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FEATURE|有働幸司が15年掛けてたどり着いたファクトタムの店。

有働幸司が15年掛けてたどり着いたファクトタムの店。

FACTOTUM LAB STORE

有働幸司が15年掛けてたどり着いたファクトタムの店。

ドメスティックブランドの嚆矢、〈ファクトタム(FACTOTUM)〉が創業15周年を機に3月2日、フラッグシップストアを東京・代官山に再び移転リニューアルした。その店にはデザイナー、有働幸司さんの気の遠くなるような時間を経て出した答えが詰め込まれている。ご本人のインタビューを通じて、ストアの魅力やブランドの現在を紐解いた。

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有働幸司

1971年、熊本生まれ。「ビームス」を経て2004年、〈ファクトタム〉を設立。2014年、TOKYO FASHION AWARD受賞。2017年、イタリアでも指折りのファッションブランド〈コスチューム ナショナル〉のクリエイティブダイレクターに就任。

オープンキッチンのような店。

待ちに待ったリスタート、おめでとうございます。

有働幸司(以下、有働)ブランドを立ち上げた翌2006年、代官山に店を出しました。それから十余年。次のステップとしてその店を閉めたのが昨年2月のことでした。改めて、店を構えるならどこがいいか。沈思黙考して出した結論はやっぱり代官山でした。かつて原宿で仕事をしていたこともあって、そのゆったりと時間が流れる感覚が無性にホッとできた。やはりこの街を離れたくない、そういう思いでした。

お店の名前は「ファクトタム ラボ ストア」。

有働アトリエを併設しているので、ラボ。オープンキッチンのようにつくり手が見える店にしたかったんです。ファストファッション隆盛のなか、ぼくらがやるべきかたちはそういうことじゃないかと。ただ、希望にかなう物件はなかなかない。結局、探しはじめて1年近く掛かってしまいました。時間は掛かりましたが、外観も味わいがあって気に入っています。

店づくりはブランドのコンセプト同様、クリーン&エレガントを心がけて、もともとの素材を生かすようにしました。唯一造作を入れたのは部屋の真ん中に設けた仕切りです。

入って右手を店、左手をアトリエにしました。ガラスの戸からアトリエが覗ける寸法です。まだ届いていないんだけど、ガラス戸の正面に作業台を置いて、そこで型紙を切ったり、トワルを組んだりしようと思っています。

本当は仕切りをすべてガラスにするつもりだったんですが、スタッフの強硬な反対にあいまして(笑)。服屋って生地の切れ端や資料が散乱しますから。でもその混沌とした空間もまた、いいんですけどね。

週末は売り場に立つつもりです。ドメスティックブランドって若いスタッフが多い。ぼくともうひとり、40代のスタッフが接客をさせていただきますから、中年の魅力も味わえますよ(笑)。

サスティナブルとクラフツマンシップ。

ストア・コンセプトに掲げた4つの “R” について聞かせていただけますか。

有働ひとつ目の “R” がリリース。フラッグシップストアですから、すべての新作がここから発信されます。

もうひとつがリメイク。長年買い込んできた古着がそれこそ腐るほどある。ただの資料として寝かせておくのはもったいないと考えていました。

パッチワークのコレクションですね。

有働ええ。昔から付き合いのあるデニム工場に丸縫いができるベテランの職人さんがいます。彼に委ねて作品をつくってもらったら面白いものができるんじゃないかというところからはじまっています。50本のデニムをお渡ししてできあがったのは10点ほどですから、非常にコスパは悪い(笑)。けど、とってもいいものができました。

三つめが、リバイブ。生き返る、という意味です。これまた贔屓にしている加工屋さんにお願いして売れ残ったアイテムに製品染めをしてもらいました。今回は黒で統一。

サスティナブルな方向性ですね。

有働サスティナブルの先に手のぬくもりが仄見えるもの。店のつくり同様、ここが肝要です。これまでの職人さんは下請け、黒子といった印象でした。彼らの才能は素晴らしく、彼らがいるからぼくらは心おきなくクリエイトすることができる。彼らにスポットを当てたかった。

自由に楽しくやってもらいたいので、量も納期も価格も制限を設けていません。お客さんがそのグルーヴに共振してくれることを願っています。

最後が、リスペクト。〈ファクトタム〉は毎シーズン、テーマを設けてコレクションをつくり上げています。その時々の琴線に触れた街を訪れて、そこで目にして、感じたカルチャーを落とし込む。創業以来変わらないこの手法を、VMD(ヴィジュアルマーチャンダイジング)に反映させます。

今シーズンのテーマは “非常の罠”。(スタンリー)キューブリック監督作品『KILLER’S KISS』の邦題から採っています。彼にとって2作目くらいの作品。低予算で、彼は脚本、制作、撮影、編集と1人5役と大活躍しているんです。『KILLER’S
KISS』はまさにフィルム・ノワールであり、その世界にも大いに影響を受けていますが、何よりキューブリックのインディペンデントなスタンスにしびれた。

リスタートを切るぼくにとってぴったりのテーマでした。で、何度も足を運んでいますが、改めて一週間ほどブルックリンに滞在しました。そこで感じたフィフティーズ、60年代のモダンさをミックスしました。

