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FEATURE|リモワ、121年目の躍進とその立役者。

リモワ、121年目の躍進とその立役者。

The It-Bags of Generation-Hype

リモワ、121年目の躍進とその立役者。

“ラグジュアリーとストリートのミックス” なんてことをいまさら論ずるのはナンセンスだ。それが隔たれたものだったのは昔の話で、両者が蜜月関係となって、もうすいぶん時間も経った。そんな昨今の世相の下で、〈リモワ(RIMOWA)〉のまわりがにわかに騒がしい。LVMHグループへの加入や〈シュプリーム〉に〈オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™〉といったアイコンたちとのコラボなど、常に話題が途絶えない。ハイやローではカテゴライズできないその動き、黒幕は〈リモワ〉のCBOを務めるヘクター・ミューラスという男だ。彼は、上質なトランクの代名詞をどこへ導くのか。

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Profile

1980年生まれ、バルセロナ出身。弁護士だった父は80年代に退職し、スペインで初めてのスケート&サーフショップをオープンしたという人物で、そこが彼自身の幼少期の遊び場となる。そうしてコミュニティの成り立ちやカルチャーの生まれる現場を目の当たりにして育ち、20歳でベルリンへと移住。その後の活躍ぶりは本項で触れる通りで、現在はドイツ人の奥さんと2人の子供たちとともにパリで暮らしている。

カルチャーの中でもちゃんと存在し得るブランドにしていきたい。

早速ですが、ヘクターさんがリモワにCBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)として参加するまでの来歴を教えてください。

ヘクターまず、ぼくのバックグラウンドはジャーナリズム。元々ライフスタイルマガジンを始めとする雑誌について学んでいて、テレビや音楽イベントなどに関わる仕事をしていたんだけど、その後、縁あってドイツの『VICE MAGAZINE』で編集長を務めました。

いきなり意外な経歴ですね。

ヘクターその時は若かったし、楽しかったですね。それで、ジャーナリズムを通して色んなブランドと仕事をする機会が増えて、記事を書くことよりもブランドというものに対しての興味がすごく強まってきたんです。そのあとは「ワイデン+ケネディ」という広告代理店を経て〈ナイキ〉で広告関係の仕事をしました。ブランドの構成とか作り方を「ワイデン+ケネディ」で学んだんです。で、そのあとは「CAA」という、LAにあるエンターテイメント業界のエージェンシーで働いていました。

またかなり業種の垣根を超えましたね(笑)。

ヘクターそうですね。そこはレブロン・ジェームスからスティーブン・スピルバーグ、ブラッド・ピットなどのマネジメントしてる事務所でした。その中にクリエイティブの部署もあって。で、その後は…。

え、まだあるんですか!?

ヘクターはい(笑)。その後、〈アップル〉で働きました。とにかく素晴らしい会社でしたよ。プロダクトだったりコミュニケーションだったり、様々な分野を極めている会社でしたしね。僕はワールドワイドのマーケティングディレクターもして、〈アップルウォッチ〉のローンチも手がけました。そこでリテールだとか広告だとか、マーケティングに関する全体のことを見ることができたんです。〈アップルウォッチ〉はファッションアイテムとしての位置付けだったから、ファッション業界にも目を向けさせてくれましたしね。いまいるLVMHにすごく興味を持ったのも、〈アップルウォッチ〉がラグジュアリーな業界と関わりが深かったのがきっかけになっています。

それで、ようやくLVMHへの入社へ至ると?

ヘクターそうです。その頃はファッション業界からテクノロジー業界へ移る人が一気に増えた時期だったけど、僕はその逆だったんです。LVMHに入って最初の2年は色んなブランドのクリエイティブやマーケティングの企画に携わりました。それで2年前に〈リモワ〉がLVMHグループに参加することになるんですが、ぼくは若い頃に父親から〈リモワ〉のトランクをプレゼントされたことがあって、昔からこのブランドのファンだったんです。それで、〈リモワ〉の本国の社長、アレクサンドル・アルノーにお祝いのメールをして、「何かぼくに協力させてもらえることがあれば、ぜひ」と伝えました。これまでラグジュアリーとライフスタイルとカルチャーに常に接するような仕事をしてきたので、その経験を全部〈リモワ〉に投じようと思ったんです。

その熱意がアレクサンドルさんに通じた結果がヘクターさんの現職というワケですね。

ヘクターアレクサンドルはLVMHグループ会長のご子息ですけど、〈リモワ〉に関しては他とはまた違うことをやりたいと望んでいたみたいで、王道のプロフィールや経歴ではない人をあえて採用したかったんだと思います。それで、〈グッチ〉や〈ルイ・ヴィトン〉から来た人よりも、〈アップル〉や〈ナイキ〉にいたぼくのような人間に興味を示してくれたんです。

なるほど。ヘクターさんは〈リモワ〉について、どんな展望があったんですか?

