第四講 藤原裕
90年代にリリースされた珍種のコンバースがおもしろい。
藤原さんにとってコンバースとは?
藤原古着にハマっていった時期とちょうど同じ16歳が生涯初〈コンバース〉でした。父親の私物を漁ってサイドステッチが入った’70年代後半から’80年代初頭頃の「オールスター」を見つけ、サイズが若干小さかったので履くまでには至りませんでしたが、その「オールスター」でヴィンテージならではのディテールを知り、地元でも何足か手に入れて。上京してから高円寺の古着屋で「チャックテイラー」がビッグサイズのみ4800円でワゴンセールに出されていて、オレンジとカラシと赤のUS11を買ったのが、確か18歳の頃。何にでも合わせやすいベーシックさ、シンプルさみたいなものがコンバース、特に初期「オールスター」や「チャックテイラー」の最たる魅力だと僕は考えています。ぼくにとっては永久定番のひとつと言えますね。
Fujihara’s Pick up_01
藤原ぼくの1足目は「ワンスター」繋がりということで、まずは’90年代後半にリリースされた「ワンスター サンダル」です。当時は全く話題に上がらず、2000年代初頭頃には箱付きデッドストックで4800円とかで出されていたモデルなんですが、最近はめっきり出てこなくなって。
今野ぼくも当時、アメリカで1足9.99ドルとかで仕入れてお店に出してみたんですが、全く売れなかった記憶がありますね(笑)。
藤原特にアメリカ製とかではなないので、僕も当時は完全に見切ってたんですけど、15年ぐらい前に4~5000円でこれを買って履いてみたら、なかなかハマってしまい、後から探し始めたら自分のサイズが全く出てこないという(笑)。
栗原そう、小さいのばっかり出てくるよね。でも、ぼくも正直なところ当時はダサいと思ってた(笑)。
藤原ちょうどその頃、代々木のフリマへ行くとみんな「アディダス」〈アディクロッグ〉や「リーボック」〈ビートニック〉といったサンダルモデルを履いていて、「ならば、ぼくは『ワンスター サンダル』でしょ」と、あえて履き始めた感じだったかな。
阿部いま、いくらぐらい付いてるの?
藤原この状態で2万9800円、デッドストックなら5万円くらいは付いてるんじゃないですかね?
阿部えーっ、そんなに高騰してるんだ。他にもバリエーションってあるの?
藤原ぼくは黒を探して買いましたけど、カラシ、ネイビー、グリーン、赤など結構なカラーバリエーションがあって。その他にツートーン配色のモデルもありましたね。当時このツートーンが苦手だったんですが、いま見ると新鮮なんですよね。個人的にはいずれは復刻してほしいモデルのひとつですね。
今野以前、コンバースジャパンの方に裕くんが「ワンスターサンダル」をずっと探していることを伝えたら、「じゃあ、2018SSのコレクションは藤原さんに喜んでいただけると思います!」と言っていたので、いよいよ復刻されるのかって思ったら、残念ながら星がなかったというオチで…(笑)。
藤原(笑)。次こそは星!期待してます!
一同(笑)。
Fujihara’s Pick up_02
藤原引き続き2足目も「ワンスター」ということで、’90年代半ばにリリースされた「ワンスター ローファー」を選んでみました。いわゆる“珍バース”の部類に入る珍品ですね。
阿部このモデルのネイビーが〈コンバース アディクト〉から11月10日に復刻されるけど、何かすごいことになってるらしいね。大阪のとあるショップでは、1日に100件以上の問い合わせがあったとか。
今野実現には至らなかったのですが、ぼくも以前このモデルを復刻したいと〈コンバース〉に企画を持ち込んだことがあるので、今回の復刻は嬉いしですね。ウチ(V.E.L)でも〈コンバース アディクト〉は取り扱ってるんですが、今回の「ワンスター ローファー」はこれまでのどのモデルとも比較にならないくらい問い合わせが多いですよ。
阿部今野くん的にもそんなに思い入れがあるモデルなんだ?
