That Way About Things
ハラダユウコ
Archive&Style Shop Press
1971年2月東京生まれ。アメリカ、ヨーロッパを中心に幅広いジャンルと年代からバイイングされたUSEDやデッドストックを扱う古着屋「アーカイブ&スタイル」のショッププレスとして、古物をこよなく愛する日々を送っています。
www.archiveandstyle.com
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新入荷☆ Smoking Jacket 編
2009.10.31
フイナムブログをご覧の皆様こんにちは☆
さて、今日はパタパタしていたら、
時間も少なくなってしまったので、
サクッと1点ご紹介いたします☆
写真は,
推定1920~30年代USA製の
ショールカラー・スモーキングジャケットです。
今日はスモーキングジャケットについて、
少しお話を。。。の前に、
Smoking Jacket (スモーキングジャケット)といえば、
実は、フランスやイギリス以外のヨーロッパ諸国では、
Tuxed Jacket(タキシードジャケット)のことを指すので、
タキシードジャケットの歴史に少し触れたいと思います。
今日、タキシードジャケットといえば、
男性用の主に夜のパーティーや会合で着用される礼服で、
最近では、夜だけでなく午後の会合などにも着用が許されていますが、
同じ目的で着用される燕尾服よりも、
ややカジュアルな物という位置にあるジャケットです。
ちなみに参考までに、こちら↓が、
タキシードジャケットの写真です。
そしてこちらが、いわゆる燕尾服ですね。
このタキシードジャケットの事を、昔から、
イギリスではディナージャケット(会食用服)と呼び、
イギリス以外のヨーロッパ諸国では、
スモーキングジャケット(喫煙服)と呼ぶのですが、
どうして国によって呼び方が違うのか?
という事を簡単に説明したいと思います。
また、文章の混乱を避ける為に、
ここから先はこの礼服をタキシードジャケットという、
アメリカ式呼び方で統一します。
(日本人である私たちにも一番しっくりくる呼び方でしょう。。。)
タキシードジャケットが生まれたのは、
約130年前の1870年代初頭の頃、
ドイツやフランスのカジノで、
ショールカラー(へちま襟)の尾のない燕尾服を、
着る事が流行したのに由来します。
ショールカラーで尾のないジャケットは元来、
自宅の部屋でくつろいで喫煙する際に着る、
喫煙服の特徴だったので、
このショールカラーを取り入れた尾のないジャケットの事を、
ヨーロッパ諸国では、
スモーキングジャケットと呼ぶようになりました。
そのヨーロッパの風習を、
1876年、
当時のイギリス皇太子であるエドワード7世が英国に取り入れ、
スモーキングジャケットの特徴を踏襲した、
ディナージャケットを考案し、
公式なパーティーなどで着用するようになった事から、
イギリスではディナージャケットの名で広まっていきました。
(ちなみに、このエドワード7世も、先日ご紹介したフリーメイソンのひとりです。)
更に遅れること10年後の1886年、
アメリカ・ニューヨーク州のタキシード・パークという所で、
ピエール・ロリラード4世が正装舞踏会を開きます。
その際、招待された紳士は皆、
正式な正装である燕尾服を着用していたのに対し、
主催者の息子である、グリス・ウォルド・ロリラードが、
燕尾服に着替えるのを忘れたふりをして、
真っ赤なスモーキングジャケットを、
着用したまま出席したのが始まりとされています。
最初はその服装に批判的だった人々も、
燕尾服より気軽に着れるという理由から、
徐々に支持者が増え、
いつのまのか礼服の一つとして認められるようになっていきました。
そして、アメリカではこの最初の舞踏会の地名にちなんで、
このジャケットをタキシードジャケットと呼ぶようになりました。
今回、ご紹介しているスモーキングジャケットは、
もちろん、この上で紹介してきた、
いわゆる礼服にあたる、タキシードジャケットではなく、
ヨーロッパでもともと、喫煙服と呼ばれていた、
くつろいでタバコを吸うときの為の、
スモーキング・ジャケットです。
昔の紳士達は会合やパーティーの席で、
タキシードジャケットや、燕尾服を着用し、
その後、スモーキングジャケットに着替えてバーに集まり、
カードゲームに興じながら政治の話や、仕事の話に花を咲かせ、
葉巻やお酒を嗜みました。
そんなわけで、
礼服であるタキシードジャケットや燕尾服が、
ほぼ黒で統一されているのに比べて、
スモーキングジャケットは実にデザインもカラーも豊富です。
折角なので、
いろいろなスモーキングジャケットの写真も載せておきます。
珍しくショールカラーじゃなくラペルカラーのダブル(1920)
19世紀のバスケット織りといわれる珍しいウールの生地の物(1880~90)
などなど、
こうして並べてみると、本当に様々です。
また、こうしたスモーキングジャケットに良く似たアイテムで、
ナイトガウンがあります。
以下、1940年代のUSA製の
ブランケット・ナイトガウンの写真を載せます。
ショールカラーや、
ポケットの形、
パイピング飾り、
腰紐の素材や、
ジャケットの生地と同系色で統一されている点など、
スモーキングジャケットのデティールが、
あらゆる箇所に見て取れるのが、
お解かりいただけるかと思います。
現代では部屋着としてもTシャツやスウェット派の人も多く、
パジャマやナイトガウンを着る人も減っていると思いますが、
昔はこうして、
場面や時間や風習によって、
衣服がいろいろと使い分けられていたことも豊かさや、
ゆったりとした時間が流れていた感じがして、
それはそれで、うらやましいな~と思うハラダです。
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