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Special Articles on RUNNING SHOES スポーツシューズ評論家・南井正弘による「ランニングシューズ」についての寄稿文。

2014.06.13

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スポーツシューズ評論家としても知られ、「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日のランニングを欠かさないフリーライターの南井正弘。そんな彼がファッションとしてではない、パフォーマンスシューズとしてのナイキランニングの魅力を、自らの体験談とともに綴る。

Photo_Kengo Shimizu
Text_Masahiro Minai
Edit_Hiroshi Yamamoto

VOL.2_1980年代。南井青年が就職! まさかのライバルカンパニーへ。
高校を卒業し、1984年に大学のために上京する。その頃のスニーカーのトレンドはアッパーサイドのブランドストライプが目立たないことが必須条件。アディダスのスタンスミス、K.SWISS、トレトンのナイライトやXTLといったモデルがポピュラーで、この頃ナイキはことカジュアルシーンにおいては不遇の時代を迎えていた。

自分が大学4年を迎える頃にはブランドストライプがクッキリと主張するスニーカーの復権がRUN DMCの活躍によって為されたが、ナイキも一時期の不振から脱すべく、エアジョーダン、エアトレーナー、エアマックスといった革新的なプロダクトをリリース。急速に業績を回復させることに成功した。テレビ局のアナウンサーや大手出版社のような可能性の少ないと思われた就職活動は、思ったよりも健闘したが、それら業種からは最終的にどこからも内定は得られず、それ以外の業種で得たいくつかの内定からスポーツシューズブランドのリーボックジャパンを選んだ。つまり子供の頃の憧れブランド、ナイキのライバルブランドで働くこととなったのである。

アメリカのマーケットではフィットネスシューズの好調により1年間ではあるがナイキを抜いたといわれたリーボックだが、ランニングカテゴリーにおいてはナイキの後塵を拝していたことは入社したばかりの自分にもすぐわかった。当時のリーボックのトップモデルであるワールドトレーナーとナイキのエアマックスを比較すると靴づくりのレベルが全く違ったのである。それからはナイキを始めとした他社のプロダクトを研究するのがある意味日課となった。

上司の許可を得て競合サンプルとして会社の費用で購入するだけでなく、自費でもかなりのシューズを購入して走ったのは懐かしい思い出である。そのとき感じたのは、リーボックはフィット感に関しては他社と比較しても高いレベルにあったが、クッション性に劣り、ナイキはエア180を筆頭に、他のどのブランドよりもクッション性に優れていたが、シュータンをラバーなどで固定したダイナミックフィットは甲の高い日本人には向かないことが多いということ。

またエアハラチというハラチフィットを採用したランニングシューズは平地では快適だったが、下り坂を速いペースで走ると足がシューズ内部で前方にずれやすいこともわかった。これらは実際に運動して体感してみないとわからないことで、このことが「実際に走って書く」という現在の執筆スタイルの原点となっているかもしれない。

1997年に登場したDMX RUNというシューズで個人的にはナイキにかなり近づいたと思ったが、翌年に諸事情でリーボックジャパンを退社して、しばらくはフランスW杯に観戦に行ったりのモラトリアム期間を経てライターに転身した。

リーボックジャパン勤務時代は専らフットウェアのプロダクト担当だったので、執筆依頼はスポーツシューズがほとんど。運のいいことに2000年をピークにスニーカーブームが起こったり、2002年日韓W杯のようなビッグイベントも開催されたことからライター業は順調だった。

しかしながら昼夜逆転したライフスタイル、週に3,4回も焼肉とラーメンを深夜に食べる食生活で体力低下を感じ、2003年からスポーツジムに通うようになった。マシントレーニングを中心に自分なりにプログラムを組んで定期的にトレーニングすると筋肉量が増え、代謝がよくなり、体脂肪率は減ったが、しばらく筋トレ中心のプログラムを続けていると、上半身がゴリラのようになり、「これはマズイ!」ということで積極的に取り入れたのがランニングだった。

始めてみると、ただ走るという単純な行為が本当に面白い。走り始めこそキツイが、カラダが暖まる頃には本当に快適で、少しづつランニングの魅力に嵌っていった。そんなランニングの魅力をさらに高めてくれたのが2006年にナイキがアップルと共同でスタートさせたNIKE+の存在である。

シューズに装着したセンサーがiPod nanoと連動し、日々の走行データを収集し蓄積してくれる。これが本当にモチベーションが上がる。ナイキジャパン主催で出版社社員やライター、スタイリストなどを対象に「誰が一番長い距離を走ったか?」「誰が一番速く一定の距離を走ったか?」「どのチームが一番長い距離を走ったか?」というメディアチャレンジのようなイベントも行われ、これがきっかけで走ることがライフスタイルの一部となった人も少なくなく、自分もそんな一人だった。
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