1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
本連載も8シーズン目に突入! というワケで、ショップが全て入れ替わってリスタート。第63回目は、原宿にある「オーサムボーイ(AWSOME BOY)」のkic©︎さんの2巡目。
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
kic©︎ / AWSOME BOYオーナー
Vol.63_ハインゲリック/アイスバーグのサングラス
―今回紹介いただく、ニュー・ヴィンテージなアイテムとは?
前回が“ファッションではないライダースジャケット”でしたが、今回も“一部の人たちは”反応してくれそうなところをいこうかなと(笑)。ブランドは〈アイスバーグ(ICEBERG)〉です。
―1990年代にヒップホップカルチャーを通った世代には懐かしいですね。kic©︎さんもそうですか?
海外ラッパーがニットを着ていたイメージはあるけれど、ぼくらの世代だとリアルタイムで着ていたという人はあまりおらず、それこそ先輩世代で本気のヒップホップの人だけじゃないですかね、馴染みがあるのは。ただブランド自体は2016年に〈キス(KITH)〉ともコラボしていますし、本国のイタリアを中心に海外ではまだまだ現役。
―その〈キス〉とのコラボでもバッグス・バニーを使用していましたし、〈アイスバーグ〉=キャラものニットっていうイメージがあります。
そもそも1974年にイタリアで生まれた高級ニットウェアブランドですからね。とはいえ日本国内では、若い世代はもちろんのこと、ヒップホップ界隈以外からもほぼ認知されておらず、そういった認識のズレもおもしろいなと。
―日本発のブランドでいうと〈ガルフィー(GALFY)〉的な? 国内外問わず不良って派手なデザインやキャラものがなぜか好きですよね。
あれ、なんでなんでしょうね?(笑)。同じようにヒップホップ層に人気のニットウェアというと、1969年にオーストラリアで設立された〈クージー(COOGI)〉が思い浮かびますが、“派手&高級”というノリは完全に一緒ですね。
―そんな知っている人は知っているけど、知らない人は全く知らない高級ニットウェアブランドのラインアップから今回紹介していただくのは?
もちろんニット!……ではなく、サングラスです(笑)。
―こういったアパレルブランドの小物類って、ライセンス商品も多いと思いますがコチラは?
どうですかね? 時代的にはざっくり90年代のアイテムで、ニットなどのウェアと同じくメイド・イン・イタリーであることから、ライセンス商品ではないと思いますが、多分現地では服屋ではなくサングラス屋に並んでいたんじゃないかなと。多分、ここ日本においてもそうじゃないでしょうか。
―選ぶ際のポイントは?
まずはシルエット。ウチで鉄板として推しているのは、こういった横長のフレーム。スクエア型が基本で、オーバル型の方はニルヴァーナのカート・コベインのトレードマークでもある〈クリスチャン・ロス(Christian Roth)〉のモデルにちょっと雰囲気が似ています。どちらにしろ、ちょっと小ぶりな感じが着用時に違和感があっておもしろいんですよね。
―ちょっとオモチャっぽい感じも、Y2Kなノリというか。
ですね。なのでフレームカラーはホワイトが推し。このオモチャっぽい雰囲気と反して、メイド・イン・イタリーというギャップが活きてきます。あとはベッコウ柄もちょっとチンピラっぽい感じでまた良し。クリアカラーもこれからの時期に活躍しそう。そして忘れてはならないのがテンプル。ここがかなり重要なので選ぶ際は存在感のある太めのモデルをセレクトするとよろしいかと。ここでブランドネームの装飾のアリ・ナシも大きいですね。分かりやすいラグジュアリー感が“ザ・ヒップホップ”って感じで。
―kic©︎さんご自身も、このタイプのサングラスを愛用されていますよね。
キャップとの相性が抜群にイイんですよ。キャップのバイザーとサングラスのブリッジ部分の間で出来る絶対領域の間隔がちょうど良くって。これでサングラスが大きすぎるとバイザー部分と干渉してしまってイマイチ。
―〈オーサムボーイ〉的には、このサングラスをどのように取り入れるのがオススメですか?
ホワイトのフレームは全身ブラックで揃えた中に挿し色としてプラスするのもイイですし、これから夏に向かっていくことを考えると、アロハシャツなどリゾートテイストのアイテムに合わせるのも良さそう。
―やはり買い付けは海外なんですか?
実はぼくの友人の実家が営む眼鏡屋のデッドストックからピックアップしています。そのお店のあるロケーションが大阪なので、場所柄もあってか〈ヴェルサーチェ(VERSACE)〉や〈トラサルディー(TRUSSARDI)〉など1980年代〜90年代のバブリーな匂いのするモデルが豊富にあって、どれもいま見るとかなり新鮮で。おかげ様で先日、ポップアップイベントを開催した際も好評でしたね。
―本連載でもサングラスの登場は初。ニュー・ヴィンテージという視点で語るとすれば、いまどういったサングラスに注目でしょうか?
まぁ、ちょっとベタですけど〈オークリー(OAKLEY)〉などのレンズがカーブしたスポーティーなタイプを探しているという声は、すごく多く聞きますね。年代でいうと1990年代後半〜2000年代初頭くらいの人気モデルは、すでにヴィンテージギアコレクターの間ではプレミア価格で取引されていますし。あと個人的に気になっているのが〈ブラックフライズ(BLACK FLYS)〉。キムタクがドラマで着用したモデルなんかは、若い世代でも集めている子がいたりするので注目しています。
―なるほど。そういったアイウェアブランドのコレクターはいても、“アパレルブランドが作るサングラス”に狙いを定めてっていう人はあまり聞かないので、おもしろいかも。
それこそ〈ステューシー(STUSSY)〉なんかはコレクターもいますし、探している人も多いんですけどね。モノによっては結構値上がりもしていますし。その点、〈アイスバーグ〉はいまのところ安全圏(笑)。このままヒッソリと消えていくのか、何かのキッカケで人気に火が点いて、一気にアイスからホットな存在になるのか。今後が非常に楽しみです。
kic©︎ / AWSOME BOY オーナー
東京発のストリートブランド〈スワッガー(SWAGGER)〉で経験を積み、友人が立ち上げたラップTEEを中心に独自の視点で90’s〜00’sのヒップホップカルチャーをベースとした古着をセレクトするオンラインショップ「オーサムボーイ(AWSOME BOY)」に加入。2015年、裏原宿に実店舗をオープンし、2018年より同名のリメイクブランドを立ち上げ。現在はオリジナルリメイクアイテムと古着を取り扱っている。
公式HP:www.store-awesomeboy.com
インスタグラム:@awesomeboy_vintage