ネイティブ カナディアン ジュエリー&アートという新たなジャンル。
今回は、どんなアイテムをお二人にご紹介いただけるんですか?
重住 まず2人に見て頂きたいのが、「ワールドリーワイズ」のオープンからセレクトしている、ネイティブカナディアンのジュエリー&アート。北米のノースウエストコーストに住むネイティブカナディアンが、身の周りの鳥や動物をモチーフに制作しているジュエリーやアート作品です。ヴィンテージももちろん存在するんですが、今回は現在活動しているアーティストにスポットを当てています。実際に見てもらえれば分かるのですが、アメリカで生まれた無骨なモノとはちょっと違った雰囲気が如実に感じられます。
重住 まず非常に精巧につくられているという点。カットアウトという一部を切り抜く技法が使われていますが、それもネイティブ・アメリカンとは違った、ジュエリーの流れを汲んでいて面白いんじゃないでしょうか。
重住 今回、依頼して作ってもらったリングとバングルでは、ハミングバードやシャチがモチーフになっています。いま、尾崎君が持っているのは14K無垢のバングルですね。このジャンルでは珍しいのですが、ゴールドはひとつ大人のアイテムとして提案しています。
中室 とにかく存在感とインパクトが凄いですね! このバングルを一つ作るのに、どれ位の期間を要するんですか?
重住 全部ハンドメイドなので、彫りの深い作品は一つ仕上げるのに4~5日は掛かりますね。しかも同じ指定をしていても、少しずつ表情が違っていたりして、そこはアーティストの矜持とこだわりの部分でしょうね。
尾崎 確かに同じモチーフの割に、全然表情が違いますね(笑)。
重住 アーティストサイドから「ちょっとデザインを変えてもいい?」と言ってくることもあり、そういった余白の部分こそハンドメイドならではの良さなので、自由にやってもらっています。
中室 それにしてもこちらのシルバーの方は本当に薄いですね。
重住 厚みは約1ミリです。これくらい薄くないと繊細なカットアウトが表現出来ないので。
中室 手彫りだとは思わなかったので、このクオリティには驚きました!
重住 それこそカナダでは、原型を型取りして、鋳造で制作したキャスト物が結構売っていたりしますけど、やっぱり全然モノが違いますね。
尾崎 本当にそうなんですよね。ぼくもバンクーバーで同じようなジュエリーを見かけましたけど、確か3~4万くらいだったかな。あれはキャスト物だったんですね。
重住 しかも「ワールドリーワイズ」ではジュエリーを3人のアーティストに依頼しているので、それぞれ個性の違いもあり、そういう部分でも楽しめると思います。
尾崎 ネイティブカナディアンのジュエリーやアートって、いままで日本ではあまり取り上げられていなかったジャンルですよね。トーテムポールなんかも然り。
重住 ですね。トーテムポールも実は信仰対象ではなく、日本でいうところの家紋のようなモノなので、アートという観点からは同じですね。
尾崎 このシルクスクリーンのアート作品もまさにそういった感じでしょうね。好きだなぁ。
重住 こちらのモチーフはハミングバードやサンダーバード、ワタリガラスなど鳥が多く、部屋のインテリアとしても飾りやすいと思います。
尾崎 ぼくもバンクーバーにはコレを買いに行ったんですよ。他にクマとかシャチとかのバリエーションもあって、現地ではカニが意外に大事にされていたのが興味深かったですね(笑)。
中室 完全に初見ですが、なんだかモダンな印象もあって面白いですね。尾崎は何で知ったの?
尾崎 元々は『ツイン・ピークス(Twin Peaks)』って海外ドラマの劇中に登場するシアトルの「セイリッシュ ロッジ&スパ」というホテルの社長室の壁紙がコレだったんですよね。そこから掘っていって、辿り着いたのがカナダで。そこから実物を手に入れるためにバンクーバーまで飛んで。
中室 その撮影場所になったホテルに泊まったことがあるけど、壁紙は普通だったなぁ。なんか高級リゾートホテルみたいな感じで。もしかしたら室内シーンは別撮りだったのかも。
尾崎 高級なアートギャラリー兼ショップから観光客相手の土産物屋まで、色々な場所で取り扱っていましたがクオリティは本当にピンキリ。現地でもこういった伝統的なアートや文化がとても大事にされていて、実際に作っているのもネイティブカナディアンたちで。モノとしてはヴィンテージなど年代に限らず、名の通ったアーティストの作品が高く評価されていました。
無意識の内に選んでいるのは“ルーツを感じるモノ”。
中室 ところで重住さんは、どういう流れからこのジャンルを取り扱おうと思ったんですか?
