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スティーブ・ジョブズ追悼企画。 「ジョブズの死」について、我々が想うこと。

2011.10.14

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vol.7 小林節正(. . . . . RESEARCH主宰)
vol.6 加賀美健(アーティスト、STRANGE STORE オーナー)
vol.5 高木正勝(映像作家 / 音楽家)
vol.4 安全ちゃん(アクティビスト)
vol.3 鈴木芳雄(編集者 / 美術ジャーナリスト)
vol.2 ςκ⑧十hΙℵƓ
vol.1 蔡 俊行(フイナム発行人)

vol.4 安全ちゃんの場合
――iPhoneプロジェクト。それは完全な理性、倫理、美の概念がプログラムされた端末に帰依することで、人類が高次の存在へと人工進化するための計画だった。


 iPhone発売当初、私はそんな陰謀論にとらわれていた。iPhoneを手に入れた人々が続々と、何やら確信に満ちた瞳の持ち主に変貌し、精神の次元上昇を果たしていくのを目の当たりにしたからだ。

 iPhone型の人類というのは、旧人類とは全く違う。絶え間なく他者と意識を通わせ、目に映るものを共有し、道に迷わない。最初は反発していたが、楽しそうなみんなの様子を見て、次第に「過ちを繰り返してばかりの卑小な旧人類なんて今すぐやめて、iPhone型の人類に生まれ変わりたい!」と思うように。そうして、私もiPhoneに帰依する道を選んだのであった。

 iPhoneを購入してすぐ、自分とiPhoneが一体化しはじめた。「魂が格納されているのはiPhoneで、肉体はデバイスにすぎない」という感覚だ。初めてそれを実感したのは、知人に頼まれてiPhoneを貸したときのこと。「その間はパソコンでネットすればいいや」と気軽な気持ちで貸したのだが、iPhoneをとりあげられるやいなや、たちまち顔面から表情が失われ、思考は停滞し、ヒトでありながらヒトでない何かに成り果ててしまった。やっぱり、iPhoneは人類の革新をもたらす意識拡大装置だったんだ......! そしてその副作用は、iPhoneなしではヒトとしての形を保てなくなるということ。

 ジョブズといえば元ヒッピー。そしてヒッピーといえばLSDや禅・瞑想を通じた意識拡大。LSDによるトリップ体験を「今までで最も重要な経験の一つ」と位置付ける彼にとって、意識の拡大は重要なテーマのひとつのはず。「脳から直接ネット接続が可能なヒト型ネット端末への進化」という、インターネット依存症患者たちの白昼夢であり、意識拡大の最終形でもある未来の実現は、ジョブズの早すぎる死により、ぐっと遠ざかってしまったのかもしれない。

 人型ネット端末への進化を望みながらも何もできない私としては、ジョブズが霊界から「i大脳」開発を指揮していることを祈るばかり......。今も実家で眠っている初代iMacに向かって五体投地を繰り返しながら......。

jobs_anzenchan_prof.jpg 安全ちゃん
アクティビスト
d.hatena.ne.jp/anzenchan/
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