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ドラマのものさし・特別編 Special Interview 川のほとりに、転がる人生。 ドラマ24『リバースエッジ 大川端探偵社』 脚本・演出 大根仁 

2014.04.18

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「今回、難しかったのは、原作が未完だということですね」

-下町を舞台にした人間ドラマということで言うと、本作は江戸的というか、落語のような味わいもあります。画面の安定感も含めて、名人の落語を聴いているような語り口というか。以前「『モテキ』は監督としての青春期だった」とおっしゃっていたかと思うんですが、それに則れば、本作で演出家として円熟の領域に行きつつあるのかな、などと思ったのですが。

大根: それはないんじゃないですかね?(笑)『恋の渦』みたいな映画も撮ってるし、次の映画も青春ものですから。全然、円熟とは程遠い。

-それを聞いて安心しました(笑)。もうひとつ、江戸的ということで言うと、探偵社の事務所の壁に歌川国芳の浮世絵が飾られていたのが印象的でした。ひとつは巨大な骸骨を描いた『相馬の古内裏』で、ひとつは最近「江戸時代に描かれたスカイツリー」として話題になった『東都三つ又の図』ですね。

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(c)「リバースエッジ 大川端探偵社」製作委員会

大根: あの骸骨の絵は、前から何かのセットでハマるところがあれば使いたいな思っていたんですけど、なかなかあんな絵を背負えるセットがなかったんです。原作で描かれている事務所は割合クラシックなタイプのレイアウトで、これをそのまま再現するのは簡単はなんだけど、何かちょっと違うテイストが欲しいなと思っていた時に、「そういえば、あの国芳があったな」と。「人間、ひと皮剥けばみんな骸骨なんだよ」みたいなメタファーとか、最終話に向けて不穏なムードをあらかじめ仕込んでおくとか、そんなことでもないんですけど。

-ないんですか!(笑)。

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大根: 何か意味ありげに見えたらいいな、ぐらいの感じで(笑)。まあ、あの絵が単純に好きだったという話なんですけどね。あと、事務所に関しては、浅草から合羽橋(業務用の調理器具などを扱う問屋街)が近いので、村木が使っている机や棚は厨房用のものを揃えたんです。厨房器具のメタリックな質感とか機能的な感じも前から気になっていて、どこかで使いたいなと思ってました。

-今回、画面のつくり方としては、フィックスが基本で、ゆっくりと横移動したり、割とスタティック(静的)な画が多い印象があったんですが、その辺りは意図があるんでしょうか。大根さんというと、手持ち撮影が多いイメージもありますが。

大根: 確かに『モテキ』なんかは手持ちが多かったんですけど、今回はああいった生々しい話でもないですし。そういえば、映画『恋の渦』も、ほぼ全編手持ちですね。まあ手持ちに飽きてきたというか、疲れてきたというか(笑)。内容的にも今回はきっちりした画で見せていったほうがいいな、と。

-映像的に参照した作品は何かあったんですか?

大根: うーん、何かあったかなあ。

-たとえば、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』なんかを想起する場面もあったんですが。

大根: ああ、それで言うと、同じ監督の今年公開された『オンリー・ゴッド』かな。バンコクが舞台だったんですけど、夜の雰囲気とか色使いが浅草の猥雑な感じにちょっと近いなと思って。ハイスピード撮影の使い方とか、確かに影響されているかもしれないですね。

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-あと、今回オープニングとエンディング曲をEGO-WRAPPIN'が手掛けていて、ドラマの世界観に最高にハマっているんですが、劇伴もEGO-WRAPPIN'の森雅樹さんが手掛けています。森さんが劇伴を手掛けるのはこれが初めてですよね。

大根: 初めてです。EGOの音楽を聴いていて、ずっと森さんは劇伴ができる人だと思っていたんですよ。こういう仕事をしていると、バンドサウンドを単音で聴く癖がついていて。もちろんバンドサウンドの厚みのある音の良さもあるんですが、劇伴として考えた場合、そのサウンド構造だとちょっとうるさくなる可能性がある。そこで、リズムを抜いたり、ギターを抜いてベースだけ残したり、音数の少ないもので展開させていくのがぼくは好きなんですけど、EGOの曲を聴いていると、「この曲のギターのリフだけ」とか「このベースラインだけ」「このドラムだけ」みたいに単音だけ抜き出しても十分にかっこいい。だから、劇伴ができる人なんじゃないかな、と。このドラマ化の話が決まった時、浅草の空気を知っているミュージシャンがいいなと思って、森さんが浅草に住んでいることも知っていたので、それでお願いしてみようと思ったんです。最初はオープニングと劇伴だけという話だったんですけど、エンディングもやってもらえるという話になって。

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-あのエンディング曲がまたいいですよね。金曜の夜に酒でも飲みながら見て、最後あの余韻に浸りつつ終わる、という。オファーする際に何かイメージは伝えたんでしょうか。

大根: オープニングはツカミという部分もあるので、今まで積み上げてきたEGOのテイストにプラス新しいイメージを入れた、ファンも納得のザッツEGO-WRAPPIN'みたいな曲を、とお願いしました。エンディングに関しては、森さんなりのシティポップというか、アーバンな雰囲気で、と。ああいったループ系の曲はこれまでのEGOにはないタイプなので新鮮ですよね。

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