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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.53 “知ることで面白みが増す”真っ黒グツ。90’s〜00’sのジャーマントレーナー。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

気が付けば7シーズン目に突入した本連載。ショップも入れ替わってリスタート。第53回目は、原宿にある「ダメージドーン 2nd(DAMAGEDONE 2nd)」の酒井元太さんの2巡目。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


酒井元太/DAMAGEDONE 2nd バイヤー
Vol.53_アディダスとプーマのミリタリー・トレーニングシューズ(90’s〜00’s)

―今回、紹介していただくニュー・ヴィンテージは、どんなアイテムでしょうか?

いわゆる“ジャーマントレーナー”と呼ばれるドイツ軍のミリタリー・トレーニングシューズです。よく知られているのが、1970年代に西ドイツ軍の演習用に開発され、1994年まで制式採用されていたインドア用モデルですね。ホワイトのレザー×スウェードのコンビアッパーとガムソールが特徴的で、皆さんが想像するのはコレだと思います。

―〈メゾン マルジェラ(Maison Margiela)〉などのメゾンブランド、「リプロダクションオブファウンド(REPRODUCTION OF FOUND)」といったシューズブランド、さらには有名セレクトショップからも、同モデルをサンプリングしたシューズがたくさんリリースされていますよね。

ですね。最近は生産を請け負っていたという〈アディダス(adidas)〉や〈プーマ(PUMA)〉からもリリースされているみたいですし、いまに始まったワケではなく、ずっと注目されているといった方が正しいでしょうね。で、今回紹介するのは、それよりも後の1990年代から2000年代にかけて採用されていたモデル。このオールブラックかつ“ハイテクまでいかず、けれどローテクじゃないランニングタイプ”っていう絶妙な塩梅がイイですよね。いまや市民権を得たダッドシューズともちょっとジャンルが違う感じがしますし。

アディダスのミリタリー・トレーニングシューズ ¥13,200(ダメージドーン 2nd

ー的確な言葉を当てはめるとしたら“スポーティ”ですかね。

そんな感じですね。そもそもスポーツブランドがサプライヤー(製造供給業者)になることってあんまりないんですよ。例えば、アメリカ軍でも〈ナイキ(NIKE)〉や〈ニューバランス(new balance)がサプライヤーとして一時期は製作するんですが、有名メーカーにつくらせるとコストもかかるんでしょうね。だからか本当に短い期間で終わっちゃうことが多く、あまり世の中に出回ることもないっていう。

ーシューズ自体の特徴でいうと?

防水加工されたレザーとメッシュで高い防水機能と通気性を両立している点と、トラクションラグを備えたアウトソールですかね。これにより、どんな路面やシチュエーションでも優れた衝撃吸収力と安定したグリップ力をキープしてくれるというのも、ミリタリー・トレーニングシューズならでは。同じ〈アディダス〉製ですが、こっちの方はもうちょっと新しめで2000年代でしょうか。

アディダスのミリタリー・トレーニングシューズ ¥16,500(ダメージドーン 2nd

基本は一緒ですが、ソールがよりタフなつくりでトレイルランニング用のモデルに近い印象。アッパーサイドに“gsg”と刻まれているのは、ドイツ連邦警察の対テロリズム特殊部隊であるGSG-9の名前を冠したタクティカルラインだからみたいです。ハイカットのブーツタイプはミリタリーショップに出てきたりしますが、このローカットはかなり珍しいんじゃないかなと。ぼく自身も今回の買い付けで初めてみました。

ーなるほど。で、こちらは〈プーマ〉ですか。こんなのもあるんですね。

これも初めて見ました。このブランドセレクトもまた、ザ・ドイツって感じがしません? しかも〈プーマ〉と〈アディダス〉の関係性を知っている人間から見たら、「へ〜そこいく!?」って感じで面白いですし。デザインとしては、アッパーサイドにラバー素材のフォームストライプがあって、内側におなじみのプーママーク。正直このマークは無くても全然構わないんですが(笑)、イナタイ感じが好きな人にはたまらないでしょうね。

プーマのミリタリー・トレーニングシューズ ¥13,200(ダメージドーン 2nd

ーシュータンに“AXIS”と記されていますが、これはモデル名とかなんですかね?

調べてみたところ、そのようです。元々「アクシス」というベースモデルがあって、それをオールブラックに色替えしたのがコチラ。時代的には2000年代前半かなと。このメッシュ素材の粗さもどことなく懐かしさあって、2000年代のテックスタイルが注目されているいまの気分にハマりそうですよね。

ーオールブラックは今回紹介してくれた3足に共通する特徴ですが、ただの真っ黒なインラインモデルとの判別基準ってあるんですか?

経験則と買い付け時のディーラーの証言というところがほぼ9割。それぞれ得意とするジャンルがあるので、ミリタリーを専門的に扱うディーラーならまず間違いないっていう。ウチだと他にもイギリス軍に納入している〈マグナム(MAGNUM)〉なんかも買い付けています。最近だと、アメリカ軍に納入されていた〈ニューバランス〉の「M950V2 ミリタリー トレーナー」が高騰中ですが、この辺の〈アディダス〉や〈プーマ〉になると、年代はほぼ変わらないのにまだまだマイナー。なのでアイテムの背景を知らないと、ただの真っ黒くてオジイちゃんっぽいスニーカーとしか思われない。でも、そこがイイんです。“知ることによって面白みが増す”。それって、すごくニュー・ヴィンテージじゃないですか。

ーしかも配色もデザインも使いやすそうです。

最近だと〈サロモン(Salomon)〉なんかを履くような感覚で合わせてもらってもイイですし、オールブラックなのでスタイルに囚われず、いっそモードに振っていただいてもアリかと。〈コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)〉などのデザイナーズブランドの足元にハズしで履くみたいな。あといまって、インポートならではのスニーカーがほぼないじゃないですか。日本でも同じ仕様で発売されるし、国内と海外のリリース時期が一緒で、周囲に先駆けて買えるってこともなかったりして。そういう意味では“海外限定&ほぼユーズドでしか出てこない”という希少性が、40代以上のインポート世代にも刺さるのではないかなと。

酒井元太 / DAMAGEDONE 2nd バイヤー
20歳で有限会社UTMに入社し、同社が運営するセレクトショップ「ロウドリップ(RAWDRIP)」のショップスタッフとなる。以降は「ロウドリップ 2nd(RAWDRIP 2nd)」、「ダメージドーン2nd(DAMAGEDONE 2nd)」と順調にキャリアを重ね、アパレル歴は14年。現在はプレス業務と並行してバイイングも担当している。
公式サイト:damagedone2nd.stores.jp
インスタグラム:@damagedone2nd

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