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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.65 “直球だったり意味深長だったり”。次にクる音楽Tシャツはテクノ系。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

今回からショップが全て入れ替わって9シーズン目がリスタート。トップバッターとなる第65回目は「リールー(LeeLoo)」のほりけんさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


ほりけん / LeeLoo 店主
Vol.65_テクノ、レイヴのTシャツ

―ほりけんさんにとってのニュー・ヴィンテージとは?

大前提としては“いま着て格好いいモノ”。80年代以降のレギュラーとして扱われてきた年代の中でも、まだあまりフィーチャーされておらず、かつ格好いいと感じることのできる価値あるモノ。それが次の世代のヴィンテージとしてなり得る=ニュー・ヴィンテージなのかなと思います。

―そこに「リールー(LeeLoo)」ならではの基準があれば教えてください。

アイテム自体のデザイン性などの格好良さ、クオリティはもちろんのこと、プラスαで当時の様々なカルチャーや歴史背景と紐付けることができたり、合致するモノは気になります。例えば音楽シーンと密接しているブランドやアーティストものとか。その辺りはぼく自身が好きなので、どうしてもフックアップしたくなりますね。

―というわけで、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

元々ロックが好きだったんですが、最近はテクノもすごく好きで色々聴いているので、今回はテクノやレイヴ系のアイテムについて話したいと思います。ここ数年でヴィンテージのバンドTシャツがものすごく高騰化したことを受けてか、ヒップホップやジャズのTシャツにも注目が集まっている中で、その辺のジャンルを扱っている古着屋って案外少ない気がしていまして…。

―アメリカ買い付けのお店が多いことにも起因していそうですね。

それもひとつの理由だと思います。ルーツを辿るとアメリカのデトロイト生まれなんですが、そこからヨーロッパを中心に世界中に広がっていき、特にドイツのベルリンなんかはテクノシーンの最前線として有名です。ウチはアメリカとヨーロッパどちらにも買い付けに行っているので、その中で見つけてきたTシャツを持ってきました。

―まずはこちらですね。

ワープ・レコーズのTシャツ2万9900円(リールー)

〈ワープ・レコーズ(Warp Records)〉という、イギリスのシェフィールドという都市で1989年に設立された音楽レーベルです。主にテクノやIDM(インテリジェンス・ダンス・ミュージック)といった打ち込み系の音楽を扱っていて、所属アーティストではエイフェックス・ツインなどが有名で、これはそこのマーチャンダイズ。アメリカでいうところの〈サブポップ(SUB POP)〉みたいな感じで、当時ワープ・レコーズで販売されていたものの、マーケットに出てくる絶対数は少ないと思います。年代的には2000年代初頭ですかね。

―なるほど。オートミールのような色合いも良いですね。ハードロックTに頻出するドクロのように、“テクノ、レイヴならでは”のデザインというのもあったりしますか?

それで言うとバンドTやラップTなんかに比べて、グラフィックもミニマムでシンプル。プリントも小さめで文字だけちょっと入るって感じのデザインが多く感じます。着方としては、80年代〜90年代は動きやすく踊りやすいように、大きめのTシャツに大きめのボトムスで合わせるスタイルが主流でしたが、2000年に入ってからはTシャツ小さめでボトムス大きめの流れも生まれます。これが現在Y2Kと呼ばれているスタイルですね。とはいえ今回は、“いま着て格好いいモノ”という視点で大きめサイズをピックしてきました。続いては、1989年からドイツのベルリンで開催されている世界最大級のレイヴイベント「ラブパレード」の2001年モデルです。

ラブバレードのTシャツ1万9900円(リールー)

―日焼け跡からして、デッドストックですかね?

はい! 以前の持ち主が折りたたんだ状態で、多分窓際とかに置いていたんでしょうね。ボディは〈B&C〉。タグに“EUROPIAN STYLE”と記されているように、あちらの古着ではチョコチョコ見つかります。タフさが喜ばれるアメリカと違って、生地感もちょっと薄手で柔らかなボディが多いですね。「ラブパレード」といえばハートモチーフが多いのですが、それ以外にもその年ごとに数種類のデザインが出るので、堀り甲斐があります。で、最後はこういったイベントなどで着られていたようなTシャツをまとめてご覧いただきます。

―それ系のブランドものですか?

