HOME  >  FASHION  >  FEATURE

FASHION_FEATURE

  • OLD
  • NEW

古着サミット。 業界屈指の古着好事家3名が集結!

2014.02.21

このエントリーをはてなブックマークに追加
lf_for_good_living_stussy_main.jpg

栗原道彦、今野智弘、阿部孝史。フイナムブロガーとして名を連ねるこの3名は、それぞれがかなりの古着通。というわけで、フイナム久々の古着企画は、達人3人によるスペシャル鼎談と相成りました。各人に自分の得意分野を持ち寄っていただき、3つのテーマのもとに白熱のトークが展開されました。「昔はよかったよね」的な懐古主義に終わらない、"今の古着"にきちんと踏み込んだ、スペシャルな鼎談となっております。

Photo_Yuichiro Noda
Edit_Ryo Komuta

今野智弘(写真左)
〈NEXUSVII.〉デザイナー。2001年 N.Yより〈NEXUSVII.〉を始動。14年2月に〈NEXUSVII.〉の都内初となる直営店舗「V.E.L」をオープン。

栗原道彦(写真中)
フリーバイヤー。1977年生まれ。2010年に有限会社ロストヒルズを退社。2011年よりフリーでの活動を開始。

阿部孝史(写真右)
フリーランス エディター。出版社勤務を経て、フリーランスに。雑誌編集業の他、只今色々準備中。1976年生まれ。

lf_old_clothes_summit_sub1.jpg
第一講 栗原道彦氏プレゼンツ "90年代的アイテム"

栗原: 僕が今日持ってきたのは、90年代中頃に流行っていたものですね。20年ぐらい経って、今またリバイバルというか、僕らから見たら懐かしいし、20代の子たちが見たら新鮮っていう、そんなアイテムです。

阿部: 懐かしいね。。

今野: この辺の相場作ったの、栗ちゃんでしょ。吊り上げたの? 笑

栗原: いやいやいや 笑。こういう「チャックトグル」とか、〈パタゴニア(patagonia)〉とかは、当時は普通に手に入りましたけど、今となってはヴィンテージって言ってもいいものにはなってますね。90年代の終わりに〈リーバイス®(Levi's®)〉とか〈ヴァンズ(VANS)〉、そしてこの〈コンバース(CONVERSE)〉もアメリカ製っていうのがなくなってきたので。

lf_old_clothes_summit_sub2.jpg

今野: いまやスニーカーで「MADE IN USA」って、〈ニューバランス(New Balance)〉しかないもんね。だから、大統領がランニングするときは、絶対に〈ニューバランス〉を履いているし。

阿部: このコンバースとか、今はいくらくらいするの?

栗原: サイズが良いデッドだったら4~5万ぐらいじゃないですかね。

阿部: あぁ、そんなにするんだ。

栗原: でも、売れると思いますけどね。こないだ「ワンスター」のローファーがヤフオクで、10万超えたらしいですし。

阿部: デッドで?

栗原: デッドじゃなかったみたいですね。

今野: いや、でもこのローファーって、全然ないもんね。。

栗原: このへんのアイテム見てて思うのは、こういうのが、今はアメリカより日本の方が全然(ものが)ありますね。

今野: 「ジャックパーセル」なんて、ものすごい高騰しちゃってるんでしょ?

栗原: 特にタイ人、マレーシア人ですよね。「eBay」だと「ジャックパーセル」の水色やピンクのチェックなんかはサイズ7でも、3~4万とかまで上がってましたね。あと、今ショートホーン(注:40年代後期~50年代頃の〈リーバイス®〉のウエスタンウェアに付けられたラベルデザインの名称。短い角の牛が描かれていることから)のデニムのウエスタンシャツ、10万するらしいですよ、向こうだと。

今野: えー!

