第三講 栗原道彦
ジャックパーセルだけでも相当数を所有していますが、未だに欲しいモデルが尽きません。
栗原さんにとってコンバースとは?
栗原手元にあるスニーカーの中でもずば抜けた数がありますし、スニーカーであれば最も好きなブランドのひとつと言えますね。初めて手に入れたのは16歳の頃、確か「ジャックパーセル レザー」だったと記憶しています。当時も主流は「オールスター」でしたが、古着好きならではの思考で他人とはカブらないように「ジャックパーセル」をぼくは選びました。未だに持っていない珍しいモデルがあれば欲しいですし、気になるモデルがいくつかあります。生産国がアメリカ以外に移った2000年代以降なら、ベーシックなモデルよりは、〈ジャックパーセル ゴアテックス®〉みたいに単なる復刻ではないアップデートされたモデルの方が個人的には気になりますね。
Kurihara’s Pick up_01
栗原自分の1足目は「ジャックパーセル ミュール」です。’90年代後半にイギリス企画でリリースされた、じつはレディースモデルです。
阿部レディースなんだ? それにイギリス企画ってことは日本では並行輸入でして展開されたなかったってこと?
栗原ですね。表記は10なんですが、26cm前後ぐらいのサイズ感で、6~7年前に「ベルベルジン」で中古を手に入れました。まあ、もともと「ジャックパーセル」が好きだったのはもちろんなんですが、今回は’90年代後半~2000年代初頭頃の時代感を象徴するようなモデルばかりを選んできたつもりでして。この「ジャックパーセル ミュール」がリリースされた当時は、〈アディダス〉の「SL 72 クロッグ」などに代表されるスニーカーのかたちのまま踵をなくしたクロッグモデルが流行った時期でもあって。
今野ああ、あったねえ。
栗原当時は正直ダサいと思っていたのに、ここ数年の間にとても新鮮に思えてきて。今になって買い直している感じですね。
今野この黒×赤の配色も当時っぽいよね。
阿部そもそも何でクリくんは「ジャックパーセル」がそんなに好きなの?
栗原もともとは他人とカブらない、アンチメジャー的視点から入ったんですが、いまとなっては「オールスター」より「ジャックパーセル」の方がデザイン的にも好きですね。古くは’40sからデッドストックだけでも5~60足は持っています。
今野’40sなんてあるの?
栗原はい。まだインソールにパテント表記がプリントされていて、ソールの形状も以降とは異なる独自のパターンです。
阿部この辺のモデルもタイで高騰してるの?
藤原いや、レザーってだけでダメなんですよ、タイは。キャンバスじゃないと。
阿部へええ、そうなんだ。Tシャツでも綿100%ではなく、あえてレーヨン混紡がイイんでしょ?
藤原そうですね。でも、よりクラシックの人気が高いので、正直なところ「ジャックパーセル ミュール」自体に興味を示さないと思いますね。
今野例えばキャンバスでも’80年代後半頃にデビューした「ジャックパーセル スリッポン」みたいなものもダメってこと?
栗原あれも不人気ではないと思いますが、やっぱりオリジナルというかヘリテージモデルが強いのは間違いないかと。
阿部地域によって全然需要が違うんだね。
Kurihara’s Pick up_02
栗原続く2足目は2000年にリリースされた「オールスター 2000」のレザーモデル。シュータンのタグやインソールやハトメにも2000年を記念するネームが入ったアメリカ製最後期のアニバーサリーモデルですね。
阿部アニバーサリーモデルなだけあって付属やパーツが凝ってるね。2000年でもまだアメリカ製なんだね。
今野これはタイムリーで買ったの?
栗原いや、2003~4年くらいだったかと。確かタイムリーでは日本展開されなかったので存在すら知らなかったのかもしれません。
藤原レザーだけじゃなく、キャンバスも同じモデル名でリリースされてるはずですよ。ステッチが通常モデルと異なるカラーステッチで。
栗原そういえばあったね。同時期に〈ジョン リッチモンド〉(英国発のDCブランド)の別注モデルがリリースされたんですが、それもまさにこの黒レザーに赤ラインを踏襲していて。まあ、いまから考えると自由な時代だったなと。当時のトレンドやアイコンとなったアイテムにインスピレーションを受けて、各ブランドが寄せたモデルをまだリリースできた時代というか。ある意味では、進化の形態としてその方向性しかなかったのかもしれませんが。
今野確かに。例えば別注モデルは別注モデルとしてリリースされるけど、後にそのモデルに寄せたインラインモデルが普通に発表されたりしてたよね、当時は。
栗原ですね。まあ、この「オールスター 2000」なんて、そういう2000年ぐらいの時代感をまさに象徴するモデルなのかなと。
Kurihara’s Pick up_03
栗原3足目は’90年代後半にリリースされた「ワンスター」です。当時、〈アディダス〉「キャンパス」や〈ニューバランス〉「M576」を、イギリスの「JDスポーツ」というチェーン店が蛍光カラーを使って別注したんですが、この「ワンスター」はまさにそんな流れをサンプリングしたものかと。
阿部これ企画はアメリカ? イギリス?
栗原インソールに「Assembled」という表記があるので、おそらくアメリカなのかなと。この「Assembled in USA」という表記は、海外から部材を取り寄せて最終工程をアメリカで行ったという意味なんですが、当時これを日本などで展開するのであれば「Made in USA」表記のままで良かったはずなんです。でも、「Assembled」表記になっているってことは、アメリカの法律的なしがらみが関係しているんじゃないかと。
阿部なるほどね。
今野しかしこの配色、やっぱりJDスポーツ別注だね(笑)。
栗原そうですね(笑)。アメリカのヘリテージとヨーロッパで当時流行したデザインが融合しているというか。
藤原これは当時買ったもの?
栗原7~8年前に「オキドキ」(奥渋谷のヴィンテージショップ)で出て、2足買わせてもらったうちの1足はすでに履いてて、これはストック用にとってあるやつ。
阿部これも高騰してるの?
栗原アメリカ製の〈ワンスター〉自体がここ数年で一気に高騰していますね。以前は9800円~19800円だったモデルが、3~40000円とか付き始めていますし。でも、こと〈ワンスター〉に関してはタイよりも日本国内での人気を受けてって感じだと思います。
阿部でも「Assembled」でしょ? ちょっと前までは「Assembled」は「Made in USA」よりも格下に見られてたじゃない?
栗原最近はもう関係ないんじゃないですかね。「Assembled」もアメリカ製と同等の評価を受けていると思います。
阿部やっぱり〈ワンスター〉も結構持ってるの?
栗原以前は「ジャックスター」、「ワンスター」ともに60~70年代のヴィンテージも結構持っていたんですが、アッパーの退色やサイドテープへの移染が気になったり、価格的にもなかなか思い切って履けないモデルでもあったので、オリジナルは全て手放しちゃってますね。逆にこのあたりの’90年代のモデルはまだ何足か持っていていまも履いています。