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【FOCUS IT.】フォトTを着ない金子恵治が、GOATとともにフォトTを手がけた理由。

Tシャツ業界の星芒として人気を誇る〈ゴート(GOAT)〉。今回、バイヤーの金子恵治さんとともに手がけるのは、フォトT用の特別なボディです。服を知っている人ならではの工夫が随所にもたらされたボディ。それを用いて、金子さんと松浦弥太郎さんの写真を使ったフォトTシャツが、制作されました。ボディの制作秘話から写真に込めた想い、そして「写真を着る」ということへの考えについて。金子さんにお話を伺いました。

Edit&Text_Taiyo Nagashima


一般的なフォトTってボディもバラバラだし、服としては改善点が多くある気がして。

ー金子さんって、普段からフォトTを着られるんですか?

実は全然着てこなかったんです。バンドTと同じように、詳しく知らない作家のフォトTを着たらダメなんじゃないかって思ったりして。なかなかノリで買えずにここまで来たんですよ。

ー明確な記号と文脈を持つアイテムだからこそ、悩ましいところですよね。

カテゴリーとしては魅力的なんですけど、自分自身が身につける洋服の枠からは外れているというか。入っちゃいけない世界という感覚がありました。一枚だけ持っているのは、荒井俊哉さんのフォトT。ぼくは彼のことを日本の三大ファッションカメラマンの一人だと思っています。カメラマンの中で最もしっかりとコミュケーションをとってきた人で、仕事をご一緒したこともあるし、文脈も理解しているし、尊敬もしていたから身につけられるなと。

ーそんな金子さんがフォトTシャツを手がけることになったきっかけは?

以前、ぼくの撮った写真のフォトTイベントをやろうよって知人に言われたことがあるんです。その時は、「めちゃくちゃ嫌だな」と思ったんですよ(笑)。自分の撮った写真が売れないっていう状況が辛すぎるなと。自分はプロのカメラマンではなくて、ただ自分のために撮っているだけ。それがTシャツになって売れる売れないというジャッジをされるということに違和感がありました。ただ、その時に、自分が撮った写真のフォトTを自分で着ることはできる、と思ったんです。

ーそれがフォトTと自分との関係性への気づきになるんですね。

そうなんです。そんな時に、〈ゴート(GOAT)〉というTシャツのブランドとの取り組みが始まりました。一般的なフォトTってボディもバラバラだし、服としては改善点が多くある気がして。写真には縦位置と横位置があるから、それで服のバランスも変わる。だから2タイプは必要なんじゃないかなとか。センターが合う方が気持ちいいから、ネックを小さくして身につけた時に中心線がずれないようにするとか。肩傾斜をつけると、立って腕を下ろした時に写真のプリント部分にしわが入りにくくなるとか。突き詰めたら色々改善点があるなと。〈ゴート〉は良い素材を使っていて、プリントの乗りも良いから、生地はそのまま。額縁を作るようにフォトT用のボディを作っていきました。

ーTシャツという普遍的なアイテムにそこまでの改善点を見出すことができるのは、服をたくさん見てきた金子さんならではだと思いますね。

頑張りましたね(笑)。だから今回は自分のフォトTを売るという企画ではなくて、あくまでフォトT用のボディを作るということがメイン。その第一弾として、松浦弥太郎さんと僕の写真が採用されているという、そういう座組み。それだったら、次につながるし、仮に売れなくても、「ボディのテストだから」っていう言い訳ができるなって(笑)。

ー今回、松浦弥太郎さんが参加することになったきっかけを教えてください。

第1弾は、写真家ではない方のフォトTを発売したいと考えていたんです。弥太郎さんは過去にフィルムでたくさん写真を撮っていて、最近またライカを買ったと話していて。尊敬する彼の写真を使ったものを着てみたいという気持ちがとにかく強くあったので、お声がけしました。

ー金子さんから見て、松浦さんってどんな人物なのか、改めて聞いてみたいです。

ピュアさをずっと持ち続けている人だと思っています。「ぼくは子供の頃から止まっているんです」ってご自身でも言っていて。それが彼の素晴らしい資質というか、なかなかできることじゃないと思うんですよ。

ーピュアさを失わずにいるっていうのは、かなり難しいですよね。

本当にそうですよね。少年時代から、45年間くらいずっと聴き続けているレコードがあるそうで。小さい頃のワクワクした気持ちやピュアさを今も持ち続けている方なんだなと思います。ぼくは会社員として働いてきた期間が長いし、感じないフリをしていたり、諦めるということも少なくなかったですけど、弥太郎さんは自分の中での良し悪しをしっかり捉えて、仕事や生活に生かしているなと思います。

ー金子さん自身も、そういったピュアさを持ち続けている人だなと感じます。

ピュアの中でもベクトルが違うのかもしれないですね。松浦さんとも、基本の姿勢に共通点がある話は何回かしていて。そういった中で、個が立っている状態で仕事ができるのは、忖度しない独特なピュアさを持っていることなのかなという話題が出ていました。

今度、広島の「レフ(ref)」というショップで、そういう話をぼくと松浦さんとのトークショーでする予定です。みんなに合わせることが果たしていいのか? みたいな。

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首裏のプリントに使用したカクカクしたフォントは、〈ライカ〉と同じフォントを使っているんです。

