そもそもニュー・ヴィンテージとは?
1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
気が付けば7シーズン目に突入した本連載。というワケで、ショップも入れ替わってリスタート。第54回目は、下北沢にある「ソーワットヴィンテージ(sowhat vintage)」の加藤太郎さんの2巡目。
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
加藤太郎/sowhat vintage オーナー
Vol.54_ハンドメイドのニットキャップ
―今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?
ハンドメイドのニットキャップはどうでしょうか? 最近だと花柄やパットワークのエクアドルニットが人気ですし、古着だけでなくファッション業界全体でそういったホッコリしたクラフト感のあるアイテムの流れっていうのを感じているので、そういう意味でもイイのかなと。ウチも今年で開店4年目になるんですが、ぼく自身が好きなノリなので、割と初期から取り扱っていて好評をいただいています。
―そもそも、どうやって“ハンドメイドか、そうでないか”を見分ければイイのか教えてください。
これはもう一目瞭然。製造国や使用素材などが記載された品質表示タグがあるかどうか。あとはボディに使われている糸もポイントですね。よく見かけるのが、手芸用で太めのアクリルニット糸。これで編まれたニットキャップは伸縮性があってフィット感は良いのですが、質感的にウール糸に比べて少々チープ。その感じもハンドメイドらしいなって。またローゲージ編みが多いのも特徴。ぼく自身、編んだ経験がないので分かりませんが、手編みでハイゲージは技術的に大変だからなのかなと。
―品質表示タグがないとなると、良し・悪しの基準は?
モノの良し・悪しというのは特にありません。なんなら手編みでさえあれば、年代がどんなに新しくても全然アリ。ただ、ぼくが買い付ける際の基準としては、チェック柄や洒脱な配色などファッションのフィルターを通していると感じられるようなモノは、できるだけスルーしています。それよりも、お母さんやおバアちゃんが家族のために編んだような、どこか温かみが感じられるモノがいまの気分です。
―ここ日本でもリサイクルショップやフリマアプリで見かけますが、アメリカで買い付けてきたモノとは、どんな違いがあるんでしょうか?
これまたタグ同様に一目瞭然なんですが、アメリカ製でハンドメイドのニットキャップは…基本的に派手です(笑)。日本だと茶色や渋い色で編まれがちなんですが、そこはアメリカ人の感覚なのか、ぶっ飛んだ色の組み合わせや派手なミックス糸を使っていることが多いですね。もし無地の単色だとしてもパキッした色合いで、どこかアメリカらしさを感じさせたりとか。それを現地では、いつもの格好+防寒として深めに被るっていうのがスタンダードな取り入れ方です。
―海外のニュース番組なんかでよく見る、あのラフな感じですね。形状というかデザイン的に人気のタイプってあるんですか?
「これは新品で作らないないなぁ」っていうデザインのモノですかね。冒険した配色とか。買い付け時に定番人気の黒も探しはするんですが、それよりも珍しい色の方が我々のテンションもアガりますし、お客さんからも喜ばれますね。あと、シルエット的に被りやすいモノはちょっと値段を高めにしちゃいます。折り返し部分が長すぎずちょうど良い被りの深さだったり、配色が良かったりとか。
―なるほど。モノ自体というよりも、“それをどう自分なりに楽しむか”という点に主眼を置くなら、そうなって当然かと。お客さんの反応はいかがですか?
ウチで買っていくお客さんだと、スケーターもいればシティボーイもいるし、女子もいたりと幅広い層に受け入れられているように感じます。被り方としてもテイストを合わせるのも正解だし、あえてハズしても正解。古着を選ぶ理由が、以前なら“誰かと被るのがイヤだから”という声が多かったと思いますが、最近は“流行っているから”という理由が多数派。なので、みんな同じモノを探しているじゃないですか。その点、“自分だけのモノ”を見つけることができるし、本来の古着の楽しみ方がここにはあるのかなと。
―若者層だけではなく、大人の古着好きにも、ぜひチャレンジしてもらいたいですね。
本当にそうですね。それこそデニムやミリタリーといったトゥルー・ヴィンテージのアイテムに合わせることで、程よいヌケ感が出せますし。ウンチクや背景を知った上でモノ選びをするのは、ぼくも好きですが、ここで紹介したようなハンドメイドのニットキャップの場合、セレクトする人自身の感性がすべて。どうやって被るかも自由ですし、提供する側としても「この人はどうやって被るんだろう?」と想像する楽しさがある。非常にオススメです!
加藤太郎 / sowhat vintage オーナー
20歳で「フラミンゴ(FLAMINGO)」に入社し、「フラミンゴ 下北沢店」で5年間勤務。その後、独立してヴィンテージ・オンラインストア「ソーワットヴィンテージ(sowhat vintage)」を開店。2021年に下北沢に実店舗をオープン。古着のヘッドウェアとのヴィンテージのフラワーベースをセレクトし、早くも多くのファンを擁する人気店に。
公式サイト:sowhatused.thebase.in
インスタグラム:@sowhatvintage_shimokitazawa