〈メゾン マルジェラ（Maison Margiela）〉が新作のスエットシャツに採り入れたのは、“メモリー オブ”。かつての記憶を可視化するという試みで、トロンプルイユ（だまし絵）に通じるテクニックを用いている。といっても分かりにくいかも知れない。モノをみながら説明してみよう。
フロントポケットとVガゼットのあたりを見てほしい。そこだけ色が濃くて、まるで着込むうちに剥がれてしまったかのよう。これはフロントポケットとVガゼットを縫いつけた状態でサンドブラスト加工を施し、そののちにそれらパーツを取り払う――というなんとも手間のかかった工程を経て完成している。
カレッジスピリッツがプンプン漂うアップリケも見逃せない。“マルジェラ・リバース・アップリケ” と名づけられたそのアップリケはお尻の “LA” のみ、アップリケが剥がれ、ステッチ糸のみが残っているようなデザインワークが駆使されている。
いずれも移ろいゆく時の流れをかたちにしたものであり、“デストロイコレクション”、あるいは、“ポペリズム（貧困者風）” を賛辞としておくられた〈メゾン マルジェラ〉らしいギミックである。
一枚一枚丁寧に加工することで、ヴィンテージかと思うような風合いに仕上げられたスエットシャツ。どれも細かな部分までこだわった、〈メゾン マルジェラ〉らしい手の込んだつくりになっている。上から¥136,400、¥136,400、¥138,600、¥102,300
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa
