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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.55 みんなが知ってる定番ブランドの “誰もがスルーする”普通のカットソー。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

気が付けば7シーズン目に突入した本連載。というワケで、新たにショップも入れ替わってリスタート。第55回目は、下北沢にある「マッド(MUD)」の石橋 卓さんの2巡目です。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


石橋卓/MUD オーナー
Vol.55_ジェイクルーとギャップのカットソー

―さて、今回ご紹介いただくニュー・ヴィンテージアイテムは?

2巡目なのでちょっと玄人目線で隙間を狙っていこうかなと。題して“皆さんご存知の定番ブランドがつくっている普通のカットソー”。古着で高騰化するアイテムって、基本的に“人気があってどこのお店でも取り扱いたがるから入荷が難しく、希少価値が上がる”ワケですが、これは真逆。普通は、パッと目につくキャッチーなアイテムを仕入れるんですよね、同業者の皆さんも。そこでスルーされるのが、1990年代〜2000年代の近年もので何の変哲もない普通のカットソー。なので欲しくなって古着屋を探したとしても、まず手に入らない。そりゃそうですよね、みんな仕入れていないから(笑)。

―どんな普通の古着屋はスルーするようなアイテムの、どこに面白さを見出すのでしょうか?

気分というか、単純に「ぼく自身が好きで愛しているから」というのはありますが……まぁ、実際に見てもらった方が話が早いかもしれませんね。まずは〈ジェイクルー(J.CREW)〉のボーダーカットソーから。このあたりのアメリカントラッドがベースにあるブランドで多いのがヘンリーネックタイプ。しかも杢ベージュ×ネイビーでこのピッチ幅のボーダー柄なので、パジャマっぽさもありますが、生地が絶妙な薄さで着心地も抜群。白タグの90年代のもので、生産国は中東のイスラエル。そう聞くと、このリラックスしたシルエットと着用感も土地柄かなと考えてみたりして(笑)。

ジェイクルーのヘンリーネックカットソー ¥8,690(マッド)

―なんか雰囲気もいいですよね。

シレッと猫目ボタンもちょっとクラシカルな雰囲気で、褪色した風合いや裾のネジレも古着ならではですよね。この辺の年代で大手企業がつくっているカットソーってそれぞれにこだわりが強く、インナーのみならず単体でも着用できるものが多いんです。着こなし方としては、カーディガンを重ねてもイイし、半袖Tシャツとレイヤードしてもよさげ。せっかくのヘンリーネックだからと首元をあまり意識せず、あくまでベースアイテムとして使うといいんじゃないでしょうか。ぼくなんかはこれ1着で1日中語れちゃいます。

―で、続くこちらの無地タイプも〈ジェイクルー〉ですね。

先ほどのよりも新しめで2000年代ですね。生産国はカナダ。同地はニット製品でも有名で、これもすごく柔らかくて肌に馴染みます。デザインに関しては本当にシンプルそのもの。袖リブもなく、申し訳程度の胸ポケットが付いているだけ。あとは特筆するような点はないので、普通のバイヤーなら多分素通りしちゃうんじゃないですかね。「まぁ、いいや」って。ですがその「まぁ、いいや」っていうのを、ぼくはいちばん欲しいんです! そういった意味では、これはベストな1着と言えます(笑)。

ジェイクルーのポケット付きカットソー ¥8,690(マッド)

―最後に、いちばんシンプルなヤツがきました。

先ほどの2着に比べると国内でも知名度の高い〈ギャップ(GAP)〉ですが、いわゆる“オールドギャップ”ではないやつ(笑)。モックネックで無地の白。生産国は北マリアナ諸島というのも珍しい。インナーとしても最高ですが、Mサイズでも首周りゆったりで身幅広め着丈短めのシルエット。気負わずダルユルッと着ることができます。こんなの何着持っていても困らないやつですが、先述のように古着屋ではなかなか出会えません(泣)。

ジェイクルーのポケット付きカットソー ¥8,690(マッド)

―これらの良し・悪しはどんな部分で決まるんですか?

自分が良いと感じるかどうか。傍目にはどこのブランドか分からないけど、着ている本人はその良さが分かっている。その一種の優越感といいますか、いわゆる江戸っ子的な、見えない部分へのこだわりにも通じます。あとは道具としてではなく、ファッションアイテムとしてつくられているかどうかも重要かなと。大量生産ではあるけれど、そこにつくり手の意志が介在してるように感じられるモノならば、次なるヴィンテージとして残っていく可能性があるんじゃないでしょうか。古着ビギナーの方も、これらを入り口に少しずつステップアップしていくことで審美眼も肥えていくと思うので、ぜひ探してみてください。高難易度の宝探し感覚で楽しいですよ。

石橋卓 / MUD オーナー
原宿の「スプラウト・セカンド(SPROUT 2nd)」、「バド(BUD)」に勤めて、約10年間の経験を積んだのちに独立。2019年、下北沢に自身がオーナーを務める古着屋「マッド(MUD)」をオープンさせて、今年で3年目を迎えた。同店は、多種多様なスタイルを持った多くの人々が楽しめるよう、幅広いラインナップが特徴。古着を通して“服を着る”楽しみを伝え、インスタグラムのフォロワーは1.4万人超え。
公式サイト:mud1484.thebase.in
インスタグラム:@1____mud____1

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