アウトドアショップではなくキャンプ洋品店。
まずは今回、なぜ京都に新店をオープンすることになったのでしょうか。以前からこの街でという構想はあったのでしょうか?
山根 そうですね。東京のお店には関西から来られるお客さんも多いんですが、尋ねてみると特に京都の方が多かったんですよ。それで京都在住の友人に聞いたら、「京都はキャンパー多いっすよ」って。これ実は、大阪からだと手軽なキャンプ場が少なくて、逆に京都は滋賀のキャンプ場に行く人が多いことが大きな理由らしいんですよね。それともう一つ、僕は「ACE HOTEL」が昔から好きで、ずっとアジアにはありませんでした。でも今年、日本初の「ACE HOTEL」が京都にできると聞いて、だったら僕も京都にショップを出したいなと。しかも、この場所から同じ並びの100メートル先にできるんです(笑)。
なるほど、「ACE HOTEL」の京都進出がきっかけだったんですね。では、この京都店でお客さんに注目してほしい部分はどこになるのでしょうか?
山根 僕たちは〈ノルディスク〉のオフィシャルのリテイルパートナーなので、〈ノルディスク〉の製品を通じた世界観を日本のキャンプスタイルに合うようにディレクションした品揃え・空間にしています。なのでお店に入った瞬間に、その空気感を感じていただけると思います。もちろん〈ノルディスク〉の製品はすべて揃うのですが、何より店舗の大きさにはこだわりました。東京のショップと比べて1.5倍くらいのフロアになります。テントを3張り設置することができる店って、そうそうないんじゃないでしょうか。それとやっぱり小林さんの〈マウンテンリサーチ〉コーナーです。
その〈マウンテンリサーチ〉に関しては、ファンにとっては待望のコンテンツといってもいいのではないでしょうか?
小林 そう言ってもらえると嬉しいね。でもショップ in ショップ…、ん~、って言われると、まだちょっと違うかな。そう呼んでもらえるようになれるのは、もう少し先なのかなと思っていて。この店のボリュームに見合うレベルになるまでは、まだまだ物量が少ないし、現状だと“マウンテンリサーチコーナー”かな(笑)。もう少しラインナップが揃ったら、違う見せ方も提案してゆけたらいいなって思っています。
今よりもっと増えるとなると、本当に待ち遠しいですね!今回のプロジェクトにあたっては作戦会議というか、お二人でコミュニケーションを図る機会も当然多かったと思います。お互いの仕事への姿勢やスタイルについて、どのように感じられましたか?
山根 やっぱりすごく勉強になりました。僕は〈エフシーイー〉というブランドをやっていることもあって、小林さんの店舗づくりやアイテムの見せ方、考え方など、本当に気づくことが多かったですね。だから一緒にやるというよりも、小林さんの仕事ぶりを間近で見られるチャンスをいただけたという感覚に近かったです。
小林 今はWEBで買い物することが当たり前の時代だよね。そんななかアウトドアショップに足を運ばなきゃいけない必然性は、なんといっても店内にテントが張ってあることだって思います。そういう意味で、このお店はそれができる広さと天井の高さがあるというのがまず凄いなと。しかも1つじゃなく3張りも。そんなショップをつくる人はいまや山根くんくらいでしょ(笑)。そもそも〈ノルディスク〉はゆったりとアウトドアを楽しむブランドだから、どこかに一日だけ滞在するというより、一週間かけて滞在するためのテントって捉えると、それは僕自身のスタイルに合っているし、個人的にも長らく気にしていたブランドだったから、山根くんと一緒に仕事ができて良かったと思っています。
京都店のコンセプトも、そのあたりにヒントがありそうですね。
小林 そう、さっき山根くんも話してたけど、ここは広さが最大の面白さだと思っています。ベースとしてそれがあって、ギアや洋服も絶妙なバランス感で置いてある。かつて僕らが気になっていたものもあれば、いま気になっているものもある。とても上手くできたブレンドコーヒーとでも言うような(笑)。それは山根くんがこのお店でやろうとしていることのなかで、一番面白いと感じるところ。もう少し小さい店舗という選択肢も本当はあったと思うんだよね。でも、それをしない本気度合いというか…、あとは非日常感を存分に味合わせてくれるところじゃないでしょうか。店内に大きなテントが張ってあるショップに入ってワクワクしない人は、そもそも居ないんじゃない?(笑)
山根 でも、アウトドアショップでもテントが張ってあるところって意外に少ないですよね?
