今野智弘(写真左)
〈ネクサスセブン(NEXUSVII.)〉デザイナー。1977年生まれ。2001年 N.Yより〈ネクサスセブン〉を始動。千駄ヶ谷に構えるヘッドショップ「V.E.L.」ではオリジナルアイテムに加え、定期的にヴィンテージイベントを開催する。自身が所有ヴィンテージアーカイブは業界随一を誇る。
阿部孝史(写真中左)
ビームス オンラインショップ スタッフ。1976年生まれ。長年にわたり編集・ライターとしてメンズファッション誌に携わり、多くの古着関連の記事を扱ってきた有識者。現在は自社サイトでライティングなどを担当。ヴィンテージバンダナのコレクターとしても名を馳せる。
栗原道彦(写真中右)
ヴィンテージバイヤー。1977年生まれ。名店「ロストヒルズ」で活躍後、2011年よりフリーのヴィンテージバイヤーとして活動を開始。古着屋のみならず、セレクトショップなどからも絶大な信頼を集める。来る11月15日には、ヴィンテージファン待望のショップ「ミスタークリーン」を横浜にオープン。
藤原裕(写真右)
「ベルベルジン(Ber Ber Jin®)」ディレクター。1977年生まれ。業界内でも屈指のヴィンテージマスターとしても知られ、特にデニムに関してはパンツ、ジャケットともに圧巻のコレクションを誇る。その卓越したヴィンテージの知識を生かし、ブランドとのコラボレーションや企画にも携わる。
多くのバリエーションが存在するオールスターの中から、色や素材が面白いモデルをピックアップしてきました。
今野小学5年生の頃、生成りの「オールスター」でバスケをした記憶がありますが、意識して履くようになったのは高校時代に留学した際、黒の「オールスター」を持って履き潰して帰国しました。「ガレージセール」(津田沼のヴィンテージショップ)に通うようになり、当時の先輩たちが「チャックテイラー」など〈コンバース〉のヴィンテージスニーカーを履いていて、その影響も大きかったと思います。ブランドを立ち上げてから一番最初にコラボレーションさせていただいたスニーカーブランドも〈コンバース〉でした。ここ数年はヴィンテージよりも現行モデル、中でも〈コンバース アディクト〉を履く機会の方が多くなってきたかもしれません。
Konno’s Pick up_01
’77 ARMY CONVERSE GYMNASIUM SHOES
今野ではさっそく自分から。1足目は俗に“アーミー コンバース”の愛称でも有名なUSアーミーの「ジムナシウム シューズ」。確か’77年から支給が始まり、’80年代まで継続的に採用されていた、いわゆるミリタリートレーナーですね。津田沼にまだ「ロストヒルズ」があった頃に手に入れたもので、そこで初めて軍用トレーナーを〈コンバース〉がつくっていたことを知りました。
阿部これって〈コンバース〉以外のブランドもあるじゃない? その違いって具体的に何かあるの?
栗原〈コンバース〉、〈PFインダストリーズ〉、〈マイナー インダストリーズ〉と全3社が製造していて、最もわかりやすいのはここのパターン(つま先のトゥバンパーを指差しながら)、それからアウトソールのパターンですかね。それに〈マイナー インダストリーズ〉製に関してはコットンの平紐じゃなく混紡の丸紐を使っていて。
今野この既成品とは異なるミニマルなデザインが他では替えが利かず、年に何回かは引っ張り出してくる感じです。最近はなかなか〈コンバース〉製、さらに良いサイズが出づらくなってきてるよね。
藤原そうですね。〈コンバース〉製自体、ここ数年は見かけなくなりましたし。
今野確かUS9.5でやや大きめですが良い具合だったと思います。
栗原前から不思議に思っているんですが、US5.5、6.5、7.5、9.5が〈コンバース〉に集中していて、しかもほぼナロウワイズなんですよね。レギュラーワイズは滅多に見ることがない。
藤原1回だけ中古でUS10.5を見たことあるけど、確かに大きめのサイズはあまり出てこないかも。
栗原そう。一方で他の2ブランドはかなり大きめのサイズはあっても、レギュラーワイズしかほぼ出てこないので、もしかするとサイズやワイズによって発注先を分けていたのかもしれませんね。
今野そういえば阿部くん、前にかなり珍しいカラーリングの〈アーミーコンバース〉持っていませんでしたっけ?
