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FEATURE|東京にいて演劇を観ないひとは損してる。奇才・天久聖一が一目置く、“笑”劇団3選

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東京にいて演劇を観ないひとは損してる。奇才・天久聖一が一目置く、“笑”劇団3選。

ここ最近、というよりも数年前から、“演劇”が面白いという話を聞くようになった。そんな話や、メディアの盛り上がりを横目に、どうにも重い腰が上がらない、というか何を観ればいいのか分からないというアナタ! 圧倒的発想力を武器に、マンガ、ミュージック・ビデオ、小説、さらには舞台の作演出など多ジャンルで活躍する天久聖一さんに、いま観るべき劇団を3つ選んでもらった。お願いしたのは、シェイクスピアみたいな真面目じゃなくて、もっとライトで純粋に面白いものを! 今回は、そのなかのひとつ「明日のアー」を主宰する大北栄人さんとの対談も実現。さらに各劇団が活動する地元のオススメスポットも紹介してもらった。初心者から演劇中毒患者まで、これを読めば、いま観るべき劇団が見つかるはず。

  • Photo_Ryo Mitamura(Portrait)
  • Text_Satoru Kanai
  • Edit_Shinri Kobayashi
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好きで観に行ったのではなく、最先端の笑いがある気がした。

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天久聖一(あまひさ まさかず)

マンガ家/演出家/作家/映像作家 1968年香川県生まれ。電気グルーヴ、ゆらゆら帝国などのミュージックビデオ、シティボーイズミックス『動かない蟻』(2011年)、日本悲劇総合協会『不倫探偵~最後の過ち~』(2015年)など舞台の作演出も手がける。主な著書に、『バカドリルシリーズ』(1994年-)、『ブッチュくん全百科』(2011年)、『味写入門』(2010年)、『こどもの発想』(2011年)、小説『少し不思議。』(2013年)。

朝日新聞デジタル「世論島」(http://www.asahi.com/special/yoronto/)や、ほぼ日「天久聖一の味写道」(http://www.1101.com/ajishado/)を連載中。

─今回、3つの劇団をセレクトして頂きましたが、そのなかから対談相手に大北さんを選ばれた理由を教えてください。
天久聖一(以下、天久):ちょうど10月末に公演があるんですよ。大北くんは、もともとデイリーポータルZのライターで、ぼくが『不倫探偵』という松尾さんの芝居に関わっていた時期に見に来てくれて、そのときにコントやりたいって言ってて。じゃあ、やればいいじゃんって言ったんです、アドバイスでも何でもないんですけど。で、しばらくしたら……あ、ちょうど来たね。
(大北さん到着)
天久:いま、ちょうど『不倫探偵』のときに話したってくだりで。旗揚げしたの、いつだっけ? 最近だよね。
大北栄人(以下、大北):2015年の9月ですね。天久さんにも来てもらって、評判よかったんで、同じことを今年2月にやったんです。そのときは京都と大阪も行って、そこから音楽イベントに1回出ましたね。

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大北栄人(おおきたしげと)

ライター/動画制作者。デイリーポータルZなどで数々のヒット記事を執筆する。映像ではしたまちコメディ大賞2016準グランプリ、観客賞をW受賞。

─大北さんは、もともと演劇自体は観られていたんですか?
大北:そこまで好きじゃないですけど、観てはいましたね。また別の文脈でお笑い、面白いやつが好きやったんです。高校、大学生のときが「シティボーイズ」の三木聡さん時代で、もうむちゃくちゃ好きやって。
─芝居というよりは笑いがメイン。
大北:そうですね。演劇も面白いなって思ったのは「大人計画」とか、あとは「チェルフィッチュ」ですかね。
天久:「チェルフィッチュ」は、なにやってたの?
大北:三月の5日間』ってやつです。
天久:小説になったやつね。
大北:小説読んだら面白いし、戯曲を読んでも面白いなと思って。DVDを観ても面白かったんで、そこから演劇に入った感じですね。
─作品によるのでしょうけど、演劇自体に難しいというか、なんとなくとっつきにくいイメージがあります。
天久:ぼくらの世代って、野田秀樹とかの小劇ブームの後なんですよ。ブームの熱が冷めきったタイミングでぼくは田舎から上京してきたんですけど、ちょうどそのカウンターで「シティボーイズ」とか「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」、「東京乾電池」みたいな、もうちょっと冷めた静かな笑い、間で見せていくものとか、変わったものができ始めてて。なので、ぼくも演劇が好きで観に行ったわけじゃなくて、笑いですね、やっぱり。カルチャーへの興味。最先端の笑いがそこにある気がしたんですよ。

