黄色いラインが引かれた床とカーブしたテーブルは、空港のバゲッジクレームをイメージしたもので、こんな見せ方にもブランドの根幹にある “旅” との蜜月が現れている。
そして、その手前のスペースではこのお披露目に際し、2人のアーティストをフィーチャー。カリグラフィやペインティングを得意とするUSUGROW さんと、モデルであり創作活動も行うCOLLIUさんという、性別も作風も異なる作家たちに白羽の矢が立った。そのキュレーションを務めたのはこれまでにさまざまなアートやストリートカルチャーを掘り下げてきたフリーマガジン『ヒドゥン・チャンピオン』の編集長を務める松岡秀典さんだ。
「今回の〈リモワ〉の企画ではブランドの過去のアーカイブをアーティストの作品と一緒に見せる、ということだったので、大きな空間をうまく使える作家さんがいいかなと思い、この2人にお声掛けしました。COLLIUさんは絵を仕上げるというよりもスペースを上手に使って表現をされることが多くて、平面的な人物の画風や色使いがレトロにも見えるしモダンにも見える。今回のようなヒストリカルな展示に、時代背景が特定しにくい彼女の作風が出会うのが面白いかなと思ったんです」と松岡さん。一方のUSUGROWさんの起用の理由はこうだ。
「以前、BCTION(ビクション)というアートプロジェクトで廃ビルを使ったエキシビションがあったんですが、彼はその壊れた床の全面にカリグラフィを描いていて、それがすごく格好良かったんです。広いスペースをうまく使っていたし、自分で展示も企画したりしているからプロデューサー的な視点も持っている。今回の〈リモワ〉の展示でもこの空間を上手に使うんだろうなという期待の上でのオファーです。それにカリグラフィっていうのは作家独自の文字で、国境という概念を越えるもの。スーツケースでの旅がキーワードになるこのブランドにはぴったりかなって」
そしていざ企画の発表前、でき上がった作品を前にして松岡さんは嬉しそうだ。
「男性と女性、モノクロとカラフル。“旅の異国感” みたいなイメージで、あえて対比が面白い2人にお声がけしたんですが正解だったなと思っています。でき上がったものが素直に僕の想像を超えてきたので、それがすごく嬉しかったですね」