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【FOCUS IT.】9月まで続くフロットサム ブックスによるZINE TOUR。総勢150組のZINEが全国12箇所をまわる初日にお邪魔します!

いまこの記事を目にしていただいている方も、デジタルで情報を手にしているわけですが、紙媒体ならではの面白さは別のベクトルにあるはず。そんな紙媒体のなかで、つくり手の世界を高い純度でダイレクトに表現するインディペンデントなメディアが、ZINEです。“紙に印刷する”という、シンプルなルールさえ守ればあとは自由。そんな媒体をテーマに「フロットサム ブックス(flotsam books)」が年に1度開催する『flotsam zine tour』。今年で3回目を迎え、参加者は総勢150組以上。およそ3ヶ月をかけて全国12箇所をまわる規模になりました。個性溢れるZINEを、見て触れて感じることができるツアーは、そろそろ折り返し地点。初日の様子を覗き、あなたの街の近くで開催される『flotsam zine tour』をお楽しみください。

Photo_CAYO IMAEDA
Text_Yusuke Suzuki

PROFILE

フロットサム ブックス

新宿と八王子を結ぶ京王線の代田橋駅から歩いて8~10分ほど。もともと小林孝行さんがアートブックを中心に扱うオンライン書店としてスタートし、2020年1月11日にいまの場所に実店舗をオープンしました。1990~2000年代前半のJ-POPのみ流れるおよそ6畳の店内には、世界中から集めたファッションやアート関係の写真集に、古本や有名無名を問わないZINEなどをセレクト。不定期で開催される作家やアーティストの展示は、店主との関係性も垣間見れるオンリーワンなものばかりです。
Instagram:@flotsambooks

参加条件は3つのみ。全国10都市&12箇所をまわります。

『flotsam zine tour』への参加条件はシンプルです。1年以内に制作・販売価格は¥3,000以内・レターパックに入るサイズという、3つの条件さえ満たせばOK。事前審査やセレクトは一切行わず、自由度と公平性の高さはZINEの本質とリンクしているかのようです。

3回目を迎えた今回は、東京の3箇所に茨城・神戸・仙台・京都・広島・金沢・名古屋・福岡・大阪の全国10都市&12箇所を、およそ3ヶ月かけてまわります。各エリアでその街に住む方限定での参加枠を設けるなど、ローカルへリスペクトを込めた初の試みも見逃せません。

段ボールにマジックで描いたお手製の看板を、マスキングテープで入り口横のガラスに。DIYでラフな空気感は、背伸びせずにリラックスしてZINEを1冊1冊楽しめます。

-ツアースケジュール-
2024年6月7日(金)〜9日(日):flotsam books(東京)
2024年6月16日(日)〜20日(木):Dekay(東京)
2024年6月22日(土)・23日(日):Staple coffee(茨城)
2024年6月29日(土)・6月30日(日):Mukta(神戸)
2024年7月6日(土)・7日(日):Colloquium(仙台)
2024年7月13日(土)・14日(日):kivi(京都)
2024年7月20日(土)・21日(日)READAN DEAT(広島)
2024年7月27日(土)・28日(日):IACK(金沢)
2024年8月2日(金)〜4日(日):C7C gallery and shop(名古屋)
2024年8月17日(土)〜19日(月):LIBRIS KOBACO(福岡)
2024年8月24日(土)〜9月2日(月):229(東京)
2024年9月6日(金)〜8日(日):ISEEALL(大阪)

「フロットサム ブックス」からスタートしたツアー初日にお邪魔すると、平日の夕方前にもかかわらず多くの来場者が。『flotsam zine tour』のために、通常置かれている本は一旦下げて、店内の半分以上をZINEのスペースへとレイアウト変更。壁や棚に置かれた数々のZINEの表紙を眺めているだけでも作り手の個性が感じられ、訪れた人は自由に気になった1冊1冊を手にとり、ページをめくるテンションも自然と高まります。

ZINEのラインナップとシンクロするかのように、訪れるお客さんの世代や職業などもバラバラ。どんな人がどんなZINEを購入したのか気になったので、4人のお客さんに声をかけ少し話を聞かせてもらいました。

「自分も写真を撮っていて、ZINEをつくるヒントになるような、自分がやりたいと思っていたことと近い1冊を購入しました」

「このIayslielieさんの世界観がとってもかわいくてだいすきなんです! みなさんもぜひチェックしてみてください!!」

「リュウ・イカさんがすきで、SNSでここでZINEを販売するというのをみて、フロットサム ブックスには今日初めて来ました」

「フイナム、いつも見てますよ。今日はほしいZINEも買えていろいろ観れて、とても楽しかったです」

「適当でもいいのがZINEのよさ。新しくて面白いものを、ただ紹介したいんです」

そもそも、なぜZINEなのか? 企画を毎年続けて参加者が増え、巡回する街も多くなり、これまでとこれからをどう考えているのか? そんな疑問を中心に「フロットサム ブックス」の店主である小林孝行さんに話を聞きました。

小林孝行(フロットサム ブックス店主)

―今年はおよそ150組が参加していますが、SNSでの応募スタートから枠が埋まるまでの時間、すごい早くなかったですか?

小林孝行(以下、小林):今回は応募スタートから150組が集まるまで、2時間とかそれくらいだった気がしますね。応募フォームをつくっていて、そこに応募してもらう形です。

―参加する方々はZINE TOUR用につくってくるのか、それとも元々つくってあったものを発表する場的な感じで送ってくるのか、どんな割合ですか?