栗原おそらくそうですね。日焼けしちゃった個体が多いので各ショップが後染めしてるのを一時期結構見かけたので。
今野そうそう、いくら洗ってもあの日焼け跡は落ちないんだよね。
阿部こうやって久しぶりに見ると、やっぱりまた欲しくなるね。〈PFフライヤー〉と〈コンバース〉だったら、同年代でも〈コンバース〉のが高いものなの?
今野確か20数年前に「ロストヒルズ」で大量に出していた時は9800円くらいだったかと。
栗原ですね。その数年後に「ナンバー44」(かつて原宿にあったセレクトショップ)がおそらくヨーロッパで買い付けてきて、まだあるところにはあるんだなって。いまだったらメンズサイズのデッドストックで4万円くらいですかね。
Konno’s Pick up_02
今野次は「オールスター ヘンプ」です。このモデルの魅力は何と言ってもシューレースですね。おそらくこのモデルのためだけに作られたものなんじゃないかと。’90年代末に当時の現行品をタイムリーで手に入れたのですが、確か数種類カラーバリエがありましたよね。
栗原この生成りの他に、モスグリーンとブラックがあったような。シュータンの裏にバーコードがプリントされているので、USメイド最終期のものですね。
阿部そうなんだ。’90年代末にバーコード表記が入るの?
栗原’90何年からバーコード表記が加えられたのかは分からないんですが、USメイド最終期を見分ける一番わかりやすいディテールではありますね。
阿部なんでも知ってるよね、ホント。もうアドバイザーの域でしょ(笑)。アメリカ製はいつまで生産されたの?
藤原確か2002年ぐらいから生産国がアメリカ以外の地域に移されたような。
栗原そうだね。2000年に「オールスター 2000」ってモデルがUSメイドで展開されたので、少なくともそれ以降でしょうね。
今野このモデルがリリースされた当時、原宿にあった「ダウン オン ザ コーナー」はじめ、〈マナスタッシュ〉みたいな海外ブランドもヘンプを押していた時期で。
今野エコブームみたいな流れだったのかな。〈コンバース〉以外にも〈アディダス〉とか他のスニーカーブランドからもヘンプモデルが結構リリースされましたよね。まあ、これは余談ですが、この頃の「オールスター」ってシュータンに「ALL STAR」ってタグが縫われているんですが、個人的にはあれがすごい苦手で(笑)、全部取って履いてましたね。
栗原確かにヴィンテージから入った人間からするといらないディテールなのかもしれませんね。
藤原デッドストックなら1万9800円って感じですかね。とはいえ、まあ出てこないと思いますけど。
Konno’s Pick up_03
90’s ALL STAR OX MULTI COLOR
今野3足目はちょっと前に「ベルベルジン」で購入したマルチパネルの〈オールスター〉。’90年代後半頃のものですね。
阿部この3トーンタイプってクリスマスカラーみたいなのもたまに見かけるけど、元ネタがあるのかな?
藤原オリジナルは’80年代にリリースされていて、復刻と考えて差し支えないかと。
藤原そうですね(『BOON EXTRA 永久定番コンバース』をチェックしながら)。緑×赤×紫とか、他にも何パターンかありますね。
阿部でも、インソールのブランド表記とか同年代の単色「オールスター」とは若干違うじゃない?
栗原もしかすると、この3トーンは違うラインというか、通常のインラインとはまた別のコレクションだった可能性もありますね。
今野今年の夏にじつは下ろすつもりだったんですが、タイミングを逃しちゃって。
栗原確かにデッドストックはもうなかなか下ろせないですよね。よっぽどの巡り合わせがない限り、もう手に入れられる機会もないワケですし。
阿部クリくんももうデッドストックは下ろさないつもり?
栗原そうですね。’90年代にデッドストックで手に入れたものでも、結局そのまま履いていないものは結構ありますね。
阿部そうなんだ。でも、〈コンバース〉がここまで高騰するとは考えてもみなかったな。この間、そんなに古くない’70年代頃の「オールスター トレーナー」(トゥキャップがネイビーにペイントされ、1キロのオモリが内蔵されたトレーニングモデル)のデッドストックがeBayに出てて、最終的に1300ドルとかで終わってたから(笑)。すごくない?
栗原おそらくタイ人ですね。「オールスター トレーナー」もタイではずば抜けて人気があるので。
今野前に持ってたけど、重た過ぎてスネが痛くなって(笑)。自然と履かなくなって手放しましたね。
藤原(笑)。僕も持ってますが、あれ履いて1日店に立つと閉店前にはすでに筋肉痛になってましたよ(笑)。