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FEATURE|東京にいて演劇を観ないひとは損してる。奇才・天久聖一が一目置く、“笑”劇団3選

ノックアウトされるような劇団に出合えるか。

─今回、天久さんから大北さんのお名前が上がってきたときに、ウェブ業界で有名なライターさんが演劇・コントをやっているのが意外でした。お笑いがお好きなのは記事を読んでいて分かるんですが、みんながウェブ上で表現したがるなか、あえてリアルな場にいったのには、なにか理由があるのでしょうか。
大北:ぼくもインターネットで記事を書いていますけども、ウェブの笑いはもっとウケていいはず! という義憤のようなものが常にあり(笑)。ちゃんと面白いことを書いても、それを面白いと思う人は、みんな黙ってるじゃないですか。
─たしかに、ネットではネガティブな反応の方が多くなりがちですよね。
天久:ぼくも、いまのライターはもっと評価されていいなと思うんですよ。ぼくらの時代の、たとえば『バカドリル』とかは、頭の中でのネタなんですね。でも、「デイリーポータル」とか「オモコロ」とか、彼らは実際に行って取材もするし、自分も表に出て顔も出している。

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天久:テレビの世界じゃないところで、それと同じくらいの質と技術のバラエティや企画がしっかりあって、それが毎週出てくるのは、すごいことですよ。作家レベルでいうと、まだネットとテレビはどこか牽制し合っている空気があるので、もっと企画段階から互いにアイデアを出せる場所があった方がいいと思いますね。大北君は映像もやっていたりするし、演劇やコントもその流れのなかで手を出してるんだと思うんですけど、そういう演劇シーンじゃないところからコミットしていくのが面白いなって。それでまた演劇を観ない人も入ってきてくれたら、そこからまたつながっていけるかもしれないしね。彼自身が演劇を外から見てるから。
大北:ぼくは就職もせずに東京に出たんですけど、単純に「なんかやるんやったら、いっぺんシティボーイズみたいな面白いコント書きたい」みたいに思っていたので。
天久:それは言ってたよね。「1回面白いコント公演を打てたらそれでいいと思ってる」って。そしたら割と評判よかったんで。
大北:そのまま、続けてますね。それができたら死ぬって言ってたけど、これだけ反応がいいなら「俺はまだ死なん」って。とは言え、1回目の公演は120人とかで、2回目は全部合わせて300人ちょいとかだから、インターネットのページビュー数で言えば300PVとかじゃないですか。その人らにあの劇団、よかったよって言ってもらうしかない。実態は誰も知らないから、いきなりドカンと増えたりはしないんですよね。
天久:リアルで来てくれてる人は全然違うからね。
─劇団は、やはり役者の力が重要になる、と。
天久:だいたい来てる人は、役者目当てで観に来ますから。「誰々が出る新作だから」って、それこそ演劇通の世界ですからね。そういう意味じゃテニミュ(ミュージカル・テニスの王子様)とか、ああいう路線が実は王道じゃないですか。

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天久:でもいまは小劇場の実力派がアイドルやイケメンの芝居に関わっていたりするし、そこからまた面白いものが生まれるかもしれない。いろいろ混ざっていくのはいいと思いますけどね。大北君もそういうアイドル使ってとか、できると思うんだよね、素人の使い方が上手いから。
大北:友だちをそのまま出してますからね。アンケートにも「まれに見る棒読みだ!」って怒ってる人がいました。
天久:ちょっと懐かしい感じはするよね。東京乾電池が蛭子(能収)さん使ったりとか、そういうのが流行った時期もあったから。破壊力は素人のほうがありますから。あと、露骨に俳優の“表現をみせられてる”っていうのが結構きついなってときがあって。もっと見世物を観に来てるっていうか、人が困ったりだとか嫌そうにやってるのを面白がるみたいな、サディスティックな愉しみも大切ですから。すごく訓練された人たちのアカデミックな芝居が逆に恥ずかしくなるときもある。こっちのコンプレックスを刺激されてるだけかもしれませんが。
大北:生き生きとやってるのはダメなんですか?
天久:目の前で生き生きされるのも嫌だし、生き生きしてないようで実は調子に乗ってるだろみたいのも嫌。なんだろう、俺の性格が悪すぎるのかな。
─『書き出し文学大賞』や『バカはサイレンで泣く』もそうですけど、天久さんと言えば、素人の面白さを引き出す名人というイメージがあります。
天久:あくまでぼくの考え方ですけど、笑いを突き詰めていくと素人の一発にはかなわないんです。その瞬間を見られるような場所や企画みたいなのは、常に考えたいなと思いますね。

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天久:でも、さっきの言い分と矛盾してるんですけど、どうせ行くんだったら、やられたいってのもある。「ああ、なるほど」って分かるくらいだとちょっと物足りない。ノックアウトされるようなやつに合えたら、すごいハマると思う。ぼくらはちょっと中毒患者みたいなところがあるんで、「ナカゴー」とか「フロム・ニューヨーク」くらい特殊なものじゃないと素直に笑えないけど。でも若い子が「マームとジプシー」や「ままごと」とか行くと、みんな「すごい!」「初めて見た!」みたいな反応が多い。それ、すごい大事だなと思って。それでやられたら、またいろいろ興味が出ると思うんで。
─どうやったらそういう面白い劇団に出合えるんでしょう?
天久:とにかく友だちなり誰かの好意的な評判を聞いたら、誘われたところに1回行ってみればいい。衝撃的だと思います。暗くなって、照明がついて、人が立ってて。やっぱり現場に行かないと見られないので。
大北:「マームとジプシー」と「ままごと」は、行ったらみんな好きになりますよね。ぼくも涙いっぱい流して「いいなあ」って感動しましたよ。


