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FEATURE|尾花大輔と今野智弘、それぞれのアルファ インダストリーズ。

尾花大輔と今野智弘、それぞれのアルファ インダストリーズ。

GEAK TALKS.

尾花大輔と今野智弘、それぞれのアルファ インダストリーズ。

「確か、コントラクトは◯◯◯」、「このステッチだと何年代」。尾花大輔さんと今野智弘さん。熱狂的なミリタリーフリークの2人が顔を合わせたのだから、専門用語とディープな意見が止まらない。彼らが挙げる膨大な話題の中でも、〈アルファ インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)〉は特にポピュラーな存在で、洒落者たちにもファンが多いのは周知の通り。超マニアックなブランドやコアなヴィンテージピースにまで精通する彼らが、そこに感じる魅力とは。

  • Photo_Shintaro Yoshimatsu
  • Text_Rui Konno
  • Edit_Ryotaro Miyazaki
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Profile

尾花大輔

尾花大輔(N.HOOLYWOOD/デザイナー)

1974年生まれ、神奈川県出身。10代の頃から古着屋で働き始め、早くからバイイングにも携わった後に独立。2001年に〈N.ハリウッド〉をスタートした。2009年より始まった「N.ハリウッド テストプロダクト エクスチェンジサービス」では自身が見てきた軍モノに新たな解釈を加え、提案を続けている。

今野智弘

今野智弘(NEXUSVII.デザイナー)

1977年生まれ、千葉県出身。2001年に〈ネクサスセブン〉を立ち上げ、以降今日までストリートカルチャーやヴィンテージ、最新のテクノロジーなど異なる要素が同居する独自の服作りを続けている。現在は〈メディコム・トイ〉が展開するアートワークやデザインと親和したブランド〈シンク〉のクリエイティブディレクターも兼任する。

それぞれのアルファ インダストリーズ遍歴。

お二人の古着やミリタリー好きはファッション業界の中でも有名ですが、そもそも軍モノにハマったきっかけは何だったんですか?

尾花ぼくは「B-9」だったな。

今野いきなり「B-9」ですか!(笑)

アメリカ空軍のダウンパーカですよね。

尾花そうそう。古着屋の福袋に入ってたんだよね。まぁ、そこの古着屋がもともと知り合いだったのもあるけど、「B-9出るよ」って言われていたから、「じゃあ、買うわ」って。それで並んで買いました。〈エディ バウアー〉製のものだったから他のブランドとダウンバックの風合いが全然違って。

今野フカフカですもんね。

今は古着のピースはかなり高額になってきていますが、当時もそうでしたか?

尾花いやいや、福袋で2万円でしたね。

今野安い(笑)。

尾花安いかなぁ? 27年も前で2万円って、なんか福袋感はないよね(笑)。17だから、高2くらいのときでした。

今野高2でバウアーの「B-9」着てるってかなり洒落てますね。

尾花今ちゃんは?

今野中2のときに〈アルファ インダストリーズ〉のエンジ色の「MA-1」が地元のヤンキーたちの間で流行ったんですよ。だけど、ぼくはそれを着なかったんです。みんなが同じものを着てるのがちょっと恥ずかしくて。それで、中3のときに通ってたセレクトショップのオーナーが「モディファイド」の存在を教えてくれて。

「MA-1」の前身の「B-15D」の襟からボアを取ったモデルですね。

今野そうです。「MA-1の前のモデルの方がすごいんだぞ!」ってざっくり教えられて。水戸から千葉に戻った高1のときに、古着屋の先輩が「モディファイド」と「MA-1」を間違えて値付けしてて。それを見てすぐに買いました(笑)。特に後期の形なんてほぼ「MA-1」なんで、間違えてたんでしょうね。

尾花SPECが、7823-Aだっけ? あ、それはG-1か。理系だから数字覚えてったんだけど、結構忘れちゃってるな。

今野理系だったんですか!?

尾花こう見えて理系だったの。全然文系じゃないし、いまも電話番号とか覚えるの得意なんだよね(笑)。それはいくらで買ったの?

今野確か9,800円とかだったような。同時期に(藤原)ヒロシさんたちがたしか〈グッドイナフ〉で「MA-1」をカスタムしてて。そのボディが〈アルファ インダストリーズ〉のトールモデルを使用している話があって、ぼくはその黒を持ってましたね。〈アルファ インダストリーズ〉の方が着てたかもしれないですね、「モディファイド」より。

尾花それは当時の現行モデルなんだ?

今野そうですね。いまはもう作ってないんですよね。

尾花さんが〈アルファ インダストリーズ〉を認識したのはどれくらいの時期だったんですか?