小林 さっきも言ったけど、やっぱりWEB(で買い物をする人)が多いからね。わざわざ足を運んでもらうために、何を見せなければいけないかっていうのは、ここに来てもらえるとわかるような気がします。
京都で、しかも街中に出店する意義というのは何かあったのでしょうか?例えば同じ京都でも、郊外という選択肢は?
山根 意義というよりは、出店の第一条件として、天井の高さがあって自然光が入ること。そしてテントを3張り以上設置できることが前提としてあったんです。20軒くらいの物件をチェックしたんですが、ここはすぐに仮押さえしましたね。それとここは、扉の外の植栽のところに人工で作られた小川があって、15時頃から水が流れるんですよ。お店なのでドアを開けての営業が殆どなのですが、水の流れる音がこんな都会のど真ん中で聴こえてくる。これもすごく気に入りました。ロケーションではなく、なぜ広さにこだわるかというと、東京のお店でテントを広げてみたいとお客様に言われることが多かったんです。でも、一番大きいモデルは広げられないんですよね。だからここはテントのポールを立てて、広さを確かめられるようなフロアにしたかった。ちょうど植栽前には吹き抜けの大きなスペースがあるので、そこで実際のサンプルも確認いただけます。あとはクリエィティブな仕事をしている方の琴線に響くお店にしたいという考えがありました。だから、東京の店舗と同じで、ブランド数もグッと絞っています。PCで例えるならWindowsではなく、Macを選ぶような人に向けているというか。わざわざ訪れてくれる人のためのロケーションであり、そのためのラインナップにしています。
小林 そう。やっぱりコアな仕事をしているクリエィティブな人が京都には多いよね。大阪にも神戸にも行かず、あえて京都に留まっているような印象かなぁ、あくまで想像だけど。ナメてると、街角にとんでもないクリエイターやデザイナーなんかが潜んでいそうな雰囲気がある!
京都や関西のクリエイターにも向けた店舗ということなんですね。では、小林さんが考える〈ノルディスク〉の魅力とは何でしょうか?
小林 〈ノルディスク〉といえばコットンだよね。でも、これを日本を含めたアジアで使うと高湿度の問題でカビが生えやすいし、世界中どこで使おうと重たいですよね。だから、よっぽどの理由や意思の強さみたいなのがないと使えないテントかなと。しかも一人で使う人はいないだろうから、手に入れるにあたってはきっと家族の同意が必要なんだよね。だから、家族に対して値段も重さも半端じゃないものを必死になって説得できるくらい、キャンプ好きな人のための道具だと捉えています。あとはさっきも話したように長期滞在向け。だから〈マウンテンリサーチ〉の木の蓋とか金属の食器とか、そういう無骨で頑丈な素材のギアとすごくシンクロすると思います。
山根 〈ノルディスク〉のテントを手に入れるのは、クルマを買う行動に非常に似ています。やっぱりいい値段だから、まずはお父さんが事前に下見に来られるんですよ。それで後日、家族を連れて大体3時間くらいは滞在されるんです。そんなファミリーの方々のために、ちょっと大きめの商談テーブルも作りました。よくカーディーラーにあるシステムです(笑)。また、業界初のVRも導入して、すべてのテントのモデル疑似体験できますので、合わせて見てもらえれば嬉しいですね。
最後に、「NORDISK CAMP SUPPLY STORE KYOTO」からファンに伝えたいことを教えてください。
山根 あくまで道具を見てもらう場所なので、その先には楽しみしかないと思うんです。だからちゃんと楽しんでもらえるよう、テントの張り方や道具の使い方などをきちんと伝えられるお店じゃないと意味がない。単なるアウトドアショップではなく、キャンプの洋品店として。
小林 「山根の漢気」っていうお店でいいんじゃない、裏の名前は(笑)。それくらい彼の想いが詰まったお店です。期待に胸を膨らませて足を運んでもらいたいですね。
NORDISK CAMP SUPPLY STORE KYOTO
住所:京都不京都市中京区烏丸通六角下ル七観音町634 カラスマプラザ21 B1F
電話:075-754-8809
営業:11:30~20:00 / 月曜定休(祝日の場合は営業、翌火曜休)
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