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対談:坂口修一郎×中原慎一郎 "良き隣人たち"と、理想的なフェスティバルを考える。

2012.08.06

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cf_gnj_sub04.jpg GOOD NEIGHBORS JAMBOREE実行委員会代表を務める坂口修一郎さん

「大学の時なんて鹿児島のこと少しも分かってなかったですから(笑)」。

-そういったエピソードは、まさにG.N.Jの趣旨と合致しますね。行っている人を見て「いいなあ」と思って、自分も行きたくなって行動に移すと。

坂口: 「こんな風になるといいなあ」って思い描いていた感じに近いですよね。人が集まるって、いわゆるディズニーランドみたいに、ものすごくアトラクションを用意して「楽しいから来てください。チケットはいくらです」っていう方法ももちろんあるんだけど、僕らの場合は、基本は"1品持ち寄り"の考え方と一緒なんですね。音楽ができる人なら演奏すればいいし、食事が作れる人は食事を出す、モノを作れる人はそれを人に教えたり、出品する。その日は働かずに純粋に楽しみたいという人はお金を持ち寄る。

-フェスティバルとしては非常に健全ですね。誰も無理していないというか。

坂口: まだ3回目とはいえ、巻き込んだ人々が自分たちで考えて、面白くなるんじゃないかということをどんどんやり始めているんですよ。そういう意識は伝わっていて、すごくいい感じで成長していると思っています。

-一方で、実際にイベントを進めていて、これは想像していなかった、予想外だった、というようなことはありませんでしたか?

坂口: うーん、なんでしょうね。

中原: まあ、思った以上に近隣の地域の人から嫌がられなかったってことですかね(笑)。もしかしたら、いるのかもしれないですけどね、それ以上に喜んでくれている人の方が多いんじゃないでしょうか。

-私見で恐縮なのですが、地方から東京に出てもう一度地元に戻った時って、派閥や抵抗勢力のような存在が、こういったイベントをやろうという時に弊害として出てきそうなイメージがありますけど...

坂口: 僕もそれはある程度予測はしていたというか、やっぱり僕らがイベントで盛り上がって、それを面白くないと思う人たちもいるんじゃないかなあと思ったんですが、意外にそういったこともなく...

中原: 僕らもずっと鹿児島を離れていたし、利害関係とかなかったんだよね、あまり。知っている人なんてそんなに多いわけじゃなかったじゃない? イベントをやるうえで、もの凄く協力を仰いで説得させるような人もいなかったしね。それよりも、僕らがお店ですでに形成していたネットワークでやることの方が楽だって分かってたし。

坂口: じつは鹿児島にもいくつか野外フェスをやろうとしている人たちはいて、実際にあったりもするんですね。だけど、僕らがやろうとしていることとは違うし、音楽はあるけどそれはひとつの要素にしかすぎない。だから、競合と呼べるような存在もなかったっていうのも大きいかもしれないですね。

中原: それは大きいかもね。

坂口: そういう意味では、イベントとしていい距離感というか、空気感があるのかもしれませんね。予想外といえば、僕はもっと荒れたりするかなと思ってましたけど...

中原: ああ、なるほどねー。

坂口: 野外で一日中酒飲んでれば、暴れたり喧嘩したりするヤツの1人や2人は絶対出てくるだろうと構えていたけどまったくなかった。考えてみると、子どもがすごく来るじゃないですか、イベントに。だから、大人が変なことしづらいのかな。

中原: あとは学校ってこともね。これが公園とかキャンプ場みたいなところだと、また少し違ったかもしれないしね。学校って公民館とかと似ていて、集まる感じというか、ちょっと行儀よくしてなきゃいけない、みたいなところもあるじゃないですか。二宮金次郎もいるし(笑)。

坂口: 些細なことかもしれないですけど、そういう細かい要素がポジティブに働いてますよね。だから、場が荒れるようなことが絶対ないんですよ。

cf_gnj_sub05.jpg

-とはいえ、やはり土地が持つ独特の雰囲気というのはあると思います。先ほどの岡本さんの話に戻ると、向田邦子さんの例を出して、鹿児島に初めて行ったときの分かりやすい故郷感について話しています。その辺りについても鹿児島出身者のお2人はどう感じているのでしょうか。

中原: まずはっきり言えるのは、視覚的に分かりやすい状況が多いということですね。桜島があって、火山灰がある。気候もそうですけど。

-時間を超越して、普遍的な自然があるということですね。

中原: 特に見た目の部分ですけどね。最近は郊外のショッピングモールなんてどれも一緒でノッペリしている。あとは単純に、距離の問題。すごく離れているから、帰って来た感じも強いでしょ。僕ね、鹿児島って高知県と似ているところがあると思うんですよ。あそこも山で区切られていて、海があって。

坂口: ある意味、割り切らないとやってられないというかね。独特ですよね。

-そういったイメージは子どもの頃から変わりませんか?

中原: 逆に小さい頃の原体験と今が繋がることの方が多いかもしれないですね。子どもの頃もそうだけど、大学の時なんて鹿児島のこと少しも分かってなかったですから(笑)。

坂口: 僕の場合は18歳で東京に出て来たので、すでにこっちの方が長いです。だから、鹿児島でお酒を飲んだり遊んだりっていうのがまったく抜け落ちてるんですね。懐かしいんだけど、今帰ると新しい。通学路にあった湯豆腐屋なんて、子どもの頃に絶対行かないじゃないですか? だけど、看板を見るとそこにあったことを思い出すんですよ。

中原: 僕もそこを知っていて、前のクラブにはよく行ってたんだけど、あの湯豆腐屋には入ったことはなかったね。子どもじゃ行けなかった(笑)。

坂口: そうそう、敷居が高くて(笑)。

中原: 初めて岡本さんが鹿児島に来たとき、ふと思い付いたのがその湯豆腐屋で。もちろん僕は行ったことがなかったんですけど、とりあえず行ってみようということになって。そしたら、岡本さんがえらい気に入っちゃって(笑)。翌日行こうと思っていたとこがあったんだけど、結局2日連続でその湯豆腐屋に通うっていう...(笑)。

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