尾花記憶が薄いんだけど、町田出身だから都心より確実に1年くらい情報が遅いんですよね。でも、黒い「MA-1」に白黒ストライプの審判シャツみたいなのを合わせるっていう提案をジーンズショップがみんなやってて。多分そのときかなと思います。でも、本当にこれが〈アルファ インダストリーズ〉だなって認識してたか、記憶がないなぁ。どうやって認識したか、記憶がないほど身近にあったブランドなんだよね。

今野さんが言われたように、藤原ヒロシさんたちの発信で〈アルファ インダストリーズ〉の存在を知った人も多かったんでしょうね。当時は〈ヘッドポーター〉で、肘から下の部分がレザーになった「N-3B」なんかもつくられていましたし。

尾花ヒロシさん、「N-3B」もやってたんですね。当時は古着どっぷりだったから、全然そのカルチャーを知らなくて。

そういう意味では今野さんの方が、古着と当時のファッションシーン両方の〈アルファ インダストリーズ〉の変遷を見てこられているのかもしれませんね。

今野そうですね、とりあえずエンジ色の〈アルファ インダストリーズ〉を着ている人を見たら避けていたのは覚えてます。面倒なので(笑)

尾花もしかしたらその人が着てたのは〈アルファ インダストリーズ〉じゃなかったっていう可能性は?

今野いや、付いてたんですよ、これ(ユーティリティポケットのタブ)が。

尾花じゃあその人たちもオシャレだったんだね。当時、なんちゃって色付き「MA-1」みたいなのっていろんなところにあったじゃない? だから多分その人たちも「やっぱアルファっしょ!」みたいなことを先輩に言われて買ってたんじゃない?

尾花さんが初めて着られた〈アルファ インダストリーズ〉は何だったんですか?

尾花それも覚えてないんですよ(笑)。でも、当時「MA-1」を着るのもスペシャルなものよりも、スティーブ・マックイーンがたまたま着てた、ウィンドシールドが縦ステッチのタイプとかをさらっと着てるのがクールだ、みたいなことが重鎮系古着屋の間で言われていて。その中でぼくも〈アルファ インダストリーズ〉のそういうモデルを探して着てましたね。「N-3B」もあえて綿ポリのボディのものを探したり。

今野さんのその後の〈アルファ インダストリーズ〉の遍歴はどうなっていったんですか?

今野尾花さんと同じで、どんどん変な方向に行ってましたね(笑)。やっぱり「N-3B」でも縦がコットン、横にナイロンが挿してある後期のものとか、「モディファイド」の迷彩のものとか。

オーセンティックなN.ハリウッド別注のN-3B。

                

深掘りしすぎて戻ってこれなくなった感がありますね(笑)。今季〈N.ハリウッド〉でも〈アルファ インダストリーズ〉に別注して「N-3B」をつくられていますが、そういった視点が活きているんですか?

尾花「N-2B」のテストサンプルでフードを外せるものがあるんですけど、ウチとしては「テストプロダクト エクスチェンジサービス」なので、「モディファイド」とテストサンプルをミックスしてつくってみたんですよ。要素を混ぜ合わせてもバランスが悪くならないようにって考えながら。

ルックスはオーセンティックなものに近くなっていますね。

尾花パターンはぼくが好きな綿とポリエステルが混ざっている時代のものとは変えていますけどね。

今野モディファイドで表地がナイロン、裏が迷彩っていうのは見たことがなくて、全部必ず綿混ですよね。だから尾花さんの「N-3B」もこの質感に迷彩って違和感がないですね。

そもそもこのタイミングで「N-3B」をつくろうと思った心境と、〈アルファ インダストリーズ〉に生産を依頼しようと思ったのはどうしてですか?

尾花1年くらい前からウチのスタッフたちが、「N-3B」とか欲しいですよねってよく言ってて、じゃあ自分たちの解釈でつくろうか、っていう話になったんです。結局何かを完コピしちゃうと、それはテストサンプルじゃなくなっちゃうから。それよりも、そういう都市伝説的な何かをつくる方が面白いよね。

今野そうですね。何より、ぼくらレプリカメーカーじゃないですからね。

尾花ウチのブランドって、昔からリメイクとかを結構やってて。昔、ぼくが働いていた古着屋で見たイギリス軍のアビエータージャケットで、ムートン仕様のフードが黄色く塗られたものがあったんだよね。ブランドが始まった当初、サンプリングして綿ポリの白いファーの「N-3B」に蓄光塗料を塗って、リリースしたなぁ。だから、「N-3B」は自分のブランドの始まりのアウターでもあるんだよね。で、それをスタッフが見てたんだろうね。「あれ、すげえ良かったじゃないですか!」って声が上がって。それで、またアルファさんに依頼しよう、という流れになった気がするな。

実際に今回新たに製作してみて、周りの反応はいかがでしたか?