ブランドというか作っている会社は、すべて〈ザ・ブラックシープ(THE BLACK SHEEP)〉。しっかり©️表記も入っていますね。こういうレイヴ系の Tシャツとかでよく見かけるんですが、ここのはどれもグラフィックが秀逸で格好いいんです。黒Tには“LOVE DOVE”とプリントされていますが、こちらは90年代に流行っていたエクスタシー(合成麻薬MDMA)の“white dope”を表していると思われます。版ズレした適当さも“らしい”と言いますか(笑)。こちらのボディは、ユーロものではたまに見かける〈スパティーズ(Supatees)〉ですね。

ザ・ブラックシープのTシャツ1万9900円(リールー)

―こちらは文字だけですが、やっぱりなにかしらの意味がありそうな。

ザ・ブラックシープのTシャツ1万9900円(リールー)

これも同じくエクスタシーネタで、“メチレンジオキシメタンフェタミン(Methylenedioxymethamphetamine)”というのはMDMAの正式名称ですね。やや直球ではありますが、改行せず文字組みすることで、パッと見には分からないようになっているのがポイント。ボディの〈キャッシュベイ(CASHBAY)〉もあまり見かけないので珍しいかと。そして3枚目は、「まさに!」といった風情のこちら。

ザ・ブラックシープのTシャツ1万9900円(リールー)

“e”はエクスタシーの頭文字で“135+BPM”はテクノのテンポ。さらに“TEKNO”“RAVE”と入っていますからね。グラデーションで色が移り変わりっていくのも、ドラッグをキメてる時のトリップ感を表現していると思われます。この3枚に関しては、80年代〜90年代に当地のレイヴパーティーでDJをしていて、クラブシーンに精通していた方が、友人のレコード屋が潰れた時のデッドストックをまとめて譲り受けたものらしく、それをたまたま買い付けの際に知り会って譲っていただきました。

―ほりけんさんにとって、テクノ・レイヴTってどんな存在ですか?

自分の中で音楽は生活と切り離せないものであって、いまのファッションとも密接にあるものだと思っていて。例えば「ラブパレード」にも出演しているリッチー・ホゥティンというイギリスの有名テクノミュージシャンは、〈ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)〉のコレクションのショー音楽を手掛けていたりしますし、ここ数年業界を牽引している〈バレンシアガ(BALENCIAGA)〉や〈ヴェトモン(VETEMENTS)〉のデザイナーも昔からレイヴパーティーに行ってたり、いまでもショーでテクノミュージックを使ったりしていますし。

―取り入れる際のアドバイスをお願いします。

先ほどもチラっと触れましたが、当時のレイヴパーティーの写真集なんかでは、バギーパンツやアイスブルーに色落ちしたジーンズに合わせたりしていますね。足元はゴツめのブーツとかちょっとボリュームのあるスニーカーで。そのイメージで取り入れるのもイイし、ハイファッションのブランドと合わせたりしても格好いいので、そういった提案はしていきたいと思っています。ぼく自身〈バレンシアガ〉や〈リック・オウエンス〉に足元はちょっとシュッとした感じのブーツを合わせることも多いし、あとはその日の気分で楽しんでもらえばなと。

ほりけん / LeeLoo 店主
1940年代〜2020年代まで、年代やブランドに囚われず“服として格好いいモノ”を幅広くセレクトするショップ「リールー(LeeLoo)」の店主。ワーク、ミリタリー、ストリート、ヒッピー、ロック、ハイファッションなどジャンルレスに、かつ各カテゴリーのカルチャーを大切にしながら、2020年代だからこそできるファッションの楽しみを提案する。今年5月3日に、高円寺から渋谷に移転リニューアルオープン。
インスタグラム:@leeloo_shibuya

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