CLOSE
NEWS

連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.62 “イケてるヤツが着るから格好いい”。そんな時代のアク強スノボウェア。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

本連載も8シーズン目に突入! というワケで、ショップが全て入れ替わってリスタート。第62回目は、高円寺にある「ヒムセルフ(HIMSELF)」の佐藤さんの2巡目です。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


佐藤友軌 / HIMSELF ディレクター
Vol.62_プロラインのスノーボードジャケット

―今回紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?

色々と考えたんですが、最近ウチでも積極的に買い付けている1980年代〜90年代初頭のスノーボードウェアを紹介したいなと。近年は〈オークリー(Oakley)〉を筆頭としたテック系のヴィンテージギアが人気となっていますが、これはそのアーリータイムに登場したアイテムといえます。

―調べてみたところ、いまやスノボ界のリーディングブランドとなっている〈バートン(BURTON)〉が、ゲレンデを滑走できるギアを開発して、大量生産体制を築いたのが1980年代中頃。その後の1990年代に爆発的ブームとなるので、まさにブーム前夜ですね。

そうですね。ただ同時期のアウトドアウェアに比べると素材もゴアテックス®などの高機能素材を使っているわけではなく、普通のナイロンが基本。総体的に機能性という観点ではなく、単純に見た目の格好良さ重視のアイテムがすごく多い印象はあります。これはUSブランドですが、同じようにユーロ圏のスノーボードウェアにも面白いモノが見つかりますね。

プロラインのスノーボードジャケット ¥16,500(ヒムセルフ)

―タグには〈プロライン(PROLine)〉と記されていますね。初見のブランドですが、とりあえず“良いツラ”してるってことは分かります。

まさにソレです! ブランドのネームバリューに頼らず、純粋にモノとして楽しめて、かつ評価することが出来るという意味では、既存のアイテムを新たな価値観で再定義するニュー・ヴィンテージらしいアイテムなんじゃないかなと。

ー結構、出てくるんですか? この辺の時代のスノボウェアって。

正直、メチャクチャ出てくるので逆にピックするのが難しいんですよ。だからウチではこういったパネル切り替えの派手なデザインや、独特なディテールを備えた格好いいモノを厳選しています。これなんて黒をベースにラスタカラーで、トライバル柄や幾何学模様をランダムにパッチワークしていてインパクト大。首元と袖、裾がダブル仕様になっているのは、雪の侵入を防ぐのと防寒性を考慮したディテールだと思いますが、単純にデザインとしておもしろくないですか? こういった他にはないオリジナリティも魅力ですし、機能性云々ではなく単純に着ていてテンションを上げるためだけのウェアっていうノリが最高です!

―祭りの装束やスポーツのユニフォームと同じような感覚ですね。

そうです。スノボだけでなくスケボーにも言えますが、イケてる人が多いじゃないですか? やってる人たちって。で、そのイケてるヤツなら最先端のイケてるウェアを着るのが当然でしょっていうあの頃ならではの“服が着ている人を引き立てる”のではない感もイイんですよ。“誰が着ても格好いい”ではなく、“イケてるヤツが着るから格好いい”というピーキーな感じ。ちなみに中綿入りですが、夏以外のシーズンはギリいけると思います。

―なるほど。では「ヒムセルフ」としてはどういった着こなしを提案しますか?

ボトムスは何でもイイけど、たとえば無地グレーのスウェットパンツで、足元はいつものスニーカーとかどうでしょうか? ご覧の通りアク強めのデザインなので、そこをシンプルなアイテムで中和させつつ、〈グッチ(GUCCI)〉などハイブランドのサングラスや〈クロムハーツ(Chrome Hearts)〉のようなゴリゴリのシルバーで攻める。そういったあえての無秩序感というかカオスな感じがぼくは好きですね。

―そもそも“着こなしの正解”がないからこその自由度の高さが魅力なんですね。

ウチではアメリカで買い付けをしているのですが、当地のディーラーの間でもジャンルとしてマーケットが定まっているわけではありませんからね。でもだからこそ、「ヒムセルフ」のフィルターを通して提案出来る。皆さんも好きに着ちゃってください!

佐藤友軌 / HIMSELF ディレクター
19歳で大宮の名店「ダフヴィンテージ(DUFF VINTAGE)」に入社。その後、上京して高円寺「スラット(SLAT)」、ドメスティックブランドのデザインサポートを経て、再び高円寺にカムバック。自身の古着屋「モーニンググローリー(MORNING GLORY)」を立ち上げる。2021年、移転と同時に屋号を「ヒムセルフ(HIMSELF)」に改名。同店は、“お客自身(=HIMSELF)が店を介して「古着の行方をどう担うのか」楽しんでもらうとともに、店自体(=HIMSELF)も構築されていく楽しさを味わう”というコンセプトを掲げる。
公式HP:thebase.page.link/nb84
インスタグラム:@himself_tokyo

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP > NEWS

関連記事#NEW VINTAGE

もっと見る