尾花スタッフたちに「想像以上に良いですね」って言われました(笑)。「なんでお前らにそんなこと言われなきゃいけないんだよ!」って(笑)。まぁ、それは冗談として、思った以上にコンサバ層にも受け入れられていて、びっくりしました。マニアックなディテールも入れてるし、テストプロダクトシリーズでつくったんだけど、むしろドレスシリーズにもハマるくらいまとまったのかな、と自分では思ってます。ぼく自身はフードのファーを外して着るのが定番です。

こうやって振り返ると、「N-3B」は亜種も多いんですね。

今野70年代とかだとデニムのものもありましたよね。

尾花昔の古着屋時代にLAへ行ったとき、ストリートで生活している人から買ったことがあるよ(笑)。「それ、どこでゲットしたの?」って聞いたら「路上」って言ってて、50ドル渡して譲ってもらって。そしたら「このズボンもやるよ」って脱ぎかけながら言われたけど、「それはいらない」って断って(笑)。

今野(笑)

いまの若い世代にはそういう古着のヒストリーは知らない人が多いでしょうけど、尾花さんはやっぱりそれを知ってる人たちに、コラボレーションモデルの「N-3B」を着て欲しいですか?

尾花それに関してはどっちもかな。でも、そういうデニム素材だとかエンジ色だとか、「直球でアンタたちの当時の思い出のものを出されても……」って感じだと思うし、元ネタを知らなくても「そこを通ってないからフレッシュなんだね」っていう解釈で見れますよね。

「N-3B」が流行った時期を経験していなくても、別の楽しみ方があるってことですね。

尾花「N-3B」ってブームになったことあるのかな?

今野ぼくが覚えているのは、タイタンクロスのものが増えた90から00年代くらいの頃ですかね。

尾花90年代の頃にヴィンテージの方向に行っちゃったからな。ブームがあったのは知らなかった。

今野ぼくが高校1年のときに、黒のタイタンクロスのものを買った記憶があります。友達と上野の「中田商店」に行ったときに。

尾花手頃に買える良いアウターみたいな感じだったんだろうね。ダウンとか「B-3」とかがたくさん出てきたけど、そういう中で「N-3B」が一番真っ当に見えたなぁ。そう言えば、90年代初頭のデルカジ(モデル風カジュアル)時代にも黒い「N-3B」を着てる人が多かったよね。黒いマウンテンパーカか、「N-3B」。で、レジメンのネクタイに白い〈アニエス・ベー〉のシャツ着て、みたいな。

マニアも納得のネクサスセブン別注のMA-1。

                

〈ネクサスセブン〉で昨年アルファとコラボレーションしたのは、「N-3B」ではなくて、「MA-1」でしたね。

今野そうですね。「アーバンリサーチ」さんに声をかけてもらって始まった企画で。「アルファ インダストリーズと、何かものづくりをしてみませんか?」って。それで、テストパイロットのモデルをサンプリングしてつくりました。

尾花今ちゃんは何種類作ったの?

今野色は2種類です。〈アルファ インダストリーズ〉が当時につくっていたらこんな感じだったのかな、というイメージで。オリジナルもリバーシブルで、60から70年代のものだと思うんですが、それは両面が同じデザインで。普通の「MA-1」だと縦ジップだけじゃないですか。ちょっと差別化できるかなと思って。

尾花軍モノ好きだったらみんな多かれ少なかれ、「ああ、やってるね」という感じでニンマリできるデザインだよね。

今野本当は下のポケットがない仕様でつくりたかったんですけど、それだとちょっと着づらそうだなと思って。意外とここに手を突っ込むことが多いので。

尾花そうなんだよね。俺も「内ポケットとかいらない!」ってずっと言ってたんだけど。最近、自分がポケット好きだって気づいた(笑)。

今野やっぱり便利ですよね(笑)。

尾花そうそう。ポケットって便利なんだよね(笑)。最近は前より荷物が少なくなったからポケットに入れるだけで十分だったりするよね。バッグいらないな、って思ってる。

尾花さんは以前、「古着のバイヤー時代にコンビニ袋だけで渡米してた」と言われてましたもんね。

尾花そうですね。ウルトラライトパッキングの走りだと思う(笑)。

今野ぼくも同じ様な話ですけど、スケーターのジェイソン・ディルがグローサリーでもらう黒のコンビニバッグを持ってるのにすごいヤラれて。そのときはまだディルのことをよく知らなかったんすけど、「なんだよあの人、すげぇカッコいいなぁ」って。その後に、〈ハフ〉の社長に紹介してもらったんですけど、ディルがその黒い袋だけ持ってプッシュして帰って行くんですよ。でも、日本じゃ黒のものって売ってないんですよね。で、いまでもアメリカ行ったらその袋をもらって、捨てずに帰ってきて。おそらくダンボール2箱分くらいありますね。いろんなプリントがあって。…すいません、なんの話でしたっけ?(笑)

