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皮肉とアカデミズム。PUGMENTによる、ファッションを再定義する展示とショー。

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まずは以下のストーリーを読んでみてください。

“私たちは彼女とInstagramで出会った。きっかけは好きなブランド名をハッシュタグで検索して、欲しい服を探している時だった。着用画像や宣伝広告に紛れて、見たことのない歪な形の服を着た女性の画像が目に飛び込んできた。パッと見ただけであのブランドの服だとわかる。でも何かがおかしい。体に対して服の形が合っていない。よく見るとそれは実際に着ているのではなく、切り抜かれた服の画像を組み合わせ、自分の顔に当てはめたコラージュだった。気になってプロフィールに飛んでみると、同じように作られた自撮り写真がたくさん投稿されていた。それからすぐに、私たちは彼女に「会いたい」とメッセージを送った。新宿のファストフード店に、彼女は灰色の制服を着て現れた。ひとしきりお互いの話をしたあと、あの画像の話になると、彼女はこのような話をした。ファッションスナップのサイトで見かけた服が欲しくて、ネットショップで探しました。在庫があるけど、ちょっと高かった。だからiPhoneでその服の画像を切り抜いて自分の顔と合成してみたら、すごく楽しくて。これならお金もかからないし、着たい服を何でも組み合わせて着れる、と思った。大好きなVETEMENTSも着たし、RAF SIMONS、GUCCIやY/Projectも。BALENCIAGAもこれから着てみようと思ってる。着たい服を、ただ憧れて見ていることが出来ないのだと思う。

私たちは、彼女と一緒に服を作ることにした。”

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SNSという仕組みは、あっという間に社会のシステムを変えました。システムだけにとどまらず、人の欲望の形すら変容させたのだと思います。この短いストーリーは、人と服の関係性を入り口に、その奥に潜む新たな欲望の形をくっきりと示していると思います。

今回の首謀者である「PUGMENT」については、以下のテキストを。

“大谷将弘と今福華凜によって2014年に設立。人間の営みにおいて衣服の価値や意味が変容していくプロセスを観察し、そのプロセスを衣服の制作工程に組み込む。あらゆるファッションにまつわるイメージが抵抗なく記号化し消費されてゆく昨今において、衣服を通したコミュニケーションの在り方を再考させ、都市や社会、そして他者との新たな関係の築き方を提案する。”

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なるほどハイコンテクスト。けれど、有名なロゴにプレミアがついたり、アイコニックな服に人気が集中したり、ファストファッションが流行したりといった、ファッションにまつわる身近な現状についてアカデミックかつユーモラスに迫る彼らの手腕には、実にリアリスティックな側面が見られます。面白いなあと素直に思います。

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今回彼らは、受注展示会とファッションショーから構成される「Spring 2018」を開催。会場は自身を含む美術作家らが共同で運営する、3階建てのアーティスト・ラン・スペース「Workstation.」。

「Scrap」をテーマに、ファッションメディアから収集した衣服の画像と、デパートやビルの広告として使用されるターポリンや紙などを素材として制作されたコレクションの展示・販売が行われます。

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実在しないミューズを描いたコンセプト・ストーリーの不思議な磁力に魅了された方も少なくないでしょう。演出を三野新が、音楽を小松千倫が手がけるショーはすでに予約で満席のようですが、展示会自体は6月7日(水)まで開催されています。ぜひ足を運んでみてください。

Text_Taiyo Nagashima


PUGMENT: Spring 2018
会期:〜6月7日(水)13:00〜21:00(会期中無休)
ファッションショー:6月3日(土)18:00 ※終了後レセプションを行います。
演出:三野新 音楽:小松千倫
会場:Workstation.
住所:東京都杉並区阿佐ヶ谷北 1-31-5(阿佐ヶ谷駅より徒歩5分)
pugment.com/index.html

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