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─最先端の笑いというのは、たとえばテレビで観るお笑いとは違う、ライブ性や自主規制のなさというところに感じるのでしょうか。
天久:当時の気持ちからすると、漫才ブームも出来上がって、それに対抗して演劇の笑いみたいなのが出てきた頃。若いから、新しく出てきたほうがエッジは効いてると思っていたんでしょうね。だから、いまの演劇シーンもそうなんじゃないですかね。ただ、笑いっていうよりは、違うところに目がいっているというか。いまはあまり笑いが重要じゃないと思っていて「ままごと」とか「マームとジプシー」を観てたら、もっとダンス寄りで、いわゆる劇というより空間共有するための装置というか。
─それは天久さんご自身というよりも、全体的な風潮としてそう感じられるということですね。
天久:そうですね。ぼくも演劇の外から来てるけど、大北君もコントユニットなんですね。出演者は演劇関係の人もいるけど、ダンサーであったり「デイリーポータル」のライターであったりと、いろんな人が流動的に集まっていて。そこがいいなと思っているんです。その人選は、意識的に集めたの?
大北:そうですね。とりあえず俳優の知り合いがいないっていうのもあるんですけど、「あの人、面白いからそのまま出したらええわ」っていう。

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─役者に演技の指示をしたりはしないんですか。
大北:ある程度細かいことはやってますけど、基本的にはその人自身でしかないですね。
天久:ちゃんと女優さんとかね、実力ある人も要所要所で使ってるんですよ。
大北:五反田団」の宮部純子さんですよね。あのひと、むっちゃ面白いですわ。小劇場界ではすごい有名な人らしくて。
天久:あまり知らなかったんだ(笑)。
大北:絶対に呼んだほうがいいって前の公演に出てくれた女優さんが言うてはって。それでオーディションに来てくれたんで、そのまま……。
─オーディションがあるんですね。ちなみに何人くらい参加されたんですか?
大北:8人くらいですね。
天久:少なく感じるけど、すごい来たほうだとぼくは思いますよ。始めたばっかりだし、劇団でもないし。それは、みんな1回見た人?
大北:そうですね。知り合いも1人だけきましたけど、1回見た人が8割くらい。なんか面白そうだから来てみたって人が2割くらいでしたね。

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天久:どんなオーディションやったの?
大北:なんやったかな。「このケーキを7等分してください」とか、なんかそういう。言ってみようかなと思って言ってみたら、隣にいた俳優のスミさん(っていう人)に、「いや、きみたち、そんなことはしなくていいから」って止められて。
天久:決めてからにしてよ。演出家がふたりいるみたいになって困るじゃん。
大北:そのあと雑談して終わるっていう。一応ホンも読んでもらって、そうするとぼくでも分かるくらいの演技経験の差は出るんで。そっから先は「あ、この人たちやったら大丈夫やな」っていうフィーリングで。ぼくもオーディション初めてだったから、長時間一緒にいて大丈夫と思えそうな人柄で選んだほうがいいよって言われてて、それで選びました。
天久:演劇って感じじゃないからね。


天久聖一の推薦劇団その1
「明日のアー」

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10月25日(火)〜10月27日(木)の演目『猫の未来予想図Ⅱ』のチラシ。

「明日のアー」
明日(あす)のアー。主にインターネット上で活動するライター/動画制作者の大北栄人が書いたコントを俳優やライターなどの友人たちが上演するユニット。※アーは思い出しアーのこと。
http://asunoah.tumblr.com/

