1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。今ではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
新たにショップがすべて入れ替わり、始まった14シーズン目! トップバッターの第105回目は、豪徳寺で注目を集める「Navy blazer store」の小林さん! どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
小林 / Navy blazer store 店主
Vol.105_ズーヨークのフーディー
―そもそも「ネイビーブレザーSTORE(Navy blazer store)」とはどんなショップなんですか?
その前に、まずぼく自身の話をさせていただいてもよろしいでしょうか?
ーぜひ、お願いします!
小学1年で野球を始めた、いわゆる野球少年だった自分に転機が訪れたのは中学生時代。野茂選手がMLBに行ったタイミングで「なんだか日本のプロ野球よりも格好いいぞ」と気付いちゃいまして。で、渋谷の「ワールドスポーツプラザ」で〈ニューエラ(New Era®︎)〉のフィッテドキャップを買ったのを機に、インポートファッションという新たな世界に出会いました。
―いまよりも情報が少なかった“あの頃”ならではのインポートとの出会い方ですね。
そこからファッションだけでなく音楽などのストリートカルチャーにも興味を持つようになり、アメリカンカジュアルの〈ポロ・ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)〉、イタリアンラグジュアリーの〈ロロ・ピアーナ(Loro Piana)〉を経て、いまに至るという感じです。ウチの店では、スポーツ、アメカジ、ストリート、トラッドなど、ぼくが通ってきた要素をリミックスして、ユーズドとセレクトのアイテムで表現しています。
ーだからアイテム単体ではなく、スタイリングでの提案なんですね。
その通りです。で、その軸となっているアイテムが店名にもなっている“ネイビーブレザー”。オーダーメイドもやっていて、これを中心に様々なアイテムを組み合わせた着こなしを提案しています。古着に関して言えば、絶対にオリジナルである必要はなく、それ自体の出来が良ければ復刻モノでも良いと思っていますし、“古着である”という点には固執していません。
ーなるほど。
どちらかといえば春・夏・秋・冬の季節に合わせた素材感や配色を重要視しており、さらにブレザーとの相性は最重要。工夫次第でいかようにも着こなせるブレザーというアイテムをどう料理するか。そう考えた時に、ひとつの選択肢と浮かび上がるのが古着です。
―本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマです。では、小林さんにとってのニュー・ヴィンテージの定義とは?
この先の未来にも残っていくグッドレギュラーと考えるならば“ずっと使えるモノ”というのはひとつにあると思います。先ほども話したように、ウチの店ではぼく自身が通ってきたモノをリミックスして展開しているので、昔からあっていまの時代にもリバイバルされるモノとかですかね。要はいつの時代も変わらぬ魅力があるということなので。また、そういったアイテムだからこそ、ブレザーという不変的かつ普遍的なアイテムとも相性が良いというのもあります。
―そこで今回紹介いただくニュー・ヴィンテージなアイテムが…。
なんて話の流れからすると意外かもですが、〈ズーヨーク(ZOO YORK)〉のフーディーです。90年代〜00年代頃に、たしか渋谷・神南のファイヤー通りでおじいちゃんがやっていたショップで購入した記憶があるんですよ、こんなフーディーを。
ズーヨークのフーディー 6,800円(ネイビーブレザーSTORE)
―ズーヨーク=ニューヨークということで、なんとなく“クロいスケートブランド”ってイメージがあります。小林さん的にはどんな存在のブランドでしょうか。
ハロルド・ハンターを筆頭にライダーもみんなイケてたし、音楽的にもスタイル的にもヒップホップ好きのスケーター連中が着ていたブランドという印象はあります。なので、これもぼくが通ってきたカルチャーと繋がるアイテム。そもそもラル・フローレンもニューヨークですしね。それにいま見るとフレッシュじゃないですか?
―たしかに。
このフェードした色合いと風合いも古着ならではですし、ぶっとい身幅とアームホールも当時モノの“らしさ”ですよね。裏起毛なので、まだは寒い梅春シーズンにも重宝します。あとはロゴの刺繍もイイですよね。〈ズーヨーク〉自体を知らないと、何のブランドなのか分からないという点も含めて(笑)。
―ブレザーの中に着るという前提ですが、その際のポイントとかありますか? シルエットはジャストめじゃないとダメとか。
まったく関係ないです! オーバーめのサイズを無理やり突っ込むのも、それはそれでアリ。結局は全体のバランスさえ取れていれば、あとは自由にやっちゃっていいと思います。
―せっかくなので、スタイリングを組んでもらってもイイですか?
合わせるボトムスは、いまならベーシックに〈リーバイス(Levi’s®️)〉のデニムパンツですが、あえてラルフのコーデュロイパンツ。ボトムスは太めがイイのは間違いないんですが、コレでスラックスを穿いちゃうと〈ズーヨーク〉というスケートブランドの文脈には合わない。
―それ以外のアイテムは?
フーディーの下にはチェックシャツを挿し込んで、頭には〈ポロスポーツ(POLO SPORT)〉のデニムハット。足元は〈ナイキ(NIKE)〉のエア・トレーナー1と同じく〈ナイキ〉の“コートシリーズ”のソックスって感じでしょうか。
―頭と足元をUSAカラーで合わせています。しかもブレザーの裏地のテニスボールカラーを足元とハメるという。こうやってスタイリングに意味を持たせるのも楽しいですよね。
ですね。ただ、お客さんにそういった部分をすべて説明しなくてもイイとは思っていますし、お客さんも気にせず楽しめばイイと思っています。ぼく自身、これまでの経験や記憶に基づいて感覚的にやっている感じといいますか。そこを懐深く受け入れてくれるのがネイビーブレザーなので。
小林 / Navy blazer store 店主
豪徳寺駅前で約100年の歴史を持つ豪徳寺市場内に、2022年9月にオープンした「ネイビーブレザーSTORE(Navy blazer store)」。その名が示すように“ネイビーブレザー”をコンセプトに掲げ、ユーズド&ニュー、雑貨といったセレクトアイテムをスタイリングして提案する。
インスタグラム:@navyblazer_store