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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.83 シルクで高品質“当然オフィシャル”。アニメTを探すなら断然コスパでしょ。

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わり、この連載も遂に11シーズン目に! 第83回目は、この3月に代田橋から原宿に移転したばかりの「チルウィーブ(chillweeb)」のchillさん。どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


chill / chillweeb オーナー
Vol.83_COSPAのTシャツ

―chillさんにとってニュー・ヴィンテージとは?

いわゆるグッドレギュラーと呼ばれる古着に対する別の呼称がニュー・ヴィンテージっていうのが、ぼくの中でまずあって。その大前提に、ネットで何でも手に入る現代にあってなお“探そうと思ってパッと見つかるモノではない”アイテム。たとえ近年のモノであるとしても、そういうモノが次世代のヴィンテージとして、今後も評価されていくんじゃないかなと思っていて。では、なぜ古着市場で見つからないか。その理由として、年代が浅いからこそまだ価値が認識されてないからっていうのはあると思います。

―なるほど。その上で「チルウィーブ」が何に価値基準を置いているのかを教えてください。

ウチだと“自分自身が、いまの時代に着たいと思えるかどうか”ですかね。あとは、ぼくが好きなアニメTシャツに合うかどうかも。まだ実店舗を構える前にポップアップで出店していた際に、半信半疑で取り扱い始めたアニメTシャツですが、思った以上に需要があってビックリしました。これをきっかけに実店舗を構えて本格的に取り扱うことになって、いまに至ります。

―ということは、今回紹介してもらうニュー・ヴィンテ―ジなアイテムも?

当然、アニメTシャツです。その中でもオールドの〈コスパ(COSPA)〉を取り挙げたいと思います。といっても絶対に知らない人が多いはず(笑)。なので、まずは〈コスパ〉についての説明から。日本のアニメやマンガ、ゲームをテーマに90’sから、アパレルを中心にさまざまな公式グッズを作ってきた日本のブランドで、スタート当初から作り続けているのがアニメTシャツです。

―その筋では誰もが知るビッグネームですよね。アニメTシャツが世界的に人気ということは知っていましたが、なぜ〈コスパ〉を推すんでしょうか? 40代以上の世代には、完全に“オタクが着る服”と認知している人も多いのかなと。

まずはクオリティ。時期によっては横割りボディもありますが、現在でもフルグラフィック系以外は100%コットン素材の丸銅ボディを使用し、プリントには基本的にシルクスクリーン。しかも正式許諾を受けたオフィシャルものですからね。海外で90’s〜00’sのアニメTシャツが立派なヴィンテージとして評価されていることを考えると、条件的にも遜色がないっていう。

―たしかに。同社のアイテムって時代による変化はあるんですか?

まずはこちらをご覧下さい。作品はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。エヴァ初号機の顔が描かれていて、ボディカラーも初号機らしい紫で非常にいいツラしていますね。これが最初期のアイテムで、タグには“Cyber Graphics”と筆記体で記されています。

COSPAの『新世紀エヴァンゲリオン』Tシャツ ¥44,000(チルウィーブ)

―〈コスパ〉名義じゃないんですね。

このタグの下にもう1つ、作品ロゴや当時の制作会社であるガイナックスのコピーライトが入ったタグが付いているんですが、そこには製造元として記されているのが“(株)コスチュームパラダイス”。以前はこれが正式名称でした。

このタグは実物を見たことがない人も多く、しかも表に名前が出ていないので〈コスパ〉だと知らない人も多いでしょうね。時期的には1997年前後でしょうか。このタグの時代は、アイテムによって当時の海外製のブランクボディを使用しているケースもあり、こちらの個体では〈フルーツオブザルーム(FRUIT OF THE LOOM)〉を使われています。丸銅シングルステッチのフルーツボディで、シルクも6版使っていて90’sエヴァ物となれば、高騰しないのがおかしいくらい。実際、同条件で海外生産の90’sエヴァTなんて、平気で10万円以上しますから。

―こちらも同じくエヴァ物ですね。モチーフはエヴァのパイロットの1人、渚カヲルくん。

これも同時期のアイテムですが、タグに“COSPA”の文字が入るように。フラッシャー付きのデッドで、そこに記された当時の定価は2200円(笑)。ボディはおそらく〈フルーツオブザルーム〉だと思います。

COSPAの『新世紀エヴァンゲリオン』Tシャツ ¥16,800(チルウィーブ)

このデザインはサイズが小さいのが特徴で、表記はMですが実寸は絶対にSかそれ以下。元々が女性に人気のあったキャラなので、レディース展開のみだった可能性もあります。そして次が、2000年前後に登場した、通称“銀タグ”。

―あ、これは見慣れたやつです。

ですよね。生産時期が地味に長く、10年代のモノでも見受けられます。ぼくらの中でこのタグまでが一応オールド扱い。作品は『斬魔大聖 デモンベイン』で、2003年にニトロプラスより発売された18禁PCゲームです(笑)。2006年にはアニメ化もされており、こちらもおそらく同時期のものだと思われます。ボディもしっかり厚みのあるオンスで他の和物とは一線を画しています。その辺もニュー・ヴィンテージになり得る要素じゃないかなって。

COSPAの『斬魔大聖 デモンベイン』Tシャツ ¥14,800(チルウィーブ)

―年代によるテイストの変遷はあるんでしょうか?