ーお二人はそれぞれ異なるテーマで5種類の写真を選ばれていますよね。

弥太郎さんが先にセレクトしてくれたんですけど…あまりに見事で、これに対してぼくは何を出したらいいか分からなくて悩みましたね。

元々本を読んでいる人をテーマにずっと撮り続けていたそうです。本を読んでいる人たちの姿の美しさにフォーカスしていて、ご自身も本とは切っても切り話せない繋がりがある。それで、「On Reading」というテーマになったんですよね。80年〜90年代、〈ライカ〉のフィルムで撮っているんですよ。

ー本を読んでいる人の佇まいっていいですよね。そういう人はどんどん減ってきました。

みんなスマホを見ていますからね。きっと今と80年〜90年代とでは全く違う景色なんだと思います。ぼくは基本的にテーマを持たずに撮ってきたので、まずは過去の写真を掘り返して眺めてみました。そのなかで、コロナ禍が明けるか明けないかのタイミングで海外出張に行った時の写真が印象的だったんです。

日本では、皆マスクをしているけれど、海外では観覧車でワイワイ遊んでいる人たちを見かけたり。コロナ後の海外の人々の営みと、国内で見ていた景色のギャップというか、そういった変化に新鮮さを感じて、それを集めてみようと思いました。

ー実際に身につけたくなる写真を選ぶ上では、どんなことを考えましたか?

可愛さみたいなものがキーワードかなと思いますね。

これは〈ヒースセラミックス(Heath Ceramics)〉なんです。サンフランシスコの店舗のウインドウ。たまたまおじさんがペンキを塗っていて、”H”がちょうど隠れてHEATになっているタイミングが撮れたんですよ。

他には、パリで撮った老人がタクシーか何かを待っている、ポツンとした姿が可愛かったり。

これはパリの観覧車。観覧車というか、フリーフォールみたいな絶叫マシンですね。自分は絶対乗りたくないけど、いい光景だなと思いました。

ー日常が戻ってきたことが伝わる写真ですね。

これは、老舗の傘屋さんで傘を選んでいる老夫婦をお店の外から撮った写真です。日本ではまずありえない光景ですよね。傘を傘屋さんで選ぶっていう行為自体が、とてもトラディショナルで美しい。そして、この二人がすごく可愛く思えた。窓ガラスのロゴのプリントが上に乗っかっているので、その点も違和感が出て面白いかなと。

ーこの写真は、右と左の構図が面白いですね。

これは運転しながら、望遠レンズで撮りました。現実よりもコンパクトにオモチャ感がある感じ。向こうは活動が活発だったので、車もバンバン走っていて、これもコロナ後の営みの一つというところで選んでいます。

ーTシャツの下に書かれているのは場所の名前ですか?

そうなんです、実際に行った場所の名前と日付を書いています。

また、首裏のプリントに使用したカクカクしたフォントは、〈ライカ〉と同じフォントを使っているんです。細部までこだわりました。

ーフォトTのプロジェクトは、今後どのような展開を?

ぼくがゆかりのあるゲストを迎えて、今後も続いていく予定です。プロのフォトグラファーではなく、個人的に写真を撮り溜めている人にお声がけしようかなと思っていて。賛同してくれている人も増えているので、楽しみですね。今って、iPhoneで写真は撮るけど、カメラロールに残したまま何も使わずにただ溜まっていくだけという人が多いと思っていて。日々、適当に、たくさん写真を撮っている人にこそ、この機会にフォトTにして着てみない? と世に伝えていきたいです。

ー写真の楽しみ方が広がりますね。

ぼくみたいにフォトTを買えなかった人も、自分の写真を使うのであれば着られるし、友達のiPhoneを覗いて写真を選んでみるとか。そういう中で、フォトT専用のボディがあれば、服として完成度が高く、誰でも気軽に作れるのかなと。

プリント屋さんのボディコーナーにも置いてもらう予定で、ボディ買いもできたり、ブランドさんがフォトTを作るってなった時にも使用できるように対応しているので、ぜひ。

INFORMATION

PHOTOGRAPH TEE Curated By KEIJI KANEKO

価格:7,700円
サイズ:全6サイズ展開(XXS、XS、S、M、L、XL)
販売店舗:GOAT OFFICIAL ONLINE STORE
Instagram:@goat.tee.tokyo
Twitter:@GOATTEETOKYO
Pinterest:@goat-tokyo.com

【ポップアップストア開催について】
フォトグラフTシャツプロジェクトに合わせて下記店舗にてポップアップストアを開催中。
(店舗により会期が違いますのでご留意ください)
·ベルーリア高崎店 / 高崎市連雀町11-3
·ベルーリア桐生店 / 桐生市末広町10-4
·ベルーリア鎌倉店 / 鎌倉市長谷2-20-32
·アイボリー / 富山市総曲輪3-9-3
·ref. / 広島市中区袋町8-18
·メンフィス / 熊本市中央区上通町8-21

【トークショーイベント】
9/23(土)17:00
〒730-0036 広島市中区袋町8-18
ref.
https://www.refnet.tv/blogs/popup_store/photograph-tee-curated-by-keiji-kaneko
※申し込み受付は終了しました。

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