  • 明日のアーvol.2(第二回公演) 『猫の未来予想図Ⅱ』
  • 期間:2016年10月25日(火)〜10月27日(木)
  • 時間:PM8:00開演(開場は開演の30分前)
  • 場所:VACANT
  • 住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13
  • 料金:前売 2,500円+1drink(500円)、当日 3,000円+1drink(500円)
  • ご予約はこちらから。

明日のアーの胃袋を支える店

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「明日のアーの出演者のトチアキタイヨウさんがクロモンカフェという店の夜営業を一人でしていて、みんなよく行きます。トチアキさんは元山海塾のダンサーで世界中を飛び回っていたので色んな国の料理を知ってるんですよ。高くないヨーロッパ家庭料理とワインでだらだら飲めます。こたつがあったり、クーラーがなかったり、アットホームすぎてほぼ親戚の家みたいなところでターメイヤというそら豆のコロッケを食べたりしています。色々奇妙です。北品川の商店街はもともと東海道品川の宿場町で雰囲気あるし若い人らの新しいお店がたくさんあっておもしろいですよ。演劇関係の人も多いです。松陰神社の次は北品川、みたいな感じじゃないですかね」(大北さん)


天久聖一の推薦劇団その2
「ナカゴー」

「ナカゴーも知り合いづてに見に行ったんですけど、主宰の鎌田くんの存在感。役者としても見たことあるんですけど、なんか破壊力があるんですよね。余計なあざとさが出ないのがすごい。それって奇跡ですよ。いまは敢えてマニアックな活動をしてるけど、もっと表に出てきて欲しいなあ。」(天久)

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本公演『率いて』劇中写真。
2015年8月に東京と名古屋にて上演した、始めて劇団員のみで行った公演。

「ナカゴー」
2006年、劇作家・演出家の鎌田順也らを中心に東京を拠点として旗揚げ。 「なにやってるんだ」的なアイデアと、「どうしてくれるんだ」的な構成で人々を魅了。王子小劇場《佐藤佐吉賞2012》最優秀作品賞を『黛さん、現る!』で受賞。

  • 『パイナップルの食べすぎ』(再演)
  • 期間:12月23日(金)~25日(日)
  • 時間:12:00〜15:00、18:00〜23:00
  • 場所:上野小劇場
  • http://nakagoo.com/

ナカゴーの胃袋を支える店

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「白(まぜそば)を注文できるのが梶原店だけらしいです。ハマってしばらく、世界で一番おいしい食べ物だ。と感動していました。一度、連れて行ったらハマった役者の人たちと通うことがあります。太るけど感動します」(ナカゴー)

  • ラーメン富士丸・明治通り都電梶原店
  • 住所:東京都北区上中里3-18-1
  • 時間:18:00~24:00
  • 定休:月曜日


天久聖一の推薦劇団その3
「フロム・ニューヨーク」

「このユニットも演出のブルー&スカイ君のなかではひとつの手法だと思うんですけど、小洒落た設定の空間に椅子が3つあって男が3人。日常会話からどんどん逸脱していって、全然解析できないようなナンセンスをどんどん積み重ねていく。下品なネタとかも出るんだけど、奇跡的に粋で、なんとなくオシャレなんですよね。それが、むちゃくちゃ通好みな笑いで面白い。ナカゴーもフロム・ニューヨークもまったく媚びてないところがいいんです」(天久)

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前回劇場公演「コーヒーカップを持つ演技」より「短いやつ」

「フロム・ニューヨーク」
フロム・ニューヨーク(ブルー&スカイ・市川訓睦・中村たかし)は、失踪したプロデューサー・スティーブ氏をさがしにニューヨークから東京へやってきて、彼に気づいてもらうためにコント(寸劇)などをやっているグループです、という体裁です。

  • フロム・ニューヨークTOKYO公演2017
    「そろそろセカンドバッグ(仮)」
  • 期間:2017年5月31日(水)〜6月4日(日)
  • 場所:下北沢 OFF・OFFシアター
  • http://fromnewyork.info/

フロム・ニューヨークの胃袋を支える店

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「ニューヨークにはないリーズナブルな飲み屋さんです」(フロム・ニューヨーク)

  • 楽屋
  • 住所:東京都新宿区中落合1-20-16
  • 時間:17:00〜25:00


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