重住 「ワールドリーワイズ」でジュエリーを扱うにあたって、“自分がモノを選ぶ基準とは何か?”と改めて考えたときに、いままで無意識の内に“ルーツを感じるモノ”を選んでいると気付いたんですね。尾崎君の話じゃないけど、ちょっと掘り下げて背景を見ていくことで素晴らしいモノが見つかる。そういったアイテムを取り扱いたいと思ったんです。
重住 情報が手に入りやすくなった現代でも「何で日本にはないんだろう?」っていうモノや、探してもなかなか見当たらないモノがまだまだあって、だからこそ我々が「もっと広い視野でモノを見てもいいんじゃない?」と問い掛けつつ、紹介していかなきゃいけないなと思っています。
尾崎 ジュエリーって、どこのブランドなのか、見た人がすぐ分かるモノが人気だったけど、いまはみんなが知らないモノを知っている方が格好良いというように、価値観がまた変わってきているように感じますし、そういう意味でもこのネイティブカナディアンアートのように、 現代の空気感にフィットしているんじゃないですかね。
尾崎さんは着こなし同様、アクサセリーも独自のミックス感がありますが、そこにこだわりはありますか?
尾崎 結構、直感で選んでいますね。「何じゃこりゃ!?」って思われるデザインが好きで、割と装飾的なモノより、スクエア型やシールド型などシンプルな意匠のモノが多いですね。なのでブランドや年代、生産国なんかは全然気にしない。それよりもぼくの場合、プチ金属アレルギーで、シルバーも真鍮やニッケルなどが混ざっているとすぐ痒くなっちゃうので、材質がちゃんとしているモノを選ぶっていうのはありますね。
中室 アクセサリーは普段まったく付けませんね。それこそ「エディフィス」時代に読んだ紳士服の本に書かれていた“腕時計は男に唯一許されたジュエリーだ”という一文に影響を受けて、ここ十数年間は時計のみ。でも、こうやって重住さんの熱い話を聞いているうちにバングルが欲しくなってきちゃいました!
中室 顔的に!? まぁ、そろそろ40歳も手前になってきたし、20~30代とはジュエリーを付けることの意味合いも変わってきますからね。
尾崎 そうだね。ジュエリーをしてもいい年齢になってきたって感じるよね。逆に何も付けてないと子どもっぽく見られたりもして。それこそ腕時計もそうだしね。
重住 ヴィンテージの腕時計も扱っているので、中室くんはそちらをぜひ。
中室 そちらはマジで気になるので、後日ゆっくり見に来させてください(笑)。あとは、前回の記事で尚輝さんが紹介してもらっていたヴィンテージのシグネットリングなんかは、ジュエリーに慣れていないぼくでも挑戦できそう。
重住 特権階級の人たちにしか身に着けることを許されていなかった時代もあり、シグネットリングとも呼ばれています。かなり歴史の古いアイテムということもあり、年代や国によって色んな意匠が見受けられますが、先程も話したように「ワールドリーワイズ」は昨今のジュエリーの流れを汲んで、イギリスでの買い付けを中心としたシンプルなモノをセレクトしています。
尾崎 これなんてサイズも大きいし、指が太い室さんも着けられるんじゃないかな? あれ、これなんてM(ム)R(ロ)になってない?(笑)
中室 う~ん……どの角度からもM・Rとは全然読めないけどね(苦笑)。ちょいちょい脱線しているせいでもあるけど、こうやって実物を試着しながら説明を受けていると、時間が経つのが早いですね!