基本的にテイストはそんなに変わらないかな。〈コスパ〉のデザインチームには、初期からサブカル関係の色々なデザインを手掛けていたグラフィックデザイナーたちが多く在籍していたので、当時のアイテムはやっぱりイケているモノがすごく多い印象は受けます。そういった背景もあって、誰がデザインを手掛けたかでプライスも変わってきます。

―プライスには当然、作品の人気も関係しますよね。

そうですね。作品の人気も重要ですが、ツラが良いのは大前提。いくら作品が人気でも残念なツラだったら、個人的にはイマイチ。作品のタイトルロゴだけっていうのもシンプルで味わい深いのですが、やっぱりちょっと寂しいじゃないですか。なのでキャラがドンッと入るデザインの方が、評価・需要ともに高いと言えます。

―ゴチャゴチャと要素が多いデザインの方が人気なイメージもあります。

正直、そこは好み次第。多色刷りが人気ではありますが、逆にシルクスクリーンの単色2版くらいのシンプルなデザインが合わせやすいという人もいらっしゃいますし。個人的にもバンドTシャツっぽくて格好いいと思いますよ。で、最後は“2次元コスパタグ”。00’Sにはすでに存在していたラインですが、現行品とはタグに差異があります。

COSPAの『ToHeart(トゥハート)』Tシャツ ¥16,800(チルウィーブ)

―そもそも通常ラインとはどういった違いがあるんですか?

こちらは美少女ものなど“萌え”を意識した作品が多いのが特徴です。今回紹介するのは、『ToHeart(トゥハート)』。これがまさに作品の知名度によってプライスが変わるっていういい例。

―『エヴァ』や『アキラ』が人気で高騰化しているというのは有名な話ですが、それ以外の作品では何が人気ですか?

それこそ人それぞれですが、一般的な知名度でいえば『攻殻機動隊』ですが、逆にコアな作品を探しているお客様もすごく多いです。そこが多分、一般の古着好きとアニメT好きの違いだと思うんです。後者はあまり製造年代を気にしません。もちろん古い方が数も少なく価値はありますが、それよりも“作品愛”で買うお客さんが大多数。なので、オタバレしづらい小洒落たデザインよりも、女の子キャラがデカデカと主張するデザインが人気なのも、そういった理由から。

―時代は変わったんですね。

アニメTがいまのように評価されるようになったのも、海外が先ですからね。そこも面白いところ。ぼく自身も5年前は「いくら20年前の〈コスパ〉だって、高くなるわけないだろ!」って思ってたんスよ。それが海外では、“オフィシャルの当時モノでクオリティもしっかりしている”と気付いて買い漁る人が出てくるようになって。で、その流れが日本にも伝播して、ウチみたいなショップが〈コスパ〉を取り扱う様になって、ようやく一般層にも広まってきたと。

―最近、SNSなどでも取り扱っているショップをよく見ますが、みんなどこで買い付けているんですか?

実は、国内に限って言えば、アニメTってデッドストックでバンバン見つかるんですよ。なぜかといえば、みんな着る前提で買っていないから。ひと昔前でオタバレは絶対NGだったので、作品のグッズとしてとりあえず買いこそすれど、外で大手を振って着られる世の中じゃなかったし。アニメTシャツ=ダサいっていう価値観だったので、タンスの肥やしになっているパターンがほとんどで。

―だからデッドストックで見つかるんですね。

下手したら袋からも出していないので、日焼けもしていませんしね。なので、そういう元オタクの人が手放すケースが多いかと。ただサイズ選びが難しいというのはあります。当時の感覚だとジャストサイズが基本なので、出てくるのはMサイズばかりとか。Lサイズ以上にこだわると一気に探しづらくなります。

―色々伺っていると、もはやカウンターとして取り入れるアイテムの感覚ではなくなったと感じます。

そもそもがオタク向けに作っているグッズというのは重々承知の上で、“格好いいモノ”としてファッションで着るっていう流れですよね。若い世代はアニメに対して偏見を持っていなかったりしますし、実際、アニメTシャツってハズしとして優秀なんですよ。上下テックな格好にアニメTシャツをかますだけで、だいぶ面白い着こなしになりますし。

―chillさんが自分で着るなら、どんなものを選びますか?

個人的には格好よすぎず、ちょっとダサイのがアニメTシャツの魅力だとは思うので、ファッショナブルなデザインよりも、キャラがドンと主張するものですかね。あとは古着ではないけれど現行の〈コスパ〉(笑)。シルクスクリーンプリントで未だに3000円台ですからね。読者の皆さん、オールドも良いですが現行の〈コスパ〉もチェックしておきましょう!

chill / chillweeb オーナー
2022年5月1日に代田橋に「チルウィーブ(chillweeb)」をオープン。アニメTシャツを軸に、自分で着たいと思うグッドレギュラーやデザイナーズアーカイヴ、テクノ系やY2Kの古着を主に取り扱う。2024年3月には、原宿のURAHARA CENTRAL APARTMENTに移転し、さらに注目を集めている。またの名をナード・コバーン。
インスタグラム:@chillweeb_harajuku

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