対談:坂口修一郎×中原慎一郎 "良き隣人たち"と、理想的なフェスティバルを考える。
2012.08.06
-では、G.N.Jの当初のコンセプトとして、そうした鹿児島での交流を軸にしたイベントにしていくという具体的な意識を持ってスタートさせたということでしょうか?
中原: 名前の通りで、グッドネイバー(良き隣人)のため(笑)。まあ、正確にはグッドネイバーの"ため"ではなく、グッドネイバーと"一緒に"ですね。だから参加型なんですよ。できあがったものを見せる場ではなくて、こういう風にやったら面白いんじゃないか、というものに参加させるというか。
坂口: どうしてもコミュニティのイベントと言ってしまうとすごく内向的なものになってしまいますから。そうではなくて、今でこそたまたま鹿児島でやってますけど、他所の人を排除しているわけでは一切ないですし、賛同して参加してくれる人に対してはとことんウェルカムな姿勢ですんで。
-以前に、岡本さんがインタビューで「その街が楽しいかどうかっていうのは、そこに知っている人がいるかどうか、共通の趣味を楽しめるかどうかが重要だ」と仰っていました。岡本さんの場合はそれが中原さんだったわけですね。
中原: うんうん、なるほど。
-では、まったく鹿児島を知らない人がG.N.Jに初めて行くためのきっかけ、あるいは、会場でどのように楽しむのか、その辺りについてはどのようにお考えですか?
中原: ある意味すごく簡単な話で、例えば、岡本さんのファンだったらそれだけで来るきっかけとしては十分なんじゃないですか(笑)。行けばきっと自分と同じような趣味を共有できるひとが集まっているかもしれない。それは岡本さんが関わっている仕事のことかもしれないし、それこそ『relax』の読者でもいい。好きなバンドが出るなら、それを目当てに来る人もいるかもしれない。みんな違う視点で来るんだろうけど、来たときの雰囲気の感じ方はみんなだいたい一緒だと思いますよ。
坂口: その人たちが翌年また違う人たちを連れてくるかもしれないですし、現にそういう広がり方を見せてますからね。なんか、誰かに「行こう」って言いたくなるというか。
中原: 鹿児島でお店を出したときに初めて強く思ったのが、東京で同じことをやると、みんな恐る恐る寄ってくる感じなんですよね。これが鹿児島になると、作り手も買い手もみんながドワーッってお店に寄ってくる。彼らはすごくコミュニケーションを求めていて、まあ、楽しいんですよ。G.N.Jにしても、イベントとしては完璧じゃないかもしれないんだけど、楽しみ方の上手さはありますよね。
ランドスケーププロダクツ代表の中原慎一郎さん。
-鹿児島の人々の特性として、そういった懐の深さといったことがあるんでしょうか?
中原: それはありますよ絶対。例えば、東京だと「楽しいでしょ?」って聞かないと、見ている方も楽しんでいるのかどうか分からないんですよね。鹿児島だとそんなこと言わなくても分かりますから。なんなら翌年をどう楽しむかってところまで考えてるし(笑)。
坂口: それはすごくよく分かりますね。東京の、あの様子を伺っている感じが、鹿児島にはないんですよ。
中原: そういえば面白かったのはさ、今年はタスヤードのみんなが「出たい」って僕に言うんだよね。今まで見せたことないような原価計算の表とか見せてきて「このメニューをこれだけ売れば、これだけの売上げが立つから、僕らも連れて行ってもらえますよね」とか言って(笑)。
坂口: それはイイ話ですねえ(笑)。
中原: 仕事にすれば自分も行けると思ってるんだよね(笑)。初年度は人が足りなくなると思ったから、うちの社員ほとんど全員で行ったんですよ。2年目は大丈夫だと思ったから誰も連れて行かなかった。そしたら、行けなかった人間は行きたくて仕方ないから仕事を作るんです。
坂口: やっぱり放っておいたら仕事って東京にばかりあって、鹿児島に帰りたいんだけど、10年前なんかは誰かが死んだ時か結婚した時くらいじゃないと無理だったわけですよ。じゃあ、鹿児島に帰って何かやりたいと思った時、そこに仕事を作らなきゃいけない。中原くんはそれを先にやっていて、「ああ、こういうやり方もあるのか」と、勉強になりましたね。