天久聖一の推薦劇団その1
「明日のアー」

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10月25日(火)〜10月27日(木)の演目『猫の未来予想図Ⅱ』のチラシ。

「明日のアー」
明日(あす)のアー。主にインターネット上で活動するライター/動画制作者の大北栄人が書いたコントを俳優やライターなどの友人たちが上演するユニット。※アーは思い出しアーのこと。
http://asunoah.tumblr.com/

  • 明日のアーvol.2(第二回公演) 『猫の未来予想図Ⅱ』
  • 期間:2016年10月25日(火)〜10月27日(木)
  • 時間:PM8:00開演(開場は開演の30分前)
  • 場所:VACANT
  • 住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13
  • 料金:前売 2,500円+1drink(500円)、当日 3,000円+1drink(500円)
  • ご予約はこちらから。

明日のアーの胃袋を支える店

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「明日のアーの出演者のトチアキタイヨウさんがクロモンカフェという店の夜営業を一人でしていて、みんなよく行きます。トチアキさんは元山海塾のダンサーで世界中を飛び回っていたので色んな国の料理を知ってるんですよ。高くないヨーロッパ家庭料理とワインでだらだら飲めます。こたつがあったり、クーラーがなかったり、アットホームすぎてほぼ親戚の家みたいなところでターメイヤというそら豆のコロッケを食べたりしています。色々奇妙です。北品川の商店街はもともと東海道品川の宿場町で雰囲気あるし若い人らの新しいお店がたくさんあっておもしろいですよ。演劇関係の人も多いです。松陰神社の次は北品川、みたいな感じじゃないですかね」(大北さん)


天久聖一の推薦劇団その2
「ナカゴー」

「ナカゴーも知り合いづてに見に行ったんですけど、主宰の鎌田くんの存在感。役者としても見たことあるんですけど、なんか破壊力があるんですよね。余計なあざとさが出ないのがすごい。それって奇跡ですよ。いまは敢えてマニアックな活動をしてるけど、もっと表に出てきて欲しいなあ。」(天久)

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本公演『率いて』劇中写真。
2015年8月に東京と名古屋にて上演した、始めて劇団員のみで行った公演。

「ナカゴー」
2006年、劇作家・演出家の鎌田順也らを中心に東京を拠点として旗揚げ。 「なにやってるんだ」的なアイデアと、「どうしてくれるんだ」的な構成で人々を魅了。王子小劇場《佐藤佐吉賞2012》最優秀作品賞を『黛さん、現る!』で受賞。

  • 『パイナップルの食べすぎ』(再演)
  • 期間:12月23日(金)~25日(日)
  • 時間:12:00〜15:00、18:00〜23:00
  • 場所:上野小劇場
  • http://nakagoo.com/

ナカゴーの胃袋を支える店

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「白(まぜそば)を注文できるのが梶原店だけらしいです。ハマってしばらく、世界で一番おいしい食べ物だ。と感動していました。一度、連れて行ったらハマった役者の人たちと通うことがあります。太るけど感動します」(ナカゴー)

  • ラーメン富士丸・明治通り都電梶原店
  • 住所:東京都北区上中里3-18-1
  • 時間:18:00~24:00
  • 定休:月曜日


天久聖一の推薦劇団その3
「フロム・ニューヨーク」

「このユニットも演出のブルー&スカイ君のなかではひとつの手法だと思うんですけど、小洒落た設定の空間に椅子が3つあって男が3人。日常会話からどんどん逸脱していって、全然解析できないようなナンセンスをどんどん積み重ねていく。下品なネタとかも出るんだけど、奇跡的に粋で、なんとなくオシャレなんですよね。それが、むちゃくちゃ通好みな笑いで面白い。ナカゴーもフロム・ニューヨークもまったく媚びてないところがいいんです」(天久)

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前回劇場公演「コーヒーカップを持つ演技」より「短いやつ」

「フロム・ニューヨーク」
フロム・ニューヨーク(ブルー&スカイ・市川訓睦・中村たかし)は、失踪したプロデューサー・スティーブ氏をさがしにニューヨークから東京へやってきて、彼に気づいてもらうためにコント(寸劇)などをやっているグループです、という体裁です。

  • フロム・ニューヨークTOKYO公演2017
    「そろそろセカンドバッグ(仮)」
  • 期間:2017年5月31日(水)〜6月4日(日)
  • 場所:下北沢 OFF・OFFシアター
  • http://fromnewyork.info/

フロム・ニューヨークの胃袋を支える店

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「ニューヨークにはないリーズナブルな飲み屋さんです」(フロム・ニューヨーク)

  • 楽屋
  • 住所:東京都新宿区中落合1-20-16
  • 時間:17:00〜25:00

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