚的な喜びだけでなく、納得してファッションに力をもらい、一過性でないものへの愛着が育つきっかけにこのプロジェクトがなったら嬉しいです。そして、それぞれの作り手のアイデアと技術によってうまれたすばらしいものが、 共感していただける方のもとに届いて、 あたらしいファッションの楽しさにつながっていってくれたら嬉しいです。

井伊百合子

INFORMATION

&ISSUE

会場:伊勢丹新宿店 本館4階 ザ・ステージ#4、三越伊勢丹オンラインストア
会期:9月1日(水)〜9月7日(火)

井伊百合子
スタイリスト。東京生まれ。文化服装学院で服づくりを学びながら、同級生がつくる服の「見せ方」に興味を持ち、在学中よりスタイリストSonya S.Park氏に師事し、さまざまな出自の洋服やプロダクトを知る。「白シャツのように着る新しい日常をつくるきもの」をコンセプトに、 現代の生活に馴染む着物を提案するブランド〈THE YARD(ザ・ヤード)〉 ではアドバイザーを務めるほか、2021年にはファッションが持つポジティブな 力を社会問題につなげていくためのプロジェクト「+IPPO PROJECT」を、編 集者の渡部かおりさん、フリーPRの枝比呂子さんと始動。第一弾として、総勢 23名より愛用品をつのり、オンラインサイトとやポップアップ形式でバザーを 開催。一部経費を除く売り上げ1,358,927円を児童養護施設等を出た方々の自立 を支援するアフターケア施設「ゆずりは」へ寄付。貧困や虐待といった社会の 問題をより多くのひとに知ってもらうきっかけとなる活動を行う。

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