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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.76 “取って付けたような”がウリです。 今旬のフリースコンバチジャケット。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップが全て入れ替わり、スタートした10シーズン目! 第76回目は、2回目の登場となる松陰神社前にある「ウォーミング(Warming)」の坂本高久さん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


坂本高久 / Warming 店主
Vol.76_フリースコンバーチブルジャケット

―シーズン2以来となる2年半ぶりのエントリーとなりますが、「ウォーミング」で取り扱っているニュー・ヴィンテージ的アイテムに変化はありましたか?

以前、〈ダックヘッド(DUCK HEAD)〉と〈オービス(ORVIS)〉を紹介しましたが、基本的には変わっておらず、〈エルエルビーン(L.L.Bean)〉も相変わらず人気。ただ、全体的にサイズ感は小さくなってきているように感じます。ここ数年人気だった90年代モノは、サイズ感も大きめが多く、古着業界的にもL〜XLが人気だったためにこれまで避けられていたサイズ感のアイテムに注目する人も増えそうですし、新たなニュー・ヴィンテージが生まれてくる契機にはなりえると思っています。

ーなるほど。そこも踏まえた上で、今回紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムは何でしょうか?

最近気になっているのが、フリース素材のコンバーチブルジャケットです。この秋冬、日本でも久しぶりにフリース素材がトレンドとなっているようですが、アメリカではフリースウェアって定番中の定番で、人々の日常に当たり前にある存在として愛されています。軽くて肩も凝らないし、重ね着もしやすい。そこが、場所によって寒暖差が大きいアメリカで人気の理由かと。手入れも、洗濯機に突っ込むだけだからメンテナンスの必要もなくて、とにかくラクですし。

ーしかも、さらにコンバーチブルということで……。

ご覧のように、袖がデタッチャブル仕様になっているので、取り外すことでベストとしても着用可能です。ベストは体温調節がしやすいので車社会のアメリカでは人気のアイテム。で、そこに先ほど述べたフリースの機能性を足してしまえば、さらに便利になるに違いないと。実に合理主義のアメリカ人らしい発想ですよね(笑)。ということで面白そうなところを2着用意しました。まずはこちらの〈カベラス(Cabela’s)〉から。

カベラスのコンバーチブルフリースジャケット ¥16,500(ウォーミング

―以前、本連載でもチラッと触れたことのあるアウトドアブランドですね。

現在は〈バス・プロ・ショップス(Bass Pro Shops)〉に買収されて傘下に入っていますが、釣りの毛鉤販売からスタートした1961年創業の老舗。ガチのハンティングブランドでもあるため、このベストのショルダー部分にはガンパッチが施されているのが“らしさ”かなと。ノリ的には、それこそ〈オービス〉に近いのかな。

―いつ頃のアイテムなんでしょうか?

年代的には00年代初頭ですかね。フリース素材が肌に触れる裏面よりも、表面の方が柔らかいっていうのも不思議なんですが、それよりもちょっと珍しいのが首と袖のリブ。狩猟中に服の内側にこもった熱を逃すことなく、藪に潜った際には害虫などの侵入を防ぐためのディテールだと思われます。

ーこの袖先のループも気になりますね。

別売りのジャケットと合体させるとライナーになるんでしょうね。それ以外のディテールとしては、本体の袖先や随所に施されたパイピングっぽい処理もシャレてますし、ちょっと裾が絞られたシルエットもいまの気分。〈カベラス〉の場合、年代によって大きくデザインラインが変わるということがないので、こういったちょっと珍しいアイテムを見つけたら、チェックしておくのが正解です。

ー続いては……おっ、このロゴには見覚えが……?

マウンテンデューのコンバーチブルフリースジャケット ¥15,400(ウォーミング

そう、日本でも販売されている炭酸飲料「マウンテンデュー(Mountain Dew)」です。元々は1940年代アメリカ生まれで、本国では「ペプシ(PEPSI)」でお馴染みの会社「ペプシコ(PepsiCo, Inc.)」が製造・販売しているそうです。今回用意したジャケットは結構珍しいアイテムで、最初はスタッフ用の非売品かなと思ったんですが、背タグもジップのヘッド部分にもちゃんとオリジナルのものを使用していたりと、非常に手の込んだ作りをしています。

―「マウンテンデュー」がナスカー(NASCAR)のスポンサーを務めていた時期もありますし、そういったスポーツのチームスタッフ用という可能性もありそう。

たしかに。自転車に乗る際にも軽量なフリースベストは便利なので、MTBのチームジャケットという可能性もありえますね。見どころは斜めに入った身頃の切り替え。こういったタイプでポケットがジップになっているのも珍しいので、チェックしたいポイントです。

―このジップもすごく軽いんですが、金属ですか?

これは樹脂を射出形成して作られるビスロンジッパーというものです。金属製にも負けない耐久性を備えながら、非常に軽いのでアウトドアウェアやバッグなどによく使われています。しかも樹脂自体に練り込むので、カラーバリエーションが自由自在というのも特長。このシルバーはアルミ缶をイメージしているんですかね? 切り替えとジップが相まってY2K的なムードも演出され、すごく今っぽいデザインに仕上がっています。

―ジャケットとベストの両方が楽しめるコンバーチブルって、なんだか得した気分になってイイですね。

ハイキングやキャンプなど、ちょっとしたアウトドアアクティビティを楽しむ際にも実用的ですしね。それに、室内と屋外の温度差が大きい冬は、日常生活においても重宝すると思います。ちょっと時期は限られますが、フリースベストとTシャツやロンTのレイヤードも、アメリカ人の多くがやっている定番のスタイル。楽だしラフだし、オススメです。

坂本高久 / Warming 店主
千葉県出身。2016年5月より、インスタグラム上で自身が買い集めた古着を紹介するアカウントを開設。2019年4月に、世田谷区・松陰神社前に待望の実店舗「Warming」をオープン。90sのUSブランドを軸に、気の利いたグッドレギュラーなアイテムから、レアなアイテムまでを展開。そのセレクトセンスはもちろん、週末と祝日のみという営業スタイルも人気の理由。
インスタグラム:@warming__store

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