SPECIAL

「フイナム」が様々なブランドやヒトと
コラボレーションしたスペシャルサイトです。

CLOSE

HOUYHNHNM

FEATURE|MA-1とともに歩んだ、アルファインダストリーズの歴史を紐解く。

MA-1とともに歩んだ、アルファインダストリーズの歴史を紐解く。

All Of MA-1.

MA-1とともに歩んだ、アルファインダストリーズの歴史を紐解く。

第二次大戦後の1959年に設立されて以来、’60年代初頭に勃発したベトナム戦争をはじめ、長きにわたりアメリカの軍需を支え続けた名門〈アルファインダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)〉。その歴史はかつて同社のCEOも務めたアラン・D・サーカーにより、2009年に『The Alpha Story: 50 Years of an American Military Clothing Compan』として、世界で初めて体系的にまとめられました。同書から貴重なアーカイヴを断片的に拝借しながら、フライトジャケットと〈アルファインダストリーズ〉の関係性、とりわけその代名詞とも言えるMA-1の歩みを、あらためて考察していきましょう。

  • Photo_Erina Takahashi
  • Text_Takehiro Hakusui
  • Edit_Rei Kawahara
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フライトジャケットの新時代を築いたMA-1の歴史を辿る。

前身となるフライトジャケットB-15をモディファイし、主にインターメディエイトゾーンで活躍することとなるMA-1。その正式採用は第二次大戦が終結した1950年半ば頃だったと言われています。フライトジャケットという大きな括りのなかでも、活動するエリアの気候や目的ごとにタイプ分けされ、対応外気温が摂氏30~50℃をベリーライトゾーン、同じく10~30℃までをライトゾーン、-10~10℃までをインターメディエイトゾーン、-30~10℃までをヘヴィゾーン、-50~-30℃までをベリーヘヴィゾーンと、5つのゾーンタイプに区分されています。また、いまやフライトジャケットといえばセージグリーンのナイロンボディが一般的ですが、第二次大戦中にあたる1940年代まではコットンや革製が主流でした。

1947年、それまで陸軍の一部隊だった航空隊(U.S. ARMY AIR FORCE)が解体され、正式にアメリカ空軍(U.S. AIR FORCE)が設立された頃、軍用機の多くはプロペラ機からジェット機へと変遷します。これにより飛行高度が上昇し、結露によってフライトジャケットに付着した水分が氷結して機内での活動に支障をきたすことから、なかでも氷結しにくいナイロンボディが開発され、その雛形ともなったのが元祖MA-1でした。以来、ベトナム戦争を経て’90年代まで継続使用されたMA-1ですが、その生産の多くを手掛け、’70年代以降はタウンユースへと裾野を広げたのが〈アルファインダストリーズ〉です。1959年の設立当初はMA-1はじめ、M-65フィールドジャケットの大手コントラクターだった「ジョン オウンベイ」社の下請けファクトリーから始まり、MA-1の登場で一気に最大手となった同社の歴史を年代ごとに追ってみます。

’50年代

前身となる〈ドブスインダストリーズ〉時代からフライトジャケットの生産を手掛け、先述のようにジョン オウンベイ社の下請け製造も展開していた〈アルファインダストリーズ〉の設立は1959年のこと。当時のアメリカ国防省が軍用ジャケットの見直しを同社に依頼して以来、最大手コントラクターへと成長していくことになります。

MA-1の軍用品規格番号(Mil-Spec)は大きく8つに分類されます。つまりMA-1というカテゴリーにおいても、年代ごとに様々なモデルが存在しているのです。その最初期型にあたる’50年代半ばのモデルがMIL-J-8279。開発当初は実戦部隊に優先的に支給され、’60年代初頭まで継続使用されました。

’60年代

ケネディ政権下において1961年に限られた一部の顧問軍人を南ベトナム軍支援に送り込んだことを端緒とし、アメリカの軍需産業が一気に活気づきます。〈アルファインダストリーズ〉の本格参入も激化するベトナム戦争の真っ只中、工場の稼働率が急激に上昇し、従業員数も100名から500名を超えるほど急成長を遂げました。当初は実戦部隊を優先していたものの、ようやく供給体制が整い、MA-1が陸海空全てのパイロットに支給されたのもちょうどこの頃だったと言われています。

搭乗者に不測の事態が発生した際、レスキュー隊からの視認性を高めるべく1963年にはそれまでセージグリーンだったライニングが国際救難色のブライトインディアンオレンジへと変遷。リバーシブル仕様となりました。ミルスペックはMIL-J-8279D、ヴィンテージシーンでは中期型と呼ばれるモデルのひとつです。

’70年代

’70年代に入ると泥沼化したベトナム戦争もようやく終結へと向かい、兵役を満了する言わば退役軍人たちには、戦地を去る際に自身が着用していたフライトジャケットを持ち帰ることが許されました。これによりフライトジャケットはさらなる市民権を獲得していきます。いわゆる軍払い下げ品として一般市場に出回ったMA-1、その機能性の高さは防寒アウターとしてタウンユースでも珍重され、各国へと飛び火していきます。なかでも彼の地イギリスのユースカルチャーには絶大な影響を残し、’60年代末から’70年代初頭にかけて暗躍したスキンズたちは、ゲッタグリップの10ホールに古着のHサス、ベンシャーマンのB.D.シャツにMA-1という独自のスタイルをユニフォーム化していきました。また、パンクロックのサブジャンルとして’70年代に確立された「Oi!」シーンにおいても、MA-1は同じく労働階級の象徴としてユニフォーム的な役割を果たしています。

