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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.98 これぞ“カルチャーを着る感覚”。ファニー・ファームってご存知?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

新たにショップがすべて入れ替わり、遂に連載は13シーズン目に! 第98回目は、世田谷線沿線は上町にある「BLANK BLACK MARKET」のSinさん! 今回は、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


Sin / BLANK BLACK MARKET オーナー
Vol.98_ファニー・ファームの Tシャツ&フーディ&クルーネックスウェット

―「ブランクブラックマーケット(BLANK BLACK MARKET 以降、BBM)」はどんなショップですか?

ショップ名にもあるように、ブラックマーケット=闇市の何でも雑多に並んでいる混沌とした雰囲気をイメージし、既存の枠に囚われることなく“ぼく自身が良い・おもしろいと感じたモノ”を扱っています。中でも90年代〜00年代のストリートブランドを中心に、カルチャーに根差していて、かつ、選ぶ人次第で無価値にも宝物にもなり得る。そんなアイテムを集めています。

―近年では、同時代のストリートブランドの古着をニュー・ヴィンテージとして扱うショップも増えましたが、他店にはないコダワリがあれば教えてください。

モノに対する見方や捉え方を着る人自身に委ねる“余白を持たせる”ように意識し、当時の落とし込み方をまんまトレースするのではなく、現代のブランドや着方とのリミックスを提案しています。その上で、裏原宿ブランドのようにカルチャーとして後世に残していきたいアイテムと、まだ今の段階では価値が見出されていないけど面白いアイテム。この2つがウチの考えるニュー・ヴィンテージです。

―そこで今回紹介いただくのが……。

90年代裏原宿カルチャーのシーンド真ん中に誕生しながらも、知る人ぞ知る存在である〈ファニー・ファーム(FUNNY FARM)〉。先ほどもお話しした、“選ぶ人次第で無価値にも宝物にもなり得る”まさにそんなブランドです。

―当時のファッション誌にはよく掲載されていましたよね。懐かしい!

〈アンダーカバー(UNDERCOVER)〉のJONIOこと高橋盾氏、〈マイノリティ(MINORITY)〉や〈N.W.O〉〈ヴァンダライズ(VANDALIZE)〉などを手掛けた一ノ瀬弘法氏、ロサンゼルスのタトゥースタジオ「ファニー・ファーム(FUNNY FARM)」のタトゥーアーティストであるボブ・ベッセルス氏とマーク・パラモア氏。この4人が90年代に僅か数年のみ展開していたブランドですね。

―どれくらいの期間、存在していたんでしょうか?

96年発行の雑誌でJONIOさんが、お店の立ち上げの話をされているので、そこから長くとも99年ぐらいまでの2〜3年間だったと思います。“おしゃれなモノがひとつもない”のがコンセプトで、スカルをモチーフにしたシルバーアクセサリー、トイ、キャンドルなど雑貨をメインに、オリジナルウェアやシルクスクリーンで手刷りした一点物のアイテムを展開していました。

―Sinさんも実際に着ていたんですか?

当時のぼくは地方在住の高校生だったので実際にお店を訪れたことはありませんが、地元のパンクショップに何着か入荷した際に購入して、それこそ破れるまで着ていました。鋲ジャンを着ているようなパンクスだったので(笑)……なんて話を置いときまして、早速Tシャツから。

ファニー・ファームのTシャツ 2万8000円(ブランクブラックマーケット

―アイコンのスカルが格好いいんですよね。

ふたつ目スカルのハンドドローイングのモーションロゴですね。こちらのグラフィックをドンッと胸元にあしらわれたデザインが鉄板です。まず最初期の通称“黒タグ”。ボディはシングルステッチで、フロント裾部分に所属メンバー4人の名前がプリントされているのが特徴。ユーズドではこのタグが大きくて邪魔だったのか、切られてしまっているケースが多いため、残っているこちらは希少です。さらに古い順に並べてみましょう。

ファニー・ファームのTシャツ 1万8000円(ブランクブラックマーケット

これはもう少し後のもの。背面腰にもフロント胸と同様のプリントが施され、裾にピスネーム。ボディは〈フルーツ・オブ・ザ・ルーム(Fruit of the Loom)〉のヘビーウェイト。織ネームのブランドタグのデザインも変わっています。そしてほぼ同時期と思われるこちら。