ジャージーのセットアップ(コレクション写真の上から3枚目)は映画の主人公がボクサーだったので。ステテコでも知られる日本伝統の楊柳生地でサイドを切り替えています。そこに縦書きで “noir(ノワール)”の文字を入れました。前シーズンのテーマだった和の残り香も。

60年代のトラックジャケットをモチーフにしたジャケットとコートは光沢を出すチンツ加工で仕上げています。素材を生かす加工なので、ドレープも経年変化も楽しめます。

気づけば15年。

今年は節目の年ですね。

有働おかげさまで15年。気づけば15年という感じで、シーズンシーズンの積み重ねでここまできました。毎シーズン、少しずつでも成長したいという気持ちでやってきました。

それは見せ方ひとつとってもそう。スタート当初はヴィジュアルブックをつくっていました。一流のアーティストと組んで徹底してつくりこみましたね。次が東コレ。そしてその次が海外への出展。まさに一歩一歩で、そのスタイルは変わってきました。

先ほどのお話にもありましたが、〈ファクトタム〉といえば旅を切り口としたシーズンテーマで知られます。

有働ぼくにとっては服同様、音楽、映画、文学、アートも欠かせない存在です。それらが生まれた土地を旅してまわっています。おそらくきっかけは学生のころに読んだ村上春樹。そこからアメリカ文学に傾倒していって、芋づる式に興味の対象が広がっていきました。

そして、リアルクローズ。

有働一言でいえば、タンスのなかの一着として残ってほしい、という願いです。デニムをメインのアイテムに据えるのはまさしくリアルクローズなアイテムだからです。地べたに座っても気にならないし、きれいなインディゴブルーならかしこまった場所にだって行ける。これほど現代のライフスタイルにあったアイテムはないのでは。

ヴィンテージは憧れの対象ですし、超えようなんて気持ちはありませんが、いまの技術、感性でアップデートすることはできる。

ファーストコレクションで完成させたストレッチ素材を織り込んだスキニーはそんなスタンスから生まれたものです。ヴィンテージ加工も早くから取り組んできました。その特徴はヒゲもブラストもフラットでクリーンであるということ。

ただ、大手がやるような機能重視のデニムをつくるつもりはありません。あくまで美しいデニムを追求したいと思っています。

〈ファクトタム〉のデニムといえばシルエットも魅力のひとつですね。

有働現在のラインナップはスキニー、ストレート、テーパード、そしてシューカットの4つ。納得がいくまで時間を掛けてつくり込んでいますが、できたからといってそれで終わりではありません。マイナーチェンジは絶えずしますし、ステッチもリベットも配色も常により良いものを探しています。

ゆるやかで心地いい関係を目指して。

最近は〈ファクトタム〉出身のデザイナーの活躍も目立ちます。

有働ブランドを立ち上げて15年。スタッフも育ってきました。次のステージに進みたいというスタッフがいればバックアップするのもやぶさかではありません。〈サージ(SERGE de blue)〉はぼくと一緒にデニムを担当していた森光弘が手がけるレディースのデニムに特化したブランドです。社内で立ち上げて、独立しました。この春には〈イチエフ(1/F)〉もデビューしました。デザイナーの寺尾和久はDJとしても活動していて、クラブシーンにインスパイアされたデザインが特徴です。

そうしてゆるやかで心地いい関係が続けられたら、こんなに嬉しいことはありません。

〈ファクトタム〉はラテン語で勝手に生きろ、という意味です。アメリカの作家、チャールズ・ブコウスキーが書いた本のタイトルを拝借しました。登場人物のビートニクな生き方にシンパシーを抱いて名づけましたが、そのときの高揚はいまも薄れていません。

FOUR CLASSICS THIS SEASON
フィフティーズの雰囲気香る代表作。

  • ファクトタムが得意とするレトロスポーツを体現したチルデンニットセーター。柔らかくふくらみのあるアクリル混紡のコットンはデオドラント加工で防臭効果も。¥23,000+TAX
  • コットンとアクリルの混紡糸を片畦編みしたハーフジップ。イギリスゴム編みともいわれるそのニッティングは生地に厚みを出し、伸び縮みを抑える特徴がある。¥25,000+TAX
  • 有働さんがインタビューでも触れたシーズンタイトルの “NOIR” をシャワーのように無数にプリントしたシャツ。くだんの楊柳生地は接地面が少なく、清涼感がある。¥27,000+TAX
  • アメリカのボクシング&フィットネスウェアの名門〈エバーラスト(EVERLAST)〉とコラボしたスウェットシャツ。どこか懐かしいプリントはオリジナル。¥21,000+TAX
  • 〈ファクトタム〉永世定番の12ozリジッドストレッチデニムのテーパード・モデル。モデル名の「JACK」はビート文学を代表する作家、ジャック・ケルアックから。¥16,000+TAX

INFORMATION

FACTOTUM LAB STORE

住所:東京都渋谷区恵比寿西2-17-16 代官山TKビル 1F
営業時間:12:00〜19:00
電話:03-5428-3434
factotum.jp

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