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monessay ─ パーカーではなくパーカ

monessay ─ パーカーではなくパーカ

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」。ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。第三回は〈ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)〉の「スカイウェイカーフーディ」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第三回 パーカーではなくパーカ

に続いて今回も香港。

80年代の後半から、90年代の頭にかけてどういうわけか香港に行く機会が増えた。取材や撮影もあったが、Kくんというローカルの友人がいていろいろコーディネートしてくれて香港中を隅々まで案内してくれた。まだ中国に返還される前の香港。物価が安く、美味しくて、刺激的な都市だった。

つも困るのはクルマの中でのエアコンと建物内の寒さ。現地の人たちはこれでもかというくらいにエアコンを効かせる。Kくんいわく、それが香港人のもてなしなんだという。香港は年中蒸し暑い。そらそうなるわな。余談だがタイやインドネシアではビールがキンキンに冷えている。それも同じ理由。

かし当時からエアコンの寒さを苦手としている身にとっては困った話である。外に出ると暑いが中に入ると寒い。交感神経というより体調そのものを何度か崩しそうになった。

ャツを脱ぎ着するのも面倒だし、薄手の綿のカーディガンをTシャツの上に着て調整していたが、この海島綿のアイテムっていうのも取り扱いが慎重で、そこらへんに放っておくって感じでもなかった。

こでアウトドアショップを巡りパッカブルの化繊のパーカを手に入れた。掌に入るくらい小さくなるペラペラの素材でできていて、バッグの中にクシャって入れてもシワにも気にもならないし、撥水加工なのでちょっとした雨にも対応する。これは便利とばかりに、香港に限らず海外へ出張するときの必携アイテムとなった。旅好きでもないが、いろいろ仕事で出張に行かされるようになるとこうした旅の友的なリストが洗練されていくもんである。

かし撥水機能というのは時間と共に減退していって最後には使い物にならなくなった。かといって捨てるのもなんだし、ずっとクロゼットの隅に放置しておいた。

の引っ越しの際、処分すべきかどうか迷い、いまでも着られるかと袖を通してみたところちょっと驚いた。猛烈にイケてないのである。袖は太く着丈も中途半端で身幅もでかい。思い返せばもう25年以上も前のモデルである。当然と言えば当然。いくらモノ持ちのいい自分でもさすがにこれは戦力外通知。ザ・ノース・フェイスというブランドロゴもところどころ擦れてはげかかっている。それはそれで味があってよろしいのだが、いかんせんどうしようもない。

あこういうアイテム、探せば各種アウトドアブランドがラインナップしている。あると便利なんでやはり手に入れたほうがいいか。ということで先代へのリスペクトを込め、ここにアップデートされたパーカなんぞを掲載するわけである。

ころでこのパーカ、という呼び方であるが、英字表記でParka。しかし某SPAの仕事しているとき、「パーカー」と表記しろと言われちょっともめたことを思い出す。思えばおれも若かった。結構突っ張った。しかし辞書を見せて、わかったかこの◯ーカとは口が裂けても言えないのであった。

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

ザ・ノース・フェイス原宿店

電話:03-5466-9278
www.goldwin.co.jp/tnf/

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