スタイリストとしてのみならず、写真に映像制作、はたまたブランドディレクションまで、肩書きにとらわれることなく自由に表現活動を繰り広げる梶雄太。そんな彼が自ら綴った〈サンセ サンセ〉の商品説明を、ランダムに紹介していく連載企画。今回は新しい生活にピッタリな真っ赤なパンツに秘められたストーリーをお届けします。
もう引っ越しは決まったかに見えた。
目黒から私鉄にのり10分そこそこで着く駅を降りる。環状道路を歩き1本奥に入ると、そこは緑の多く残った閑静な住宅街が。
生活と生業が混ざり合いながらも穏やかな空気のながれるその街に、モダンな賃貸物件を見つけたのは彼女の方だった。
日常から感じるセンスの良さは付き合って長くはないが認めざる得ない。かといって身の丈以上に背伸びしたことをやりたがるということでもないそのバランスの良さというのが自慢の彼女だ。
ステイホームが続くことで、職場を気にすることなく生活の場所を選べるようになったこのタイミングで、新しいスタートを2人で切る予定だった。
ほんの数日前まで。
新しい生活にピッタリのパンツを見つけたという彼女の写真はホルダーから消えない。外にいくのも、家の中でもすごく調子が良いといっていた赤いベロアのパンツ。まさか自分より必要なモノだったとは思いもしなかった。