lf_old_clothes_summit_sub3.jpg

栗原: そうなんですよ。だから、ヴィンテージの値段は、昔は日本でいくらで売れるから、アメリカではこの値段で買える、っていう流れで決まってたんですけど、ここ数年はやっぱり「eBay」の影響もありますし、そういうタイ、マレーシアみたいな新しい国もあるので、日本のマーケットが世界の値段を決めているわけではなくなってしまったんですよ。そこが今日本の古着屋さんが、一番キツいところだと思うんですよね。

今野: そうだよね。

栗原: 今は逆に欧米やタイなんかから日本の古着屋に買いに来てるくらいですからね。ヤフオクでも、ラルフ(ローレン)の92年、93年あたりのものが高くなってますし、全体的に、90年代的なアイテムは世界的に注目が集まってると思いますね。

阿部: 「スナップT」(注:〈パタゴニア〉の「シンチラスナップT」)とかもアメリカでは高いよね。日本の方が全然安い。

今野: 向こうは向こうで、誰かが吊り上げてるのかな?

栗原: うーん、思うのは日本が恵まれすぎてるのかなってことなんですよね。アメリカ人がオールドの「スナップT」を欲しいって思っても、結局「eBay」でしか買えないじゃないですか。地元の古着屋行ったって、フリマに行ったって滅多に無いし。。

今野: まぁね、そこで競るしかないもんね。

栗原: そうなんですよ。そうなるとオークションで戦うしかないんで、必然的に(値段が)上がっちゃいますよね。

lf_old_clothes_summit_sub4.jpg

阿部: これ、ベビー?

栗原: そうですね。

今野: 発色がいいですよね。

lf_old_clothes_summit_sub5.jpg
lf_old_clothes_summit_sub6.jpg

栗原: 今のやりとりを聞いていても思うのは、これが「ベビー」(注:〈パタゴニア〉のベビーレトロカーディガン)かどうかって話すのは、日本人ぐらいですからね 笑。とにかく僕が今日持ってきたのは、90年代半ばぐらいまでは、自分が日常的に着ていたものです。もちろん全部買い直したものではあるんですけど。

今野: 「ベビー」は今いくらぐらいなの?

栗原: これはそんなにしないんじゃないですかね。2万ぐらいとか。でも、当時は3万8千とかしてました。ただ、アイテム自体は昔着てたものと同じなんですけど、合わせ方は変わりましたよね。これに「XX」履いて、「チャックテイラー」履いたらそのままになってしまうと思うので。

阿部: コートの下とかに着るといいよね。

今野: でも、栗ちゃん、選ぶ色がやっぱりヤンキーだよね。紫とか赤とか 笑。

阿部: 笑。これはS?

栗原: Mですね。

ー阿部さんも結構〈パタゴニア〉は持ってるんですか?

阿部: そうでもないですね。結構手放してしまったので。もちろん好きですけどね。

栗原: こっちのリバース(ウィーブ)も10何年ぶりですね。

lf_old_clothes_summit_sub7.jpg

阿部: アメリカ、これ?

栗原: いや、アメリカから変わってすぐのメキシコですね。

今野: これ、最初偽物かと思って、手出せなかったんだよね。

阿部: そうだよね。

栗原: リメイクが散々90年代に作られてましたからね、フルジップとか。オリジナルは出てきたら大概タグが切られてるんで、やっぱりB品で余った生地で作ったものじゃないかって話がありますよね。

今野: 確かに切られてるのばかりだもんね。

lf_old_clothes_summit_sub8.jpg

阿部: 逆に言えば、切られてないものは怪しいの?

栗原: まぁ、今はステッチとか見ればわかると思うんですけどね。

今野: まだあるんだね、こういうの。

栗原: いやー、あんまりないですけどね。。

今野: でも、毎回アメリカ行くたびに、栗ちゃんには感心するよ。だって、全然見つからないもん、ホントに。。

栗原: まぁ、昔みたいに10日間とかじゃ無理ですね。昔はロスにそれぐらいいれば、形にはなったんですけど。。

阿部: 今、ロスに10日間いたらどうなるの??

