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ドラマのものさし・特別編 Special Interview 川のほとりに、転がる人生。 ドラマ24『リバースエッジ 大川端探偵社』 脚本・演出 大根仁 

2014.04.18

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会
「下町の人間がみんな人情があっていい人、なわけはない」

-原作との違いという点では、村木が毎回、依頼者の予知夢を見るという設定がありますね。たとえば塚本晋也監督の『悪夢探偵』とか、夢探偵を描いた筒井康隆の『パプリカ』など、「夢と探偵」はどこか親和性が高いような気もします。あと、ご覧になっていたかどうか分かりませんが、北川景子が主演した『悪夢ちゃん』というドラマでは、必ずその回のエピソードを予見するような夢を見るシーンから始まります。あの予知夢の設定はどこから来たのでしょうか。

大根: あれは、1話を書き始めた時点で、原作に沿っていくと村木の主役感がまったくないことに気づいて、これはちょっとマズいなと思って付け加えたんですよね。で、書きながら、最終話で「なぜ村木が予知夢を見るのか」を回収しようかとも思ったんですが、それもなんかありがちだなと思って、特に回収しないまま終わったっていう(笑)。

-そ、そうだったんですか。なんというか、デヴィッド・リンチ的といいますか、とても幻惑的で印象に残る設定なんですけどね。

大根: うん。村木は、放っておくと無味乾燥なキャラクターになってしまう恐れがあったので、ああいうものをひとつ背負わせておいてもいいかな、と。まあ、予知夢という設定を付け加えたことで、なんとなくの背景はできているんですけどね。たとえば、小さい頃からああいう夢をよく見る子どもで、それによって人とはどこか違うと感じながら生きてきて、だから自分には収まるべき場所がどこにもないんだと思っている男、というような。

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-ああ、なるほど。オダギリさんの佇まいもありますが、ストレンジャーというか、どこか達観した観察者のまなざしのようなものが見え隠れするのはそのせいなんですね。メグミ役の小泉麻耶さんは、障害者向けのデリヘル嬢を演じた映画『暗闇から手をのばせ』もすばらしかったんですが、このドラマでは毎回、抜群のプロポーションを活かした衣装も見ものです。あの衣装のセレクトは大根さんが?

大根: やっぱり深夜なので、お色気要素は必要だなと思っていて。村木は衣装を変えられないし、所長の衣装で引っ張るわけにもいかないし(笑)。原作を読んで、いちばん遊び甲斐のあるキャラクターはメグミだなと思っていたので、原作にはない「夜は風俗嬢」という設定を付け加えました。

-倖田來未とは違う、本来の意味でのエロかっこいいキャラクターですよね。

大根: そう。小泉さんが決まってから、あのコに合わせて作っていったキャラクターですかね。

-メグミがいることで事務所の空間に動きと広がりが生まれるんですよね。所長も村木も事務所ではそれほど動かないんですけど、メグミは結構いろんな動きをするので。もし、あそこにメグミがいなかったらと考えると...。

大根: 地味過ぎますよね(笑)。

-毎回、一癖も二癖もある個性的な人物が依頼者として登場しますが、これまたキャスティングが絶妙ですね。

大根: 脚本を書きながら頭に浮かんだキャストはプロデューサーにお願いして打診してもらいました。アイドルの回(第4話『アイドル・桃ノ木マリン』)だったらマキタスポーツがちょうどいいなとか。

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-原作のイメージに寄せている登場人物もいれば、そこからさらに膨らませて立体化している人物もいますね。

大根: そうですね。第3話(『ある結婚』)の岩井秀人君も、原作のイメージとはちょっと違うんだけど、あれは最初から岩井君がいいなと思ってました。

-ああ、あの岩井さんもすばらしかったですね。あと、原作ではほぼ毎回、「Bar KURONEKO」で内海佳子師匠みたいなママさん相手に所長と村木がその回の依頼を反芻しながら飲むことになっていますが、ドラマでは毎回違う店で飲んでますね。

大根: 「Bar KURONEKO」を作っちゃうと、あの婆さんも用意しなきゃならないし、婆さんが話をまとめるのもちょっとどうかな、と。ああいうまとめのセリフは所長に言わせたほうがいいだろうし、あと浅草は面白い飲み屋がたくさんあるので、毎回場所を変えて画面に変化をもたせよう、という狙いもありました。

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-基本的にはすべて浅草周辺でのロケなんですか?

大根: そうです。山谷とか三ノ輪まで入ってますけど、半径2、3キロ以内ですよね。第2話(『セックス・ファンタジー』)のラブホテルの内部だけセットですけど。あんな鏡貼りの部屋はないですからね(笑)。

-確かに、鏡貼りの部屋を俯瞰で撮ってますしね。ロケではあんな風には撮れない、と。もともと大根さんは、浅草界隈、都築響一さん言うところの"東京右半分"のエリアには詳しかったんですか?

大根: ぼくは実家が千葉の船橋なので、中高生の頃に東京に遊びに来ようとすると、まず錦糸町とか浅草辺りになるんですよ。名画座とかに通うようになると、総武線一本で行ける浅草に行くことになる。今は六区辺りも映画館はほとんどなくなっちゃいましたけど。もちろん、その頃は観音裏みたいなディープな場所に足を踏み入れることはなかったものの、街を歩く人たちの雰囲気が、たとえば渋谷や新宿みたいな若者中心の街とは明らかに違うなとは感じてましたね。

-そういえば第1話(『最後の晩餐』)で、村木が「下町に人情なんてないですよ。テーマパークと一緒です。金を払えば、いくらでも下町らしいキャラクターを演じてくれるんです」などとうそぶくシーンがありました。12話を通して、村木が唯一、下町について批評的な言葉を吐くシーンでもあるんですが。

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大根: 原作にはないセリフですけど、いかにも狩撫さんが書きそうかなと思って(笑)。まあ、「下町・人情・ノスタルジー」で撮るのは簡単なんですけど、原作が持つ、下町を俯瞰で捉える乾いた視点みたいなものは割と意識しましたね。そういう意味で言うと、「雷門と仲見世は撮らない」というのはあらかじめ決めていました。いわゆるザッツ浅草のランドマーク的な場所は撮らないでおこう、と。

-確かに観光地としてのオモテの浅草とは違う陰の部分が描かれていますよね。

大根: あと、身近に下町の人間がいるんですけど、まあ性格悪いんですよ(笑)。

-下町の人間がみんな人情があっていい人かっていうと...。

大根: そんなことはない!と。すぐ人の悪口とか言うし(笑)。地方出身者で下町に憧れて住んでいて人情がある人はいっぱいいますけどね。

-その辺は、大根さんの下町観のようなものがドラマにも出ている、と。

大根: そうかもしれないですね。

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