こちらは、ウールパイルのライニングを採用した最後期型。この頃からライニングがポリエステル素材へと徐々に移行していきました。前身頃のハンドウォーマーポケットにはフラップが採用され、ミルスペックもMIL-J8279Eへと変遷。また、1973年には難燃性に優れたアラミド繊維が開発され、MA-1の後継モデルとなるCWU-45Pが登場したものの、最初期は実戦パイロットへの支給に留まり、テストパイロットやグランドクルーなどは引き続きMA-1を着用したと言われています。

’80年代

1980年代、レーガン政権下において国防総省の規模と予算が大幅に拡大されることが決定され、国防総省からの需要が急激に高まります。新しい需要が誕生したことで、1980 年代半ばには、衣類だけで18億ドルが消費されたのだとか。そして、それと同時期に〈アルファインダストリーズ〉は米軍向けのビジネスから、一般消費者に向けたミリタリーベースのグローバルブランドへの転換を図ります。

さらに、コマーシャルビジネスが躍進し、もはや軍需のみならず、アメリカを代表する巨大ガーメントブランドとなる〈アルファインダストリーズ〉。この頃になるとMA-1はフライトジャケットという括りを軽々と越え、カジュアルウエア、デイリーウエアの文脈でも語られるようになりました。こと日本においては映画『トップガン』の公開を機に、フライトジャケット人気が再燃。特にブラックのMA-1に需要が集中したようです。

MA-1はその座をCWU-45Pへと譲り、U.S.エアフォースにおいてはグランドクルーのみが使用するMIL-J-8279Gへと変遷。’60年代から親しまれた3ラインのロゴマークもイニシャルを象った新ロゴへと移行しています。

’90年代

ソビエト連邦が崩壊し、長らく続いた冷戦が事実上終結すると、アメリカ国内の平和主義が加速するとともに、防衛ではなく社会や民間への予算分配が目下の旗標となりました。軍需産業は一気に停滞し、多くの関連企業が閉鎖するなかにあって、〈アルファインダストリーズ〉が存続できたのは、’70年代よりコンシューマー事業に舵を切った先見の明に依るものでした。特に’90年代はストリート一強時代。ステューシーをはじめとする海外のストリートブランドはおろか、俗に裏原と呼ばれたドメスティックブランドの多くも〈アルファインダストリーズ〉社製のMA-1をベースにカスタムモデルなどを数多く展開していきます。

一方、アメリカ国内においては様々な企業やイベントとコラボレートすることで、スタッフジャケット、アドバタイジングジャケットとしての立ち位置も確立。タウンユースに向け、デザインにマイナーチェンジを施したのもちょうどこの頃だったと言われています。

1994年、アメリカ国防衛相が窓口となり、イスラエル空軍に供給された通称イスラエルMA-1。実用目的ではなく、参列などの儀礼用に採用され、肩にはエボレットが新設されています。

’00年代

設立から50周年を迎えようとしていた〈アルファインダストリーズ〉にとって2000年代は大きなチャレンジを伴う年代となりました。911やイラク戦争を経て、アメリカの軍事予算は電子機器やテクノロジー分野がメインとなり、戦地に兵士を送り込むといった前時代的な戦争が一旦終幕を迎えます。

軍需に寄り添ってきた〈アルファインダストリーズ〉もまた、コンシューマー市場を対象としたミリタリー影響下のブランドへと変化を遂げる必要に迫られ、カジュアルウエアやストリートウエアの強化を図っていきました。なかでもMA-1本来の機能美はそのままに、より現代的なフィッティングへとモダナイズを図ったMA-1タイトは、日本限定モデルとして近年を代表するヒットアイテムとして男女問わず人気を集め続けています。

2010年代以降の最新型MA-1をご紹介。

軍用としての役目を果たしたMA-1は、2010年代からさらにスピードを上げ、日常着としての変化を見せます。現代的なマーケティングが功を奏し、特に若年層からの支持されるように。ここでは2018年に登場した最新型モデルをご紹介。

MA-1 TIGHT TIGER CAMO

すっきりしたシルエットをより好む、日本人向けにサイジングされた現代版のMA-1。鮮烈なインパクトをもたらすカモ柄は、2018年秋冬シーズンのニューデザイン。

MA-1 BLOOD CHIT TRANSPORT TIGHT

墜落などで戦地に取り残された兵士のために記される人物証明書、通称「BLOOD CHIT」が背面にデザインとしてあしらわれたモデル。鮮やかなイエローと袖に配されたテープ使いが力強い印象を与えるデザインになっている。

MA-1 NATUS

着脱式フードがアタッチメントされたMA-1。ストリートライクな雰囲気をより感じられるトレンドに寄り添ったハイブリッドなモデル。

創業から今日までを振り返ってわかるのは、ミルスペックという世界でも最も厳しい規定のもとに研ぎ澄まされた流行や一過性のトレンドに埋没することのない機能美、そしておよそ60年を数える歴史に裏打ちされた確かな信頼性。それこそが、〈アルファインダストリーズ〉の最たるアドバンテージと言えるのではないでしょうか。

INFORMATION

ALPHA INDUSTRIES

0120-008-503
www.alpha-usa.jp

TAG
ALPHA INDUSTRIES
MA-1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Page Top