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FEATURE| エナロイドと長岡亮介。メガネが引き寄せた強固な結びつき。

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エナロイドと長岡亮介。メガネが引き寄せた強固な結びつき。

日本のメガネの生産地といえば福井が有名ですが、岐阜県の中津川にも、品質にこだわったものづくりを行う工場があります。恵那眼鏡工業のファクトリーブランドとして誕生した〈エナロイド(ENALLOID)〉は、そのクオリティーを象徴するブランド。そんな〈エナロイド〉を愛用し、ブランドのヴィジュアルにも登場するのが、ペトロールズの長岡亮介さんです。長岡さんといえばメガネ好きとしても知られる人物。今回は〈エナロイド〉のディレクターである三島 正さんと一緒にメガネについてとことん語ってもらいました。

  • Photo_Yuta Tomura(Atelier),Shota Matsumoto(Factory)
  • Text_Yuichiro Tsuji
  • Edit_Ryo Komuta

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三島 正 / エナロイド ディレクター
1975年生まれ。海外のアイウエアブランドの展開に従事しながら、岐阜県・恵那眼鏡工業株式会社のオリジナルブランド〈エナロイド〉のディレクターも兼任、商品の企画からヴィジュアル制作に至るまでブランド全体を統括している。趣味は音楽/映画鑑賞と写真撮影。

出会いは“浮雲モデル”の制作にて。

まずはじめに、〈エナロイド〉というブランドのことについて教えてください。

三島岐阜の中津川に恵那眼鏡工業という一貫生産の工場があって、1947年に創業したんですが、〈エナロイド〉はそのファクトリーブランドですね。基本的には繊維系のアセテートという素材を使ってフレームをつくっています。この工場ならではの磨き方があって、ツヤの出方がすごく独特でキレイなんですよ。

長岡さんはブランドのヴィジュアルにも出演されているということだったんですが、もともとはどんなきっかけでお仕事をするようになったんですか?

長岡ぼくが東京事変というバンドをやっていたときに、グッズでメガネを制作してもらったんですよ。そのときに三島さんと知り合って。

三島そうでしたね。

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長岡亮介 / ミュージシャン
1978年生まれ、千葉県出身。ギタリストとして、学生時代からプロミュージシャンたちのサポートを行う。2005年には椎名林檎が結成したバンド「東京事変」では“浮雲”という名義でギタリストとして参加。同年、自身のバンド「ペトロールズ」を結成。現在は自身のバンド活動のほか、他ミュージシャンのサポートやプロデュースを行うなど精力的に活動中。

長岡バンドの中に3人、メガネをかけているメンバーがいて、その3人のモデルをつくるみたいな。ぼくはメガネが好きなんで、“浮雲モデル”に関してはいろんなお願いをして(笑)。

いろんな、というのは?

長岡フロント部分の装飾につける金具があるんですけど、それがギターの形になっていたりとか。ぼくが自分で弾いてたギターの絵を描いて、そこから型を起こしてもらったんです。

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三島本当に直筆で描いてくださいました。正直言って、はじめはそんなに本気だとは思ってなかったんです。だから最初の打ち合わせのときに面喰らって、その後わざわざうちの事務所まで来てくれてしっかりと腰を据えて話しながら進行しました。たしか、浮雲モデルは2型つくりましたよね?

長岡そうですね。メガネとサングラスの2型。一個じゃ足りなかったですね。ちょっとちがうデザインで色付きも欲しくなっちゃって。古臭いやつがつくりたかったんですよ、このとき。それで三島さんにぼくのわがままを全部聞いてもらったっていう。

三島本当にメガネが好きなんだなっていうのがわかったので、こちらも楽しかったですよ。でも、こだわりがあるぶん1型はツアーに間に合わなくて…。途中で追加で完成させましたね。

長岡出せるときに出すっていうのがペトロールズ感ありますね(笑)。

またつくりたいと思いますか?

長岡いやぁ、もうつくらなくていいかな。好きなものを買うくらいでちょうどいいですね。このときにやりきったから。

薀蓄ではなくメガネのプロダクト的な側面に惹かれる。

浮雲モデルの制作以來、ずっと繋がりがあるんですか?

