音楽をやりたいからバンドをはじめたわけじゃない。
浜野さんがはじめてバンドをやったのはいつ頃のことなんですか?
浜野 高校生のときですね。それが表現することのルーツです。とはいえ、音楽をやりたいからバンドを組んだというわけでもないんです。
浜野 バンドをやることで人気者になりたかっただけなんです(笑)。繋がりが増えたりするじゃないですか。ぼくが通っていた高校が自由な校風で、しょっちゅうライブとか開催するようなところだったんです。
浜野 たまたま友達に「ボーカルがいないからやって」って言われて入ったんですけど、その頃ってパンクとかミクスチャーとかスカとかそういうのが流行ってたのに、ぼくらのバンドはエリック・クラプトンの「チェンジ・ザ・ワールド」をコピーしてライブで演奏してました。それが意外と好評で、「おまえらおもしろいな!」みたいな感じになって(笑)。それが快感だったのを覚えてますね。
〈OG × OLIVER GOLDSMITH〉CUT one 44 col.507 ¥36,000+TAX
目立ちたいという気持ちのほうが前にあったというのが意外でした。
浜野 当時は手段でしたよ、バンドは(笑)。モテたいからはじめたという感じでもないんですが。
でも、高校生の頃は誰もがそういった気持ちを抱いていたように思います。
浜野 どうなんでしょう。自分を広げたいという気持ちだと思いますね。あとは誰かに自分を託したいという気持ちもあるかもしれない。ぼくは自己プロデュース能力がないというか、自分はこうだからっていうのを正直にさらけ出して、そのまま評価を相手に委ねちゃう傾向があるので。
浜野 ぼくは自分らしいイメージつくりをしていなくて、「ハマケンはこうだ!」っていう決定的なイメージがない。だからこれからはもっと丁寧にやろうと思ってます。そうすればもっと売れるかなって(笑)。
バンドをやって、俳優業にも力を入れて、みんなの人気者みたいな印象はあると思います。それが浜野さんの魅力だと思っている人も多いんじゃないでしょうか。
高校生の頃に抱いていたように、いまも人気者でありたい、目立ちたいという気持ちはあるんですか?
浜野 その気持ちをどうにかしなきゃとは思ってます。おじさんがまだ目立ちたいだけというのもどうしようもないなって思ったりするので…(笑)。まぁでも、そうあり続けたことで感受性が豊かになったような気もしますね。感動してすぐ泣いちゃったりするので。そこが救いですね。
もっと嘘をついてもいいというか、 自分の役を演じ切ってもいいんじゃないか。
「在日ファンク」でステージに立っているときは、全身全霊でパフォーマンスする姿が印象的です。とはいえ、ある意味では何かを演じているようにも見えるんですが、何かしらの役割を全うしている感覚はあるんですか?
浜野 それは「在日ファンク」のときに限らずどこに行ってもあるかもしれませんね。実は大学生のときにそういう論文を書いたことがあるんです。とある社会学者の話によれば、人はみんな何かしらの役割を演じているそうで。
浜野 ただ最近は「俺はまだまだ『在日ファンク』のフロントマンになりきれてないんじゃないか」って考えたりもしました。もっと嘘をついてもいいというか、もっと自分の役を演じ切ってもいいんじゃないかって。
浜野 そうですね。結成して10年経って、それが新しい発見のひとつでした。俺たち掘ってももうなにも出てこないんじゃないかな? って思ってた時期もあったんですけど、今回新しい作品をつくってまだできるっていう感触を得られました。
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メジャーレーベルから古巣である「カクバリズム」に戻ったことで、落ち着いて制作ができたというのもあるんですか?
浜野 そうですね。自分たちだけの力というよりは、周りにいるスタッフの支えが大きいです。マネージャーも代表の角張さんもよくわかってくれていて、ときにはサポートしてくれたり、怠けているときは叱咤してくれたりして。そうするとバンドのいろんな面がわかってくるというか。自分たちの知らない一面があって、それに驚いたりして、宝探しをするような感覚で制作に没頭できましたね。
メンバーが濡れた顔をしていてグッとくる。
2005年に俳優としてのデビューを果たして、それ以来ずっと音楽活動と俳優業をされていますが、両者がお互いに影響し合うこともあるんですか?