重住 一個一個がそれぞれ違って、素材もゴールドなら9K~18Kまであるし、裏側には製造年・製造工房・組成までしっかり刻まれているから、こだわって選ぶといくら時間があっても足りないですからね。
中室 ここにあるだけでも、多彩なデザインが並んでいますもんね。
重住 人気なところですと、石ではオニキスとかブラッドストーン。色もカラフルなものよりもネイビーやブラック、グリーンなどが合わせやすくて探している方が多いですね。あとはイニシャル入りの意匠も人気です。
尾崎 ぼくも海外に行った際は、絶対にリングを探すんですけど大きいサイズが多くて…。なので、サイズが合えば運命ってことで即買い! でも、「ワールドリーワイズ」はサイズもイイところが揃っているから危ないんですよ、試着したら全部買うことになっちゃう(笑)
中室 運命的な出会いがゴロゴロしているんだよね。サイズが合ったなら全部買っちゃいなよ!
重住 もちろんサイズ直しも対応しているので、中室くんもお気軽に。
“今まで無かったモノを日本に紹介する”という姿勢。
このナイフもシグネットリングと同じようなモノですか?
重住 そうですね、同じようにイニシャルや紋章が刻まれています。刃があるものはフルーツを切るなどの用途で使われていたようですが、刃がないものはペーパーナイフでしょうね。
尾崎 実用品というより完全に宝飾品ですよね、ぼくもヴィンテージのナイフをいくつか持っていますが、買っても使い途がないので部屋のオブジェになっています。
今日、尾崎さんが着けているリングにも似たようなテイストを感じますね。
尾崎 この〈トムウッド(Tom Wood)〉なんかは、まさにシグネットリングをモダンにしたものですからね。
重住 そうですね。あとは今回用意した〈ガブリエラ・アルティガス(GABRIELA ARTIGAS)〉なんかも、一部はシグネットリングをモチーフにしていますよ。LAを拠点にメキシコ人姉妹が手掛けているブランドで、NYやパリでもショーを開催していたりと、俄かに注目を集めています。
重住 ずっとレディースのジュエリーをつくってきていて、メンズは「ワールドリーワイズ」が、2019春夏シーズンからスタートに先駆けて特別にオーダーしました。リングとバングルをピックアップしていて、すべてハンドメイドというのも特徴です。
尾崎 だからか、歪みもあったりしてちゃんとハンドメイドの味わいが感じられます。付け心地もルックス同様に柔らかく、そこは女性がつくるブランドならではなんでしょうね。
中室 シンプルで使い勝手も良さそう。これはぼくも気になりますね。
お二人は今回「ワールドリーワイズ」を訪れてみて、いかがでしたか?
中室 ぼくたち、ベイクルーズOBとしては“今まで無かったモノを日本に紹介する”というのが原点にあるので、今日の取材を通して重住さんがなぜこのショップを始めたのかという疑問に対して、すごく納得のいく答えがもらえました。ジュエリーに対して凝り固まった先入観をほぐしてくれるキッカケにもなると思うので、もっとたくさんの人たちにこのショップを見てもらい、そのセレクトに触れてもらいたいですね。
尾崎 アクセサリーって自分自身のアイデンティティを主張するモノという一面が強いじゃないですか? 一点物のヴィンテージからアーティスト物まで、ココにしかないモノ、自分にしか合わないモノに出会える。そんなショップがあるということが楽しいし嬉しいですね。ジュエリーをすることによって、自分自身にも深みが出てくると思いますので、まだの人は一度試してはどうでしょうか?
FIRST NATIONS JEWERLY & ART FAIR
期間:10月20日(土)〜31日(水)
内容:氷河の大地が広がる太古の昔、新天地を目指し北米アラスカより南下し、太平洋北西沿岸部(NORTH WEST COAST)の大地を切り開き、独自の芸術や文化を生み出したカナディアンインディアン。そんな彼らの卓越した技術を継承した現代アーティストの作品を一同に集めたイベントが開催されます。
WORLDLY-WISE
住所:東京都港区南青山5-12-4
電話:03-5778-9113
instagram:@worldlywise_jp