今野そうですね。ただ、このモデル知ったきっかけはクリくんでしたけど。
栗原「ロストヒルズ」がまだ津田沼にあった頃、まあまあの足数をデッドストックで買い付けて、確か7800円とかで出したんですね。で、ぼくも何足か買って履いていて。
今野最初はブラウン、次に黒を買ったんですが、ブラウンはすぐに手放してしまって。でも、手放してからこのモデルに替えが効かないことを改めて知り、また探し始めたんですね。唯一無二のキャラクターというか。
栗原発売当初は東急文化会館のフリマで新品3000円とかでたたき売りされていて、それでも誰も見向きもしなかった記憶がありますね。
藤原ぼくは雑誌のスナップで「ジョンズクロージング」(渋谷のセレクトショップ)の女性スタッフさんが履いていたのを見て、それがきっかけで探し始めた。とにかく脚がキレイな女性で(笑)。
一同 (笑)。
藤原その後「アス」(原宿と三軒茶屋に位置するセレクト&ヴィンテージショップ)で出すと聞きつけて、確か9800円で買いましたね。
阿部このモデルがブレイクしたきっかけって何か具体的にあったの?
今野ぼくは完全にクリちゃんだと思いますよ。彼が津田沼から原宿に来て、毎日ようにこのモデル含む“珍バース”ばかり履いていたから、みんな気になったんじゃないかと。それが裕くんにも伝染して。
阿部伝染って(笑)。
今野で、“珍バース”系が一気に高騰しちゃったから、今さら買い直したいと思っても買える価格じゃなくなっちゃったんですよ。
阿部ちなみにいま、デッドストックで出てきたらいくらぐらいするの?
藤原黒だったら20万円は平気でしますね。
阿部すごいね(笑)。そりゃ問い合わせも止まないワケだわ。
Fujihara’s Pick up_03
藤原3足目は〈チャック トグル〉。’90年代後半、イギリス企画でリリースされたモデルです。これも当初は日本でもそんなに人気がなかったんですが、何年かしてみんなが探し始めたモデルのひとつで。ぼくが探し始めた頃には、すでに大きいサイズがなかなか出てこなかったと記憶しています。
阿部これも日本では展開されなかったの?
栗原されてないですね。並行輸入のみで。
藤原僕は黒、赤と揃えて、その後に栗くんがオリーブを履いていて、そんなカラーリングもあるのかって。
栗原『古着サミット Vol.1』で一度紹介したから、今回持ってこようか迷ったんだけど一応持ってきたよ。
今野「チャックトグル」がテーブルの上に3色揃ってるって、何気に凄いね(笑)
阿部このモデルも一気に高騰したよね?
藤原そうですね。状態が良ければ7~8万円くらい、デッドストックなら10万円オーバーでしょうね。
今野でも、一度として復刻されてないんだよね? 個人的には「ワンスター ローファー」と同じく唯一無二のデザインで好きなモデルなんだけど。
藤原そうなんですよ。
阿部個人的にはスムースレザーよりもスウェードとかのが合わせやすいかな。クリくんも昔から「チャックトグル」をよく履いてたけど、どこが気に入ってたの?
栗原ぼくが「チャック トグル」を知ったきっかけって、当時の「ビームス」のスタッフさんだったんですね。彼らがヨーロッパで見つけてきたらしく、それを履いているのを見てぼくも真似してその後アメリカで購入しました。前回の『古着サミット1』の時も話したんですけど、ぼくら世代の服好きから見たら懐かしいし、20代の子たちが見たら新鮮なデザインですよね、この辺りの“珍バース”は。
今野確かにそうだね。先の「ワンスター ローファー」も復刻されたワケだし、“珍バース”への追い風というか、再評価が進んでますよね。
阿部かつては見向きもされなかったモデルって、裏を返せば先を行き過ぎていたってことにもなるしね。
藤原個人的にも「ワンスターサンダル」同様、「チャック トグル」は長年復刻を熱望しているモデルです。コンバースさん、次はこいつを是非(笑)
今野それならいっそ「古着サミット」のメンバーで復刻させたいね(笑)
栗原それができたら最高ですね。サンプルもここに3足揃ってるし! 裕の「チャックトグル」なら解体してもらって構わないんで(笑)
藤原ちょっと!それは困る!
一同(笑)