有働幸司(以下、有働)ブランドを立ち上げた翌2006年、代官山に店を出しました。それから十余年。次のステップとしてその店を閉めたのが昨年2月のことでした。改めて、店を構えるならどこがいいか。沈思黙考して出した結論はやっぱり代官山でした。かつて原宿で仕事をしていたこともあって、そのゆったりと時間が流れる感覚が無性にホッとできた。やはりこの街を離れたくない、そういう思いでした。
有働アトリエを併設しているので、ラボ。オープンキッチンのようにつくり手が見える店にしたかったんです。ファストファッション隆盛のなか、ぼくらがやるべきかたちはそういうことじゃないかと。ただ、希望にかなう物件はなかなかない。結局、探しはじめて1年近く掛かってしまいました。時間は掛かりましたが、外観も味わいがあって気に入っています。
店づくりはブランドのコンセプト同様、クリーン&エレガントを心がけて、もともとの素材を生かすようにしました。唯一造作を入れたのは部屋の真ん中に設けた仕切りです。
入って右手を店、左手をアトリエにしました。ガラスの戸からアトリエが覗ける寸法です。まだ届いていないんだけど、ガラス戸の正面に作業台を置いて、そこで型紙を切ったり、トワルを組んだりしようと思っています。
本当は仕切りをすべてガラスにするつもりだったんですが、スタッフの強硬な反対にあいまして(笑)。服屋って生地の切れ端や資料が散乱しますから。でもその混沌とした空間もまた、いいんですけどね。
週末は売り場に立つつもりです。ドメスティックブランドって若いスタッフが多い。ぼくともうひとり、40代のスタッフが接客をさせていただきますから、中年の魅力も味わえますよ(笑)。