CLOSE

第四講 阿部孝史

「正規版にはないディテールワークが何よりユニーク」

40’s WWⅡ Coveralls Lee S91-J、Allen、J.C.Penny

阿部僕もひとつめは、たまたまだけどカバーオール。中でも俗に大戦モデルと呼ばれるもの(第二次大戦中、物資不足を理由に当局からのお達しで正規版を簡素化したモデル)を持ってきました。まずは〈リー〉の「91-J」大戦仕様、「S91-J」。これは前身頃のポケットが左右ひとつずつしか付いてなく、しかもポケット内のスレーキには製品版と違うヘリンボーン素材が使われています。

今野ああ、これが例のスレーキですね。この〈アレン〉も大戦モデルなんですか?

阿部そう、アシンメトリーなフロントポケットが気に入って買ったんだけど、よく見たらボタンの数や仕様が明らかに簡素化されていて。まあ、1945年に終戦しているから、少なくとも40sであることは間違いないかと。

栗原確か大戦モデル自体は47年頃まで作られていたと聞いたことがあるような。開戦翌年の42年から終戦後もしばらくの間は政府の統制が続いたみたいで。

藤原〈リーバイス〉に限っては45年12月に解除されているはず。とはいえ統制が解除されて即市場から姿を消すってことはあり得ないので、おそらく46年までは過渡期のイレギュラー品も含めて作られていたんだと思いますね。

栗原なるほどね。

阿部この〈JCペニー〉の「S-10-412」も大戦モデルのひとつで、デッドストックを栗くんから譲っていただいたの。〈リーバイス〉の「S501XX」同様に簡素化を意味するSimplifiedの頭文字「S」がモデル名の頭に付けらていて。

栗原これはサイズ表記すらなく、ボタンも既製品の廉価なものを採用しているのでフラッシャーがなければ〈JCペニー〉社製ってことすらわからないかもしれませんね。

藤原このフラッシャーを留めたホチキスも大戦モデルならではだね。

栗原そうだね。

阿部もちろんGジャンも好きなんだけど、何年か前からカバーオールが気になり始めて。中でも90年代には高過ぎて手が届かなかった大戦モデルをちょっとずつ集めだしたと。ガチャポケ含め、やっぱり正規版にはないディテールワークが何よりユニークだし。ただ100万円クラスのカバーオールとかには一切興味がなく、このくらいの気軽に着られるモデルが個人的には好き。今回ぼくが持ってきた〈リー〉と以前ココで紹介した〈カーハート〉以外にカバーオールの大戦モデルで高いブランドってあるの?

藤原基本はやっぱりその2ブランドですよね。

今野大戦モデルといえば、やっぱりトップスよりボトムスのが高い印象ですよね。

藤原先日ウチ(ベルベルジン)の20周年では〈リー〉のピンストモデル「96-J」の大戦仕様「S96-J」も出したのですが、じつはぼく、以前に生成りの大戦モデルを持っていたんですよね。

阿部でた!またお客さんに口説かれて譲っちゃったんでしょ(笑)

「古くはないけど、ブラウンカラーとロング仕様がお気に入り」

70’s Schott Leather Riders Jacket

阿部2つめは〈ショット〉のライダースを。特に古いものではないと思うけど、ブラウンカラーが気に入ってる。以前からダブルのライダースが全く似合わなくて敬遠し続けてきたけど、何年か前から急に着てみたくなって。たまたま「オキドキ」に行ったらコレが売ってて即買いを。さらにライダース特有のショート丈もまた似合わない要因のひとつだと思っていたけど、このモデルはラッキーなことにロング仕様。

今野〈ショット〉にロングなんてあるんですね。年代はどれくらいなんです?

阿部70年代くらい?

栗原そうですね。

阿部もともとは〈ルイスレザー〉の「サイクロン」なら、まだ似合う可能性があるかもと思って。元々ブラックが似合わないことはわかっていたから、ネイビーを手に入れたんだけど、思ったよりもラクに着られるとわかった途端、今度はブラウンが欲しくなって(笑)

今野確かにこれくらい丈があった方が着やすそうですよね。

阿部ただ、やっぱりエポレットが気になって…。昔からエポレットって苦手なんだよね。今野くんとかどう?