小林:はっきりとは分かりませんが、たぶん4割くらいが新たなにつくったもの、6割ぐらいは元々つくってあったものなんじゃないのかなと思います。

あと今回思ったのが、割と印刷会社でちゃんと印刷と製本してっていう人が多かった気がしますね。

―個人でつくっている方ばかりだと思うので、それはすごいですね。古い考え方だしZINEの自由さとは矛盾しますが、コピー機でプリントアウトしたものなどが割と多いのかなと思いました。

小林:つくり込んだ良さもラフな良さもあるので、そういった点にも個性が反映されますよね。

―参加無料の審査なしで先着順という、シンプルで公平な形ではありますが、逆に言えばルールさえ守ればどんな作品でも参加できるってことですよね。

小林:これまで無審査で続けてきて、例えば“今回から参加費が¥1,000で、審査があります”みたいなことを言ったら、参加する人の顔ぶれも全然ちがったものになると思います。

やっぱり自分は、有名でも無名でも面白い作品がいいなと思っているんです。

40歳を超えてから自分だけよければいいじゃなくて、まわりになにかできればと考えるようになり、自分ができることってそういうことなんじゃないかなと思って。

―今回グランプリを選ばなかった理由はなぜですか?

小林:細倉真弓さん(写真家)と大智由実子さん(出版レーベル『MARGINAL PRESS』主宰)に特別審査員をお願いしたんですが、“もう比べようがないよね”っていう話に尽きるっていうか。

雑誌みたいなつくりの人もいるし、1冊で完結するような作品のようなものもあれば、ホチキスで止めただけなんですけど、それはそれでそれぞれの良さがあって。それに対して“これが1番です!”ってもう言わない方が良くない?みたいな感じになって、今回グランプリはなしにしたんです。

―参加する人もグランプリに選ばれたいとか1番になりたいとかではなく、ZINEをつくったからだれかに見てもらえたらいいなくらいだったり、目的もバラバラですしね。

小林:そうそう。ステップアップしていきたいのか、ただ自己表現して1回きりでおしまいでいいのか、どっちもあるじゃないですか? なので自分にはここ(お店)があるので、展示をお願いしてみたりとか、その次じゃないですけどそういう話はしていけたらなと思っています。

―ちなみに今回そのような形で声をかけたZINEはありますか?

小林:ありましたね。写真を撮って、その写真の中に入ってる印象的な形を抜き出して、それを隣のページに置いていくんです。それが最終的に詩っていうか、文章になっているんですよ。

“ちょっとうちで展示してみませんか?”みたいな感じで声をかけたりさせてもらいました。

―それはすごいです……。

小林:もう作家さんみたいな感じですよね。(ZINE TOURで)けっこうすぐ売れていきました。

―ZINE TOURの初日にお邪魔して、平日の夕方くらいなのにお客さんがたくさん来ていたのがとても印象的でした。ZINE TOURをはじめて3回目で、150組の枠が2時間で埋まったり初日からたくさんの人が来たりと、定着してきたなという実感はありますか?

小林:いや、むしろ意外と定着してない感じで。集客で言えばもちろん多くの人が来てくれましたが、急に暇な時間帯もあったりしましたし。

―それは意外です。ネットで販売しないし1冊1冊をSNSで紹介とかもないし、そもそもどこのだれがつくっているかもわからないZINEも多いので、行ってみないとわからないことだらけですよね。

小林:そうですね。だからもっと色んな形でアプローチしたりして、ZINE TOURをもっと知ってもらうっていうことも大事なんだなと思います。

―150組のZINEを5冊づつ送ってもらい、作家さんが値段を決めてそれを委託販売する形です。それだけの数のZINEを管理し、売り切れたものに関しては会期中に連絡して追加してもらうなど、細かなやり取りがとても大変そうです。

小林:たしかに大変さはありますが、それがうちのよさと言いますか、そういうことが面白いZINEに出会えたりお客さんが喜んでくれることに繋がっていますからね。

―どんなジャンルにも大なり小なりトレンドってあると思うんですけど、ZINEにも感じましたか? 例えば写真で言えば、数年前にフィルムがとても流行ったみたいに。

小林:いまはデジカメが台頭しはじめた初期の初期、1990年代後半から2000代初頭の『サイバーショット(※『ソニー』製のデジタルカメラ)みたいな画素数のカメラで撮ったような写真が多い気がします。なんとなくな印象ですけどね。

―参加する人はどの年代や地域が多いですか?

小林:若い子が多かった印象ですね。1990年代以降生まれで、もちろん40代もいるし、10代も少しいる感じですね。60代とかはいなかったと思います。地域は圧倒的に都市圏、特に東京ですね。次が大阪、京都、神奈川とかで。

―もっと全国から集まってくるのかなと勝手にイメージしてました。

小林:だから今回から地元枠じゃないですけど、10都市をまわるその場所に住んでいる人用の枠は用意したんですよね。やっぱりその地元の人が参加して盛り上がってもらいたいなという気持ちがあるので。

―ちなみにオンラインと実店舗でいうと、普段のお店の売り上げはどんな割合なんでしょうか?

小林:オンラインが6〜7割、実店舗が3〜4割くらいです。これまでに四国や中国地方から買い物をしてくれた人はあまりいなくて、そういうエリアにもZINEなどを通してこういった文化を伝えられたらなと思いますね。

―今回は10都市12箇所をまわりますが、場所はどういった流れで決まったのでしょうか?

小林:1箇所はあちらからやりたいと言っていただき、お願いした形ですね。あとは前回に西日本でやっていなっかたので、知り合いに相談とかしていい場所を教えてもらい、こちらからオファーしたらみなさん快諾してくれたんです。

お店があるので全部に自分が行けるわけではないですが、北海道とか行ったことがないですし、ほかにも行ってみたい場所はまだまだありますね。まずはお近くの会場にぜひ遊びに行ってみてください。

INFORMATION

フロットサム ブックス

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