ヘクターこれはいまもそうなんですけど、カルチャーの中でもちゃんと存在し得るブランドにしていきたいと思っています。例えば〈シュプリーム〉は要素を取り入れるだとか盗むだとかではなくて、カルチャーの中に常に存在してますよね。クリエイティブコミュニティをサポートしてるし、共存してる。スーツケースという業界の中で、タイムレスで確固たるアイコンとしてのステータスを〈リモワ〉に築かせたかったんです。プロダクトとしてもブランドとしても、アイコンにしたかった。例えば旅行でトランクを持ち運ぶ時間なんて、全体の10パーセントくらいですよね。だけど、それがカルチャーと結びついていたら、最初のパッキングや運んでいる途中だけじゃなくて、旅全体の中で常にそのトランクが存在し得ると思うんです。

逆に、変えずに守ろうと思ったところはありますか?

ヘクター品質とクラフツマンシップです。〈リモワ〉のプロダクトって、機能があってその後にフォルムや形ができるというような、ドイツブランドらしい職人気質が背景にある。デザインも80年間、ほぼ変わってないでしょ? それは機能性のベースとして、物の形が存在してるから。そこは大事にしたいなと思ってます。

「ロゴを入れたい」とだけ言ってくる方もいるけど、ぼくたちはそれはやらないんです。

話は変わりますが、時期を考えると〈シュプリーム〉や〈オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™〉(以下、〈オフ-ホワイト〉)とのコラボは、ヘクターさんの参画後ですよね? それが実現するまでのエピソードを教えていただけますか?

ヘクターたくさん面白い話がありますよ(笑)。〈シュプリーム〉のジェームス(・ジェビア)や〈オフ-ホワイト〉のヴァージル(・アブロー)はずいぶん前から知り合いなので、ぼくは彼らが〈リモワ〉を好んで使っていることは知ってました。ジェームスは旅行のときに〈リモワ〉のトランクしか使っていないし、〈シュプリーム〉チームもみんな〈リモワ〉で旅をしてましたよ。ヴァージルは、数年前にもインスタグラムで〈リモワ〉のことをポストしたりもしてましたね。ヴァージルはそれ以外にも〈オフ-ホワイト〉を始めて3、4年くらいした頃に自分で〈リモワ〉のデザイン案を考えてくれたことがあるんです。

え!? その案はどうなったんですか?

ヘクターそのときはいろいろ事情があって断ってしまったみたいです。でも、ぼくは彼らと長年付き合いがあったから、コラボレーションも自然な成り行きで進みました。(スマホアプリの)「WhatsApp」での何気ないやり取りから、もうコラボが始まってたんです。写真を送り合ったり話し合ったり、そのチャンネルは常に開けっ放し。その成り行きをスクショして、本にまとめたいと思ってるくらいです(笑)。

〈シュプリーム〉も〈オフ-ホワイト〉も、かなり大胆にデザインがアレンジされていましたね。

ヘクター〈シュプリーム〉は特に工程が大変でした。〈リモワ〉のトランクは90ぐらいのパーツでできているんですけど、それをすべて近い赤に揃えるのに一番苦労しました(笑)。

それでも元々共通言語があったから、スムーズに進んだんですね。

ヘクターそう思ってます。コラボレーションって、ビジネスの戦略のためにあるわけではないんですよ。スーツケースはキャンバスみたいなもので、両方のブランドの真ん中でアイデアを出していかないといけない。ただ「ロゴを入れたい」とだけ言ってくる方も正直多いけど、ぼくたちはそれはやらないんです。

以前から続いているところだと、〈ポルシェ〉のトランクに〈リモワ〉がぴったり収まる設計もお互いの個性が活きたコラボですよね。

ヘクターそうですね。〈ポルシェ〉との試みはもうかなり長く続いていますし、彼らとはすごく考え方が合うんです。またそのうち面白いことをやりますよ。

楽しみにしてます(笑)。実際に先のようなコラボレーションをすることで、ご自身は何か得るものはありましたか?

