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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.58 “引き算を知らない主張の強さ”。噂のシルバーメダルはマジいまっぽい。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

本連載も8シーズン目に突入! というワケで、前回からショップがすべて入れ替わってリスタート。第58回目は、高円寺にある「ヒムセルフ(HIMSELF)」の佐藤さん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


佐藤友軌 / HIMSELF ディレクター
Vol.58_リーバイス®︎“シルバーメダル”のデニムジャケット

―佐藤さんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

ぼくというか「ヒムセルフ(HIMSELF)」としては、古くからトゥルー・ヴィンテージと認知されているブランドが手掛ける、80年代以降のレギュラーアイテムという認識です。要は過去から存在するブランドの年代が新しいもので、いまこの時代になって、“新たなヴィンテージ”と呼ぶに値するモノという感じでしょうか。その判断基準のひとつに、マーケット出てくる個体数の多寡はあると思います。いわゆる希少性というか。同じモデルが沢山見つかるのではなく、その中でも珍しいモノの方がニュー・ヴィンテージと呼べるのかなと。

―なるほど。トゥルー・ヴィンテージ的な価値基準ともいえますね。

そうですね。それが売れてしまったら、次はいつ仕入れられるかも分からないということは、それだけの価値があると思います。今回紹介するアイテムなんてまさにそう。〈リーバイス®︎(Levi’s®︎)〉の“シルバーメダル”というシリーズのデニムジャケットで、シルバーメダル型のボタンが付いているのが特徴です。

リーバイス®︎“シルバーメダル”のデニムジャケット ¥36,300円(ヒムセルフ)

―“シルバーメダル”というシリーズ自体、今回はじめて知りました。

本当に去年くらいじゃないですかね、注目されるようになったのは。これまでも存在はしていたけど、みんな気にしていなかったんだと思います。「なんか変形デザインだなぁ……あれ、よく見たらボタンが違う!?」みたいな感じで、今年に入ってから古着マーケットでもチョコチョコ見かけるようになりました。ウチで他店よりも圧倒的に取り扱う機会が多いんですが、とにかく珍しいデザインの個体が多く発見されますね。

―たしかにこのアイテムからも、直感的な面白さがビンビン伝わってきます。

このシリーズは生産時期が80年代でストーンウォッシュのデニム生地が余っていたのか、同素材が使われているモノが多いんですが、このデザインはぼくも初見。ブラックデニムとブルーデニムで切り替えになっていて、袖部分がジッパーで外れてベストにもなります。生産タグを見ると香港製と記されていますが、他にはカナダ製やアメリカ製も見つかります。基本的にカナダ製で変形デザインのアイテムには、サンプルのスタンプが押してあったりしますね。なので「まず1着作ったけど、コストなどの問題で生産にまで回せずサンプル止まりだった」という可能性も考えられるなと。

―「生地が余っていたから試しに作ってみた」説はありえそう。

〈リーバイス®︎〉は売れ残ったデニムパンツをカラー染めして在庫処分していたなんていう背景もありますし、これも多分、余り生地で作ったんだろうなと考えられます。その想像を裏付けるのが、身頃脇に付けられたネームタブ。これもモデルによって色が全部違うんです。基本はこの年代のこういったアイテムって白地に赤文字が多いんですが、コレは紺地に銀文字。他には見ないのでレア個体だと考えられます。

―へ~。見ていくとデザインやディテールにも80年代という時代を感じますね。

裏地にボアが貼られたモノが多くて、よく見るのはA-2ジャケット型。他にはトラッカージャケット型なんかも見たことがあります。これもやっぱり身頃は裏ボア。フロントや胸ポケットにもかなり大雑把なジッパーが使われていたりして、すごくデコラティブなので見ていて楽しいんですよね。さり気なくオシャレっていう世の中的に理想とされている感覚の真逆(笑)。この「珍しくないですか!?」とガンガン主張してくる感じは、今の時代にこそマッチすると思います。

―佐藤さん的にはどう着こなすのがオススメですか?

ヴィンテージに横ノリやカルチャーの匂いがするアイテムを合わせるのが好きなので……パリッパリにプレスされたチノパンに〈レッドウィング(RED WING)〉のブーツを合わせて、そこにいまだったら〈オークリー(OAKLEY)〉や〈アークテリクス(ARC’TERYX)〉のビーニーやアイウェアを頭・顔回りにプラスする。ぼくの中で〈リーバイス®︎〉=アメカジの象徴と捉えているので、あえてコテコテの着こなしに横乗りの雰囲気や今っぽいテックの要素を足してあげると、若い世代の子たちにも刺さる着こなしが楽しめるんじゃないかなと。

佐藤友軌 / HIMSELF ディレクター
19歳で大宮の名店「ダフヴィンテージ(DUFF VINTAGE)」に入社。その後、上京して高円寺「スラット(SLAT)」、ドメスティックブランドのデザインサポートを経て、再び高円寺にカムバック。自身の古着屋「モーニンググローリー(MORNING GLORY)」を立ち上げる。2021年、移転と同時に屋号を「ヒムセルフ(HIMSELF)」に改名。同店は、“お客自身(=HIMSELF)が店を介して「古着の行方をどう担うのか」楽しんでもらうとともに、店自体(=HIMSELF)も構築されていく楽しさを味わう”というコンセプトを掲げる。
公式HP:thebase.page.link/nb84
インスタグラム:@himself_tokyo

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