栗原: 今は、ロスでは洗濯と、たたみしかやってないですね 笑。ほぼ仕入れしてないです。

ーなるほど。だから、どんどん日数が伸びていっているんですね。

栗原: そうなんです。どんどん田舎の方に行かないと、っていう感じにはなってますね。さっきも言いましたけど、今はみんな「eBay」をやってますし、ローカルの人たちもスリフトを回っていますし、昔と比べると競争がハンパじゃないですね。

今野: だよね。この前もフリマにいたら普通のおじさんが、「XXあるよ」って声かけてきたから見にいってみたら、パッと見「濃い!」って思ったのに、左右段違いのカットオフになっていたっていう残念なことがあったな 笑。でも、知識的にもアメリカ人が昔の90年代の日本人並になってきてるよね。

栗原: そうですね。

阿部: そういうお小遣い稼ぎしてる人って多いの?

栗原: 多いですね。今アメリカでもお宝発掘的な番組(注:『Storage Wars』)がやってて、それの影響もありますよね。

阿部: はいはい。古い家に行って、お宝を探すみたいなやつね。

栗原: だから状況としてはなかなか厳しいですよね。

今野: エステート(注:「エステートセール」。個人の家全体を解放して行われる、財産・遺品処分のセール。食器から衣類、家具など多種多様なものが購入できる)とか行ってる?

栗原: 一時期は、よく行ってましたね。

今野: 昔ほど出ないのかな。

lf_old_clothes_summit_sub9.jpg

栗原: いまは、8時開場とかだと、みんな5時くらいから並び始めるんですよ。エステートをオーガナイズしてる会社があって、ネットにいつどこでやるっていう情報が全部載ってるので。昔だったら古いものの出所はラグ屋(注:専門業者の古着倉庫)が多かったんですけど、今は古いものをってなると、エステートから出るほうが多いんじゃないですかね。年代的にも、今が戦前生まれぐらいの方が亡くなるっていうタイミングなんですよね。なんかそういう話をすると、ハゲタカみたいでいやですけど。。

今野: でも、もう随分メジャーにはなってきてるよね。

栗原: やっぱりそれだけアメリカの家が広くて、いろんなものをしまっておける、かつ忘れられてるものがある、っていうことだと思うんですよね。

今野: サンフランシスコとかボストンとか、そういう古い街の方が出そうだよね。

栗原: そうですね。古い街で、かつ人の出入りがあんまりないところがいいですね。だから、サンフランシスコでもエステートがいいエリアと、そうでないところがありますし。白人が昔から住んでるところはやっぱりいいし、逆にメキシカンとかが60~70年代に住み始めたようなところでは、古いものは出ないですね。

今野: そうだよね。すっかりメキシコ人の小遣い稼ぎになってるもんね。。

ー日本ではそういった催しはないんですか?

阿部: 古材とかはありますよね。家を壊すときに、梁とかに古い木が使われてたりするんで、そういうのは競りがあるみたいですよ。でも、家ごと丸々っていうのはないですよね。

栗原: 服は、おそらく古いのを取っておかないんですよね。50~60年代に買ったジーパンが出てくるかっていうと、なかなか。。

阿部: 刺し子(注:手芸の一分野で、布地に糸で幾何学模様等の図柄を刺繍して縫いこむこと)とかはあるよね。

今野: ありますよね、藍染めのやつとかかっこいいですよね。結構高いですし。

栗原: そうですね。日本だとマーケットが限られるんですけど、海外に行くと、結構高いですね。

lf_old_clothes_summit_sub10.jpg
Louis Vitton 2013SS

今野: そういえば〈ルイ・ヴィトン〉も刺し子をネタにしてましたよね。ショーツとか。まんまヴィンテージを使ってるわけじゃないんですが、日本の刺し子をモチーフに使ったことで、けっこう話題になってました。

1  2  3  4  5  6

FASHION FEATURE TOP

  • OLD
  • NEW