Profile
丸山 晃 (スタイリスト)
1977年生まれ、長野県出身。スタイリスト馬場圭介氏に指事したのち、2002年に独立。多数の雑誌や、ファッションショー、ミュージシャン、広告のスタイリングを手がける。
陽気な音楽よりもどこか憂いのあるUKパンク。
丸山さんご自身は普段アイウェアをかけることはありますか?
丸山サングラスをよくかけます。太陽の光が年々強くなっている気がして(笑)。それこそ〈オリバー・ゴールドスミス〉のアイテムもひとつ持っているんです。
丸山ちょっと丸っこいというか、ボストンのような形は好きですね。ジョン・レノンがかけているような真ん丸なやつをかけてみたいと思いつつ、実際は似合わないので、丸すぎないのがベストです。
今日かけていただいた〈オリバー・ゴールドスミス〉のアイテムも丸みのあるフレームが特徴的です。
丸山これ、すごいかっこいいですよね。ヴィンテージのような雰囲気が魅力的だなと。形がきれいだし、フレームに彫刻のような細かなデザインが入っているところも魅力的です。あと青いレンズも渋くていい。
丸山さんのスタイリングを見ていると、英国のカルチャーやスタイルが香ってくるのですが、ご自身でそれは意識していますか?
丸山よくそう言われるんですけど、「自分はイギリスを標榜している」なんて一言もいったことないんですよ(笑)。だから意識しているかと言われると、そうでもないです。たぶん自分の好きなものが無意識のうちに出ちゃってるんでしょうね。例えばパンツの丈にしても、ワンブレイクしているよりは、ソックスがちょっと見えるくらいのレングスが好きですし。そういうスタイリングを見て「丸山くん、モッズとか好きなんでしょ?」とか言われたりしますね(笑)。それを意識したわけじゃないけど、勝手にそうなっちゃってるんです。
やはり英国のカルチャーに影響を受けているんですね。
丸山高校生のときに友達が(セックス・)ピストルズのライブ盤のCDをくれたことがあって。それで中のブックレットを見たら、ジョン・ライドンのスタイルがやたらかっこよかったんですよ。「この人はなんなんだ!」って衝撃が走りましたね。
音よりもまずはスタイルとしてのパンクに惹かれたと。
丸山そうですね。それがきっかけでパンクミュージックも聴くようになって、ファッションと平行しながらどんどんカルチャーを追いかけていくようになりました。
丸山とにかくもうジョン・ライドンがかっこよくて。それに尽きます。それで18歳になって上京して、ライブハウスに行ったりしながら本気でカルチャーを体現している人たちの姿を見て、パンクを肌で感じるようになってからさらにどっぷりハマっていきました。
丸山アメリカの音楽も聴きますよ。ニルヴァーナが大好きですし。ただ、やっぱりイギリスとかスコットランド、アイリッシュのバンドのほうが自分は入り込むことができるんです。ヨーロッパは景色がグレイッシュだからコードがマイナー調になって、そこに反体制的な歌詞とグッドメロディーが乗っかるともうたまらないです。
丸山そうそう。太陽が燦々と降り注いだようなイメージの陽気な音楽ももちろんいいんですけど、ダークなムードがあるUKの音楽が好きですね。
伝統を通過して生まれる温かみのあるデザイン。
丸山さんが英国のファッションに抱くイメージはどんなものですか?
丸山すごくトラディショナルな国だと思います。ファッションに関しては、ぼくはイギリスのそんなところが好きです。例えばジョン・ライドンなんかは服に穴が空いてたりとかしてパンクなんだけど、チェックのセットアップを着ていたりしてよく見るとすごくトラッドなんですよ。着こなしのルールやマナーを知った上で遊んでいる気がして、それがかっこいいなと。
日本の“守破離”の精神に似ているかもしれないですね。丸山さんご自身もそういったファッションの基本を意識することはありますか?
丸山それはありますね。いろんなアクセサリーとか小物類をつけているんだけど、シャツにタイを結んでキリッとしていたりとか、ビシっとスーツを決めてるけどソックスでは外したりとか。あと、イギリスのアイテムってデザインが理にかなってますよね。例えばロンドンでは小雨がよく降るから、オイルドジャケットのようなアイテムが重宝されるし、みんなスニーカーじゃなくてマーチンのブーツを履いてますよね。イギリス人は自国のモノを愛しているような気がします。
〈オリバー・ゴールドスミス〉に関しては、どんな印象をお持ちですか?
丸山〈オリバー・ゴールドスミス〉はデザインが際立っているにも関わらず、人の顔にすごくなじむというか、スタイリングにはまりやすいのでよく使わせてもらってます。一度女優さんの衣装として持っていったことがあるんですけど、その人の印象を変えつつも、決して違和感を生まないんです。
ファッションにおいて違和感を生まないというのはとても大事なことのように思います。
丸山アイウェアに関してはそうかもしれませんね。だから〈オリバー・ゴールドスミス〉はすごくいい。しっかりと主張があるのに自然にかけられるので。
そうしたフィットする感覚というのは、英国特有のデザイン性に関与しているのでしょうか。
丸山そうだと思います。イギリスのデザインはミニマルで、なおかつソリッドな雰囲気があります。ドイツもミニマルな印象があるけど、どこか冷たい感じがする。それと比べるとイギリスは温かみがあるミニマルさというか、有機的なんです。
先ほどお話されていたように伝統を大切にしているからこそ、新しいモノが生まれるときもスッと馴染みやすいものが誕生しているのかもしれません。
丸山そうかもしれないです。あと、機能的なものはもちろんですが、それだけじゃなくて、しっかりとファッションアイテムとしてデザインされているように思います。イギリスはそういうところがいいですよね。