長岡うん、そうですね。

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三島先ほど仰っていたように、ときどきエナロイドのビジュアルにも出てもらったり、一緒にメガネ屋さんで弾き語りをするツアーもしましたよね。「ヴァイタル・シングス」っていう名前で。

長岡ありましたね。ライブの予定は組んでたんだけど、他は空白だったから、突然レンタカーを借りてどこかへ行ったりして。ゆるい感じのツアーだったな。

三島一緒に旅してお土産持っていくような感じでしたよね(笑)。そのときもメガネのクロスとケースをつくりました。クロスには長岡さんの絵をプリントして、ソロのCDも一緒に制作いただいたりと、贅沢な旅でした。

長岡その絵っていうのも、ぼくが好きなものをただ描いただけなんですけど。

三島ギターとクルマとメガネと…。

長岡あとお酒(笑)。

長岡さんの趣味趣向をギュッと詰め込んだわけですね(笑)。長岡さんはむかしからメガネをかけているんですか?

長岡中学のときからメガネですね。コンタクトをしていたときもあるんですけど、目が疲れちゃうんです。やっぱりメガネがラクでいいなぁと。

メガネがファッションの一部になったのはいつ頃なんですか?

長岡20歳くらいかなぁ? ファッションというよりも、ぼくはモノとしてメガネが好きなんです。構造がカッコいいとか、そういう感じで好きになっていきました。たぶん、先天的なものというか、特になにかきっかけがあったわけじゃないんだけど…。

三島ギターにしても、クルマにしても、本当にモノが好きですよね。あと自転車もお好きじゃないですか。

長岡そうそう。それと同じような形でメガネも好きで。だからバディ・ホリーのメガネがどうとか、そういう薀蓄的なことじゃないんですよね。プロダクトとして好きなんです。

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いまは何本ぐらいお持ちなんですか?なんとなくなんですが、長岡さんは大きいフレームのメガネをいつもかけているイメージです。

長岡30本くらいかなぁ? いっぱいありますよ。かけるアイテムはそのときの気分で決めてますね。小さいフレームのときもありますし。「いまメタルの小さいの流行ってるなぁ」と思ったら、そうじゃないやつ選びますね。だいたいいつもそんな感じです(笑)。

三島だから去年、急に「黒いセル(ロイド)のフレームが欲しい」って言ってたんですね。

長岡そう! デカイやつ。

三島さっき「薀蓄的なことじゃない」って言ってましたけど、長岡さんは「このブランドじゃなきゃダメ!」っていうこだわりがいい意味でないんです。すごくフレキシブルにそのときの気分でメガネをかけているから、そこがユニークだなと思いますね。

かけ心地とかにこだわりはあるんですか?

長岡それはあります。

三島基本的には、カチッとフィットするようにしてますよね。

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長岡うん、そこはかなり細かく調整しますね。ライブで演奏中に落ちたりしたらダサいんで(笑)。メガネがずれてくるのを合間で直すのもなんか変だし。外国のフレームはやっぱり下がりやすいので、調整に慎重になったりしますね。

三島いいメガネ屋さんと出会うと、ちゃんとメンテナンスしてくれますよね。使っているときのストレスが減るし、長く使えますよね。だからモノに対する愛着が湧いてくる。

長岡メンテナンスは本当に大事ですね。

三島「これもうダメかなぁ」なんて思ってても、メガネ屋さんに持っていけば意外と対応してくれたりすることもあるんです。基本的にお店に置いてある商品は、未完成品だと思ったほうがラクですよね。

長岡うんうん、そうだね。

三島お店で買ったものを自分に寄せて行くというか、調整することによってより自分にフィットしたものにしていく。その感覚を持つと、メガネがより生活に寄り添うものになってきますよね。

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はじまりから終わりまで一定の美意識のなかで生産活動を行える。

たくさんのメガネをかけてきた中で、〈エナロイド〉はどうですか?

長岡すごくかけやすいです。顔になじむんですよね、〈エナロイド〉は。かけてみて、自分が慣れるまでに時間がかかるメガネってあるじゃないですか。幅が広がるから、そうやってチャレンジすることも大事なんだけど、〈エナロイド〉の場合、かけてすぐ似合うんですよ。その瞬間に顔の一部になるというか。

三島〈エナロイド〉に関して言えば、フレームの線を比較的細くしているんです。目の表情を崩さないようにすることが大事だと思っているので。

目の表情?

