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オノ セイゲン空間デザイナー/ミュージシャン録音エンジニアとして、82年の「坂本龍一/戦場のメリークリスマス」にはじまり、多数のアー ティストのプロジェクトに参加。87年に川久保玲から「洋服が奇麗に見えるような音楽を」という依頼により作曲、制作した『COMME des GARCONS / SEIGEN ONO』ほか多数のアルバムを発表。Photo by Lieko Shiga

RECORDING, SOUNDS and ENVIRONMENT

オノ セイゲン
空間デザイナー/ミュージシャン

録音エンジニアとして、82年の「坂本龍一/戦場のメリークリスマス」にはじまり、多数のアー ティストのプロジェクトに参加。87年に川久保玲から「洋服が奇麗に見えるような音楽を」という依頼により作曲、制作した『COMME des GARCONS / SEIGEN ONO』ほか多数のアルバムを発表。

Photo by Lieko Shiga

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You can SEE the sound!/音が見える(後半)

2011.02.26

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 ブラジルでは、トゥカーノ、サビアやいろいろなインコは比較的どこでも、また地域によりいろんな種類の鳥が見られる。歌にもいろいろ出てくる。しかしサンパウロやリオに住んでいてもアマゾンの熱帯雨林にまで行ったことがある人は少ない。そしてどんなにいいカメラを持っていても、普段はカモフラージュして隠れているのですべての鳥や虫の姿を捉えることはできない。その地域にどんな種類の鳥や虫が、どのくらいいるかを調べるには、陽が昇る前と沈んだあとの2時間、その時間帯の音を聞けば判る。やはり見えないのだが、すさまじい勢いで鳴いているのだ。(日本でも最近、聞かなくなったが)カエルの合唱どころではない。同じ時期に同じ場所で(定点観測)録音しても、気がつくと居なくなってしまった、というのが環境の変化を示している。

 

DSC03929.jpg

 私が、初めてブラジルを訪れたのは、19881月(真夏)『ELIS/Sadao Watanabe』のレコーディングであった。渡辺貞夫さん40度の炎天下でゴルフ、私はゴルフはしないのでビーチとカイペリーニャ、シュラスコ、フィジョアーダがブラジル入門だった。そのレコーディングでは、現在NYC在住のセザール・カマーロ・マリアーノ(ピアニスト、マルチグラミー受賞プロデューサー、エリス・レジーナの元夫)がアレンジャー。以来、東京、NYCでも会ったが、レブロン海岸では22年ぶりの再会。アマゾンで録ってきたばかりの、先住民のうたとおどり、熱帯雨林の朝と夜の音を、現在考えられる世界最高のレゾリューションで聞いてもらうと「You can SEE the sound! これは音の空間、数多くのレイヤーがすべてが見える、ファンタスティック!」と大絶賛。さすが世界一流の音楽プロデューサーで1ビット DSD 5.6MHz」の音の印象について、ほんのちょっとした気配まですべて聴こえる、繊細さ、精密さ、空間再現性まで細かく分析。早稲田大学の山崎先生の試作機「VC-21WSD」で収録した8トラックからコンバートした2トラックを「KORG MR-2000S」でヘッドフォン試聴してもらった。「自分の次のアルバムでは、ピアノとヴォーカルで、ピアノに46トラック、ヴォーカルに2トラックでレコーディングできるからこのシステムはパーフェクト。今までも「Pro Tools」ではなくアナログでやってきたので、ぜひともこのシステムでダイレクト・レコーディングしたい」とのこと。

 音楽家という人種は、音質にもとことんこだわる。ちょうどソムリエが自分の感性と知識を、お客さまへワインの道しるべとしてこだわるように。


 ELIS_Sadao.jpg

渡辺貞夫エリス

ワーナーミュージック WPCL-106471988年)

パーカーズ・ドーム』(85年)ではPAと録音の両方を担当。そして88年「セイゲン、ブラジルに行くぞ」というのが、私の初めてのブラジル体験で6週間もリオに滞在エリス・レジーナに捧げられ、その元夫だったブラジルを代表するピアニスト、セザール・カマーロ・マリアーノがアレンジ。私は録音とミックスを担当。