ファニー・ファームのTシャツ 1万8000円(ブランクブラックマーケット

これも本来は首元に織りネームのブランドタグが付くはずなんですが、前オーナーがフロントの裾位置にカスタムしています。こういった部分もハードコア、パンクロックがベースにあるこのブランドならでは。ちなみにボディは〈ヘインズ(Hanes)〉の「ビーフィーT」。TシャツやロンTに関しては00年代以降、たびたび復刻もされていて、そちらは〈プリントスター(Printstar)〉製のボディになっていたりします。こちらは当然すべて90年代のオリジナルです。

―どれもタトゥーショップのマーチャンダイズ味があり、非常に良き雰囲気です。続いてはフーディですね。

ファニー・ファームのフーディ 4万8000円(ブランクブラックマーケット

ボディは〈チャンピオン(Champion)〉の「リバースウィーブ」。初期が荒削りでアウトラインのみの手描きのグラフィックだったのに比べ、中期以降のモノと思われるコチラは線も太くなって、内側も塗りつぶされているのが特徴です。

―先ほどの Tシャツと同様に〈バウンティーハンター(BOUNTY HUNTER)〉でもお馴染み腰プリントが入っています。そちらはハードコアバンド「EXCEL」のTシャツから影響を受けて誕生したそうですが、アイデアソースは同じ?

かもしれませんね。当時のモノって変な場所にピスネームを付けたり、プリントをあしらっていたりするので、「既存のデザインとは違うモノを作りたい」という反骨精神の表れなのかなと推察しています。

―それでいえば、こちらのクルーネックスウェットはやや異なるアプローチのような。

ファニー・ファームのクルーネックスウェット 4万6000円(ブランクブラックマーケット

2枚目のTシャツの裾ピスネームにも採用されていた、通称“フォースアイド・スカル”とサークルの定番デザインです。当時の〈ア・ベイシング・エイプ(A BATHING APE)〉なんかにも見受けられたベタベタのアメリカンラバーインクのプリントと、着込む内にフェードしたボディカラー。プリントのクラック(ヒビ割れ)も相まって、たしかによりストリート味は強く感じられますね。

―こちらのボディも〈チャンピオン〉ですか?

タグが切れていますが、多分そうでしょうね。ただ、その時々で手に入ったボディを使っていたようで、〈リー(Lee)〉や〈ヘインズ〉などもあります。これなんかはコットンにポリ混の〈ジャージーズ(JERZEES)〉ボディ。かなりオンスも軽めで90年代後半でしょうか。

ファニー・ファームのクルーネックスウェット 4万2000円(ブランクブラックマーケット

―また別のグラフィックですね。

ホットロッドなどローブロー・カルチャー界隈では定番のフライングアイボールが、オリジナルデザインで描かれています。そしてJONIOさん&一ノ瀬さんらしくハードコアなバックボーンを感じる多色使いのマルチプリント。柄同士が重なっているタイプもあったりして結構着づらそうですが、そこがたまらない。もはや“カルチャーを着る感覚”といいますか。

―今回ご紹介いただいた以外だと、他にはどんなアイテムがあるんですか?

トップスだと、コーチジャケットやワークジャケット、デザートカモ柄のアウターにチェックシャツ。ボトムスではカーゴパンツやチノパンツなど、既存のボディにシルクスクリーンプリントを施したワン&オンリーなアイテムでは、結構な種類がゲリラ的に販売されていたようです。

―掘り出すことが出来れば、すごくおもしろそう。

まだ海外のコレクターには認知が薄く、絶対的個体は少ないため市場価値が付きにくいこともあって狙い目ではありますが、それゆえにマニア間の取引では、ワン&オンリーものは既にプライスレス。ウチも11月11日の1周年記念に合わせて貯めていたストックを全放出しちゃうので、今後見つかる保証こそありませんが、自分のコレクションも兼ねて(笑)、収集は続けていくつもりです。

―若い世代の場合、90年代にストリートやパンクを通ってきた親戚のオジさんが当時買ったモノを持っている。そんなケースもありそうです。

それはあるかも。ぼく自身、そんな感じで所有し続けていたワケですし。ぜひ親戚のオジさんに当たってみてください!(笑)

Sin / BLANK BLACK MARKET オーナー
販売から企画生産までひと通りの仕事を経験し、アパレル歴は約16年。オンラインからスタートし、2023年11月11日に、モード・ストリート・アメカジ・ミリタリー…ジャンルレスにディテールやサイジングにこだわった“少し捻くれたアイテム”をセレクトすると同時に、古本やビールを交えてカルチャーを体験できるコミュニティストア「BLANK BLACK MARKET」の実店舗をオープン。2024年11月11日で1周年を迎えたばかり。
インスタグラム:@blank_blackmarket
公式サイト:b-blackmarket.stores.jp

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