三島フレームが主張しすぎると、顔と喧嘩するんですよ。だから違和感が生じるんですけど、そうならないように意識してフレームをデザインしているんです。その人の表情はやっぱり残っていたほうがいいなと思うので。

なるほど。

三島でも、サングラスはまた別ですね。サングラスの場合は、変わることを楽しむのも大事な要素だったりするので。

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長岡さんは三島さんと一緒に実際に工場にも行かれたんですよね。どうでしたか?

長岡キレイな工場でした。整然としていて。新しいのに混ざって古い機械もあったりして、おもしろかったですね。

国内でメガネの生産が盛んなのは福井だと思うんですか、岐阜の中津川も同じなんですか?

三島いえ、中津川でやっているのは恵那眼鏡工業だけですね。いまは3代目が運営しているんですけど、初代の故郷が中津川なんですよ。もともとは大阪がメガネの生産が盛んで、そこで修行を積んでから地元に戻って来たんです。

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三島福井は基本的に分業でメガネを生産しているんですけど、恵那の場合は一社内ですべての工程を請け負っています。そこが特徴なんです。

それによって福井とはちがう何かが生まれるんですか?

三島はじまりから終わりまで一定の美意識のなかで生産活動を行えるので、結果的に良質なメガネが生まれます。もちろん、分業は分業で魅力もあるんですが。

長岡その多様性がおもしろいですよね。

生産工程のなかで印象に残っていることはありますか?

長岡手作業の多さですね。そこにビックリしました。

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三島マシンが動いているようで、それに合わせてしっかりと手も動いているんですよね。

長岡ひとつのメガネをつくるのに、すぐにはできないというか。その技術を習得するのも時間がかかりそうだし。

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三島工場では「品質第一 能率第二」という標語を掲げているんです。

長岡みんな丁寧でしたね。

働いている方々は若い人から熟練の職人さんまでいらっしゃるんですか?

三島半分以上は20代なんですよ。若い人が工場で働くってなかなかないと思うんですけど、工場の環境がいいんです。だから将来性もすごくあって。

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長岡あと、メガネの生地もたくさんあって、そこもすごかったな。アセテートの板なんですけど。膨大な量でしたよね。

三島すごい広い敷地のなかにびっしりと置いてますね。

その生地からメガネをつくっていくわけですね。

三島そうですね。フレームの形にカットして、全行程が終わるまでだいたい20日間くらいかかります。そのうちの7日は磨きに時間を割いていて、そこまでして磨きにこだわる工場もなかなか珍しいんですよ。

冒頭で、「磨きが独特」と仰ってましたよね。

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長岡なんかチップみたいなものと一緒にメガネを機械の中に入れて、グルグル回してましたよね。そうやって磨いてるんですよね。

服をストーンウォッシュするみたいな。

三島そうですね。機械で回すのは6日間くらいやって、最後は手で磨きます。効率を求めるときと、その先の手を加えなければいけないところは、人の手で丁寧に。

長岡ある程度オートメーション化されている工程もあれば、その奥にはむかしから使っていたであろう古い機械があって、なんだかノスタルジックな気分になりました。いい機会を与えてもらったな。

メガネにかける真摯な思い。プロダクトへの愛情。

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長岡さんに伺いたいんですが、〈エナロイド〉の魅力はどんなところにあると思いますか?

長岡三島さんと接しているときにも思うし、工場に行ったときにも思ったんですけど、すごいストイックな感じがするんですよ。工場の会長さん、社長さんもすごく生真面目な方で、真摯なんです。その気持ちがプロダクトに反映されているなぁ、というのが見てわかりますね。そこがいいなって思うんです。

三島さんは、ブランドの今後についてプランなどはあるんですか?

三島ブランドのラインナップとしてレディースのほうが多かったんですが、現在はメンズのラインが人気が出てきていて、頭のなかにはアイデアがたくさんあり、もうちょっと男っぽいアイテムもつくっていこうと思っています。無骨なメガネとか。あとは、国内ベースで販売していたのを、ものづくりの良さも含めてもっと海外に発信していこうと思っていますね。受け入れてもらえる自信もあるので。

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ENALLOID
www.thorough.jp/enalloid/
Instagram:@enalloid

※記事内にある岐阜県中津川の工場見学の様子を記録した冊子が、全国のエナロイド取り扱い店にて3月中旬より配布されています。

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