ヘクターいい質問ですね。〈シュプリーム〉も〈オフ-ホワイト〉もブランドとプロダクトとが分かれていないところが共通点で、ストーリーとプロダクトが最初から創り上げられているブランドです。どういう風にものづくりをしていくのかについても、彼らのフレキシブルな考え方はすごく勉強になりました。

あと、これはヴァージルについてなんですが、彼はニューヨークからケルンにある〈リモワ〉の工場まで来てくれたんです。まず部品を眺めて、インスタにストーリーズを上げたりしながら、何を作るかを考えていたんでしょうね。でも、そうしたら1時間半後に、50人くらいの若者がドイツ中の色んなところから彼に会うために集まってきたんです(笑)。工業地帯の小さな街に。ヴァージルは彼らに頼まれて、靴やTシャツにサインをしてましたね。

さすがスターデザイナーですね…!

ヘクター他にもホテルで寝る前、ロビーでヴァージルと2人で飲んでいたときに14歳の男の子が来たんですよ。で、「ドイツの北の方から8時間かけて会いに来た」って言うんです。「そのためにお金も全部使った」って。ヴァージルは彼の靴にサインしてあげて、「一緒に飲もうよ」って誘ったんですよね。もちろんその子にとってヴァージルはヒーローだったから緊張していたんですけど、1時間くらい、その男の子の話を聞きながら人生のキャリアについてアドバイスをしていました。その子は「いままでの人生で最高の日だ」って言ってましたよ。

素敵なお話ですね。でも、一昔前は〈リモワ〉のような高級トランクは、そういうユースのカルチャーやストリートとは縁遠いものだった気がします。それが変わってきた理由はどんなところにあると思いますか?

ヘクターう〜ん、2つ理由があると思っています。まずは、みんなの旅に対する考え方が変わったこと。単純に昔よりも多くの人が頻繁に旅行をするようになりましたよね。それで、いまは人が何かをするとき、個人個人がストーリーを創り上げる時代。そこで旅にどんな意味合いを持たせるか、自分にどんな価値をもたらしてくれるのかが重要になってきて、以前は実用性がメインだったスーツケースは、そのストーリーのシンボルになってきたんだと思います。

もうひとつの理由は、人々のライフスタイルが変わってきたことでスーツケースに対する考え方も変化してきたから。イットバッグとして、アクセサリーとしての役割も強まっていますよね。だから〈リモワ〉も、ラゲージブランドではなくてライフスタイルブランドだという風に、位置付けを変えてきました。

ハイエンドなものとストリートとの距離はかなり縮まりましたよね。

ヘクターそうですね。“ラグジュアリー” に対する考え方が変わってきたのは良いことだと思ってます。ラグジュアリーっていうのは個人的な価値観のことで、金額のことじゃない。例えば〈エルメス〉のトランクはラグジュアリーだけど、質の良い日本のコットンでつくられた3,000円のTシャツもラグジュアリーですよね? それに、いまは24時間ラグジュアリーで生きている人ってほとんどいないと思うんです。それよりも、機能性だったりとか、生活のポイントでのラグジュアリーさが好まれる時代だと思います。

もちろん、プライベートジェットで葉巻を吸うような人たちは常に〈リモワ〉を持っていましたし、そういうお客さんにも満足してもらえるような商品をいまも本気で作っています。本質的なものは変わらないんです。でも、20年前だったらスケートボードをやっている子たちは〈リモワ〉に興味を持っていなかったと思うし、コンテンポラリーアートとかにも関心が薄かったと思います。だけど、いまはある。こうやって色々な興味から、新しいお客さんにもこのブランドに来てもらうことが大切だと思っています。

物も情報も溢れている現代ですから、その中から何かを選ぶときはそういう個人の意思が色濃く反映されますよね。

ヘクターやっぱり結局は、好きかどうかが大事なんだと思います。仕事だって、自分の好きなことを持ち込めば成功できる。ブラックメタルが好きな人ならそれをずっと続けていくとか、〈コカ・コーラ〉が好きならそれを突き詰めるのも良いと思う。その人が情熱を持ってるっていうのが、人に伝わることが大切。だから、ぼくも好きなことを仕事にしてきたし、いまだってそう。クリエイティブな人たちって、きっと自己中心的な人たちなんだと思います(笑)。

INFORMATION

リモワストア 銀座7丁目

営業:11:00〜20:00
住所:東京都中央区銀座7-9-17
電話:03-3575-5855

リモワ クライアントサービス

電話:072-994-5522
www.rimowa.com

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