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696。
2009.07.29
スタイリストになって、まっさきに「作品のモデルやって」と頼んだカオリちゃん。「うん、いいよ」ってふたつ返事の彼女にボクが用意したのは、渋谷のブルセラショップで買ってきたセーラー服。「川村カオリにこれ着せるつもり?」なんてツッコミつつ、「まあ、シガちゃんだから許す!」とか言ってけっこーノリノリだったぢゃん。
ボクより歳がひとつ上で、長いスカートひきずってた不良の先輩の彼女みたいでやさしかった。DJのとき、ライブのとき、恵比寿や渋谷や下北の明け方のラーメン屋で、体中落書きだらけの連中と口ゲンカばっかしてるボクをいつも笑って見てた。思えば初めてもらった仕事もソバットのPVだったし、最初に洋服やろうって誘われたのも彼女だった。
それからもう何年もご無沙汰で、でもなんか声が急に聞きたくなって、ケータイのメモリから彼女を探した。「なによ、シガちゃんげんきー?」久しぶりだけど相変わらず元気そうだった。カオリちゃんの娘の成長のこととか、ボクも結婚して子供ができたこと、そんなことを報告して今度食事でもと約束して電話を切った。それが去年の9月末。それから約一週間して、彼女に「がん」が再発したことをニュースで知った。
何度も電話しようとしたけどできなかった。そいつがリンパに転移した状況がわかるから余計に。いっそ知らないふりで話そうかとも思ったけどやっぱり。でもあの電話が最後になっちゃうかもしれないと思うと、やっぱどーしてももう一度話したくて。
そんな時にラジオで彼女の声を聞いた。撮影から帰る途中の車のスピーカーから。司会はテリー伊藤さんで、新しく出来たアルバムを紹介してる。「バタフライ」って曲を聴いたあと、思わず彼女に電話をかけた。でも2コールくらいしてブチッっと切れた。生放送中だし当たり前だ。でもボクが聴いてることは確かに伝わったと思う。話せなかったけど、そのやりとりができただけで、最後に一瞬でもボクの電波がカオリちゃんに届いただけでよかったと思ってる。
ご冥福をお祈りします。
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