浜野 ありますね。音楽の言語で俳優業を解釈することが多いかもしれません。監督はバンドリーダーで、主役はメロディーみたいな。音楽やバンドにそれぞれパートやメンバーがあるのと同じで、芝居も自分ひとりでというよりはみんなでつくっている感覚です。そうするとスムーズにいきますね。
浜野 きっとあると思います。直接的ではないにしろ、なにかぼんやりと影響しているように思います。役になりきると結構熱くなるときがあるんですよ。ぼくはそれが不思議で。
浜野 ひとつの作品をつくるにしても、時間軸とか関係なくブツ切りでシーンを撮ったり、喋るセリフが決まってたりするのに、役と同期して本当にその気持ちになったりするんです。大の大人が一生懸命嘘つきながら、それがリアルになったときにすごい感動するんですよ。
浜野 そうやって俳優業で感動したりエネルギーを感じる感覚を、もっと音楽で感じることができるんじゃないかって思ったりしましたね。まだまだ感度を上げられるんじゃないかって。
俳優として役を演じ切ることで、バンドのことを俯瞰して見ることができたんですね。
浜野 俳優をしててこれだけ気持ちよくなれるんだから、音楽でももっと気持ちよくなれるんじゃないかなって気づくことができました。いまの「在日ファンク」には“自分で自分をふるわせる”みたいな気持ちが大事なんじゃないか? って。メンバーにそんな内容のメールを送ったりもしましたね。ずっと能動的なことばかり考えてたけど、受動的に感じて気持ちよくなることも必要なんじゃない? って。そうでないとセックスマシーンの永遠の回転が続かないんじゃないか!? みたいな(笑)。
浜野 お前たち感じてる? 濡れてる? みたいな(笑)。それで最近バンドメンバーが濡れた顔をして演奏しているのを見て、そこにグッときたりします。
自分の知らない一面に気づかせてくれるアイウェア。
浜野さんのなかで、役者とバンドを切り替えるスイッチみたいなものはあるんですか?
浜野 それはないです。環境とか現場がなんとかしてくれますね。そこに行けば自分の役があるというか。たとえば同窓会へ行くと、おじさんおばさんになったというよりも、かつてのクラスに戻る感覚があるじゃないですか。そういう感じで自然と切り替わりますね。
浜野さんのアイコンのひとつにメガネという存在があると思うんですが、「在日ファンク」のときはかけてないですよね? かけるときと、かけないときの意識的な差はあるんですか?
浜野 「在日ファンク」のときはよく動くので、レンズが曇ったりズレたりしたらカッコ悪いなと思ってかけてないだけなんです(笑)。意識的な差はとくにないかもしれないですね、圧倒的にかけているときのほうが多いので。ただ、メガネをかけていることで守られている感覚はあるかもしれません。
浜野 そうそう、そんな感じです。どんどん歳をとってシワも増えてきているし(笑)、メガネをかけることでシャキッとする感覚はありますね。
左上から時計回りに〈OG × OLIVER GOLDSMITH〉SK SG col.119-5 ¥40,000+TAX、BAKER col.117 ¥42,000+TAX、FARMER col.020-2 ¥34,000+TAX、PUT IN two49 col.601 ¥40,000+TAX、CUT one 50SG col.517 ¥39,000+TAX、CUT one 44 col.507 ¥36,000+TAX
浜野 実はいろんな変遷を遂げているんですよ。靴を履きつぶすまで履くのと一緒で、一度ハマるものがあるとずっとそればっかりかけてますね。
浜野 余裕が出てきたときですね。もう一個くらいあってもいいかな? っていう変な余裕。そういうときに新しいやつに出会うんです。
メガネは顔の表情を変えるものだと思うんですが、かけるアイテムによって自分自身も変わるような感覚はありますか?
浜野 全然ありますよ。たとえば今日かけた〈オージー・バイ・オリバー・ゴールドスミス〉のメガネは、ちょっとワルそうな感じが出たと思います(笑)。こういう四角いフレームってなんだか独特な雰囲気がありますよね。インテリ感がありつつも、かける人によって解釈が変わってくるというか。
浜野 それもあると思います。とくにこのアイテムは普通の四角いメガネとは歴然とした違いがありますね。角の丸い感じとか、意外とこういう形ってないと思うんですよ。そこが好きです。今日のキリッとした格好のいいスパイスになってくれてますね。
実際に〈オージー・バイ・オリバー・ゴールドスミス〉のアイテムをいくつか試されていましたが、このブランドに対してどんな印象を抱きましたか?
浜野 繊細な美しさがありますよね。メタルフレームのアイテムを中心にかけたんですが、色とかもほんのりホワイトゴールドが光って、色気と品を感じました。すごい大人になった気分というか(笑)、いいおじさんになれた気がしてうれしかったなぁ。アイウェアって人の顔のちがう一面を見せてくれますよね。
浜野さんにとってアイウェアはどんな役割を持っていますか?
浜野 自分を無限に変えて欲しいなって思います。「あ、こんな自分もいるんだ!」って気づかせてくれるものというか。だから今日もすごい可能性を感じましたし。
浜野 そうですね。あとはメガネを取ったときの自分の魅力も引き立たせて欲しいなって思います。「私、脱いでもすごいんです」みたいな(笑)。それを演出してくれるメガネが最高です。〈オージー・バイ・オリバー・ゴールドスミス〉もそんな感覚がありますよね。
最後に、今後のご自身の活動において目標などがあれば教えてください。
浜野 とくに新しいことに挑戦しようというよりはバンドとしても、役者としても、課題はありますがいま順調だし、勢いを失わず成長していけたらと思っています。とにかく一生懸命がんばろうかなと(笑)。