今野うーん、個人的には好きではないですね(笑)

一同(笑)

藤原僕はみんな寄ってたかって「エポレットさえなければ…」みたいなことを仰るので、逆に好きになろうと頑張ってますけど(笑)

栗原優しい(笑)

一同(笑)

阿部不良みたいなバックボーンは一切ないので(笑)、あくまで上品に着てみたいと思っていて。

今野確かに黒ほどハードな感じにならないかも。似合ってますよ。それにやっぱり丈がイイ。

阿部でしょ(笑)

藤原これ僕もブラックで探してみますわ。何だったら阿部さんのそれ、イロつけて買い取りますよ(笑)

阿部そこまで褒められると、逆に手放さないでしょ(笑)

「本来目立たなければ意味がないプリントにあえて白を選んでいる」

70’s Champion Reverse Weave

阿部3つめは〈チャンピオン〉「リバースウィーブ」のグレーに白プリント。

今野これは珍しい。さらに単色タグという。単色タグって赤とか青とか緑とかいろんなパターンがあるけど、何なんでしょうね?

栗原個人的にはサイズが関係しているのかと思ってました。例えばXSなら緑が多い、XLなら黄色が多いとか。ただ気になって調べてみたら赤とか青に限ってはMとLが混在していたりと例外もあり、諸説あるみたいですね。

阿部まあ、単色タグの話はさておき(笑)

一同(笑)

阿部本来目立たなければ意味がないプリントにあえて白を選んでる辺りが、ユニークだし、若干珍しいかなと。

藤原いや、若干ではなく、普通に珍しいですよ、白プリは。

栗原そうですね。ユニフォームっていうよりもファッション的な色合いがかなり強いかと。

阿部そうだね。

藤原僕もヴィンテージスウェットで白のフロッキープリントを見た時に、かなりユニークだったので集めようと気にして見始めたら、全然出てこなかったし。〈チャンピオン〉に限らず、グレーに白プリは結構レアですよ。

阿部最近は90年代以降のリバースウィーブでも結構な値付けしているショップもあるし、やっぱり玉数は減りつつあるんだろうね。特に軍モノ(NAVY、USMA、USAFなど)に関しては異常な価格帯になっちゃったし。

今野確かに物自体もうあまり見かけませんし、出てきても気軽に買える価格じゃないですしね。

「古いこともあり珍しい柄が多いので、見つけたら同じ柄でも買ってる」

Vintage Bandana “DUPLEX”

阿部最後はいつも通りのバンダナで(笑)。今回はDUPLEX(デュプレックス)を。そもそもブランド?なのかな?

今野確か“二重”とか“重複”とかいう意味だったような。

阿部だよね。やっぱり、ブランドじゃないのかな? 年代的には30~40sとかなんだろうけど、「GUARANTEED DUPLEX FAST」とか「GUARANTEED FAST COLOR DUPLEX」みたいな文言が表記されたものが少なからずあって。

今野でも二重って意味のわりには単色プリントのものだってありますし、確かに謎めいてますね。

阿部よく見かけるTUSIDEって表記も、最初はTWO SIDEのことで、両面見えるからそう表記したものなんだろうと思っていたら、後々になってロゴステッカーが出てきてブランド名だと知った経緯があるので、一概にブランド名ではないと言い切れないんだよね。

今野そうなんですね。

阿部数あるブランドなのか仕様を意味する文言なのかわからないものの中でも、特に少ないのが、このDUPLEXかなと。古いこともあり珍しい柄が多いので、見つけたら同じ柄でも買ってるよ。60年代になると完全に消滅しているから、おそらくあっても50年代が最後かな。もしかすると40年代までしかないかもだけど。

栗原ブランド名自体に意味があるから、ワケがわからなくなってしまうんでしょうね。

阿部そうそう。たまに見かけるIRON WEAVEとかも“鉄のように丈夫な織り”って仕様にもとれるし、ブランド名にも当てはめられるし。

今野バンダナについて資料的にまとめるにしても、詳細不明な部分を全てクリアする作業がホントに大変そうですね。

阿部そうなんだよね…。

藤原DUPLEXで一番高いのっていくらくらいなんですか?

阿部正直言い値の世界だと思う。以前DUPLEXのネイビーのデッドストックが大阪の古着屋さんで9万近くで売られていたんだけど、すぐにソールドアウトになってた…。確かに柄も良かったしデッドストックなんて滅多に出ないと思うけど、あれにはビックリしたね。あと高値で思い出したけど、最近クロス柄のパッケージ入りデッドストックが5万円位で売っているのを見たけど、それも即売れしてたよ。珍しいものに関しては、完全に青天井だね。

栗原そのクロスって黒ですか?

阿部いや、普通のネイビー。

藤原相変わらずヤバイ世界ですね(笑)

TAG
#ヴィンテージ
#ヴィンテージ古着
#ベルベルジン
#古着サミット
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Page Top