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monessay ─1995年のシャイボーイ

monessay ─1995年のシャイボーイ

フイナム発行人、フイナム・アンプラグド編集長である蔡 俊行による連載企画「モネッセイ(monessay)」。モノを通したエッセイだから「モネッセイ」、ひねりもなんにもないですが、ウンチクでもないのです。某誌でずいぶん長いこと連載していたコラムが休載し、フイナムにて装いも新たにスタートです。今回は〈G-SHOCK〉の「GW-5000-1JF」。

  • Text_Toshiyuki Sai
  • Photo_Kengo Shimizu
  • Edit_Ryo Komuta
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第七回 1995年のシャイボーイ

Gショックデビューはわりと遅く30過ぎてから。むしろ若いうちから身につけられる時計ではあるものの、どういうわけか縁がなかった。20代はむしろアンティークの時計などに興味を持っていたからかもしれない。

れが非常にベタなきっかけで手に入れることになる。あまりにもベタ過ぎて、恥ずかしいからあまり言いたくないけど、実は映画『スピード』がきっかけ。劇中でキアヌ・リーブスがつけているモデルを、映画を観たあとにたまたま溝の口の某ディスカウントストアで見つけたのだ。まったく同じではないが5600系。なんとなくいいかなと値段も数千円と安かったので買うことにした。このシリーズにはいろいろ種類があってややこしいが、そんなウンチクをまったく無視。

以来、この欄に前書いたロレックスと交互に腕に巻いていた。というかむしろカレンダーとかがあるのでこっちの方を使うほうが多かったか。

年使って放置していたら電池が切れた。とはいえ結構持ったような気がする。以来そのまま放置している。探せばたぶんどこかにあるはずだ。電池交換すれば動くんだろうか。ベルトループは切れて途中、ゴムバンドで留めていた。服装もそうだけど、人から見たらずいぶんみすぼらしい人物に見えたにちがいない。

社のすぐ近くに通っているジムがある。そのみすぼらしさを払拭するために体を鍛えねばと一念発起して、会社の福利厚生で契約した。自分も週に何度かトレーニングに通っている。たまにパーソナルトレーニングをするのだが、担当トレーナーがいまの彼で二代目。初代はムキムキの超筋肉マンで、後に日本を代表する歌姫の専属になりぼくの元から離れていった。

の二代目の彼は埼玉出身の24歳のシャイボーイ。格闘技をずっとやっているらしく素晴らしいハイキックをこなす。

レーニング合間のインターバルは左腕の黄色い時計で測ってくれる。きっかり1分。シャイに微笑みながら「さあ、いきましょう!」とキューを出してくれる。

る日、その時計のことを尋ねたところ、中学に入学するとき彼の叔父さんがプレゼントしてくれたものだという。中・高・大学、そして就職。その間ずっとこれ一本。

デル名はわからないが、丸形でごつくてイカついGショック。ずいぶん煤けて汚れているけど、大切に使っているのは側からみてもわかる。

レーニング中の雑談で、先日某宗教法人の教祖らの刑が執行されたという話になった。するとあれは自分が生まれた年の犯行だという。阪神の震災があり、そして地下鉄サリンテロ。

ういえばぼくが買ったスピードモデルも確かこの年だったことを思い出す。

1995年のGショック。沈黙したままだ。

ょっと電池交換出してみようかな。はたして動くのだろうか。

GW-5000-1JF ¥38,000+TAX

蔡 俊行

フイナム発行人/フイナム・アンプラグド編集長。マガジンハウス・ポパイのフリー編集者を経て、スタイリストらのマネージメントを行う傍ら、編集/制作を行うプロダクション会社を立ち上げる。2006年、株式会社ライノに社名変更。

カシオ計算機株式会社

電話:03-5334-4869
g-shock.jp
INSTAGRAM:@gshock_jp

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