尾花ポケットの話だよね(笑)。ポケットって使えるよね、って。それにしても柔らかいね、この「MA-1」。「L-2B」でも「MA-1」でもない、独特のウェイト感だね。

今野中綿の量が少ないんですよ。「MA-1」はすごい流行ったし出尽くしてるじゃないですか? だからド直球よりも、ちょっと捻りたかったんです。リバーシブルにしても普通のものとは見え方が違ったり。

尾花ウィンドシールドがないからね。なのにミドルウェイトっていう。裾のリブのステッチがないのも良いな。

〈ネクサスセブン〉では〈アルファ インダストリーズ〉とコラボレーションするのは初めてだったんですか?

今野そうですね、このときが初めてでした。当時のエンジの「MA-1」を着てた先輩たちがこの対談見たら、ちょっと…。

尾花「なんでエンジにしねぇんだよ!」って?

今野はい(笑)。

今野さんが言われた通り、「MA-1」ブームももう始まって随分経ちましたよね。

尾花だから今ちゃんがつくったモデルは、このタイミングで逆に面白いと思う。ベタなビッグシルエットとかをつくっちゃいそうだけだと、それは違うじゃない。

今野そうですね。

モダンにアップデートされたオリジナルモデル。

「N-3B」って、いまはすごく主流という訳ではないけど、すごく新鮮に楽しめるタイミングかもしれないですね。

尾花そうですね。「N-3B」って簡単なジャンパーではないはずだったんだけど、ジップを首のあたりまで締めればそれだけで着こなしがピリッとして見えるし、中に着丈の変なインナー着ててもバレないしね(笑)。流行りとは別に、着る理由はたくさんある気がします。

今野そうですね。ぼくもオリジナルの「N-3B」は好きじゃないんですよ。2枚ハギの袖で、肩がすごく出るから体に合わなくて。さっき、最新の〈アルファ インダストリーズ〉の「N-3B」を見たんですけど、そこがすっきりとしたラグランになってて、かなり着やすくなってましたね。デザイン自体はもう完成されていると思うし。

最近の「MA-1」ブームの中で、特に〈アルファ インダストリーズ〉の腕のネームタグを街でもかなりの頻度で見る気がしますけど、今度は「N-3B」でまたさらにその光景に会う機会が増えるかもしれないですね。

尾花やっぱりそれだけインパクトを与えたってのはすごいですよね。こういうサインがあったから、〈ヴェトモン〉とかのコラボにも結びついた所もあるだろうし。インラインの「N-3B」もフードのファーが外せるっていうのも良いよね。

今後、お二人がまた〈アルファ インダストリーズ〉とコラボレーションするとしたら、つくってみたいものはありますか?

尾花うーん。それ以上に、個人的には〈アルファ インダストリーズ〉がこれまでつくってきたアーカイブを見せてほしいですね(笑)。

今野確か、資料には60年代からしか記載がないんですよね。

尾花でも、ミリタリーの歴史というよりは、ファッションの流れの中で「このブランドだったら間違ってないだろう」って立ち位置まで持っていった〈アルファ インダストリーズ〉はやっぱりすごいよね。フライトパンツが好きだから、一緒につくれたら良いなぁとは思うんだけど、マニアックになりすぎる気もするなぁ(笑)。今ちゃんは、やっぱりエンジのMA-1?(笑)

今野……もう、エンジのことから離れてもらえると嬉しいです(笑)。

細部までこだわったアルファインダストリーズの自信作。

N-3B TIGHT
左、中央 ¥24,800+TAX、右 ¥29,500+TAX

極寒に耐え得るN-3B本来の保温性は残しつつ、日本人の体型でもすっきりと着られるタイトフィットにアレンジしたモダンなシリーズ。タフなヘビーナイロンツイルを使った骨太な作りで、着脱式のフェイクファーをあしらったフードにはボアをライニングし、袖口はインナーリブ仕様と、ディテールにまで機能的なこだわりが詰まっている。

アルファ インダストリーズ

電話:0120-008-503
alpha-usa.jp

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#ALPHA INDUSTRIES
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