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FEATURE|リモワと銀座、歴史と文化の交差点。

リモワと銀座、歴史と文化の交差点。

An ongoing heritage

リモワと銀座、歴史と文化の交差点。

旅はいつだってフレッシュだ。そこには必ず、まだ見たことのないモノ、ヒト、コトが待っている。そして、旅の相棒たるスーツケースを1世紀以上つくり続けてきた〈リモワ(RIMOWA)〉は、そんな未知と出会う喜びを誰よりも知っているのだ。先ごろお披露目されたのは、そんな老舗が東京・銀座の旗艦店で行っている新たな試み。彼らが積み重ねてきたものづくりのストーリーと、気鋭のアーティストによる作品とを交えた、古今を結ぶインスタレーションだ。ただの旅行カバンの枠を超え、ライフスタイルとカルチャーのひとつのアイコンとなった〈リモワ〉。その強い個性のバックボーンが、少しだけ見えてきた。

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生きた時代も場所も違う、人々の暮らしが垣間見えるアーカイブ。

ブランド設立120周年の締めくくりとなる昨年の12月にオープンした新たなランドマーク「リモワストア 銀座7丁目」。新作や定番モデルが整然と並ぶ店内を抜け、階段を上がって解放されたばかりの3階に足を踏み入れると、そこに並ぶのはもちろん、〈リモワ〉のスーツケースの数々。だけど、どれも見たことのないものばかり。それもそのはず、ここに展示されているのはすべて〈リモワ〉の長い歴史の中で生まれたアーカイブなのだ。

「リモワ ヘリテージ ギンザ(RIMOWA Heritage Ginza)」と題したこの企画展を飾るのは、年代もデザインもさまざまにピックアップされた約30個のプロダクト。古いものでは100年以上前にまで遡り、当時の空気をそのままいまに伝えるような年季の入ったスーツケースの重厚なつくりは、人々にとって旅が船から列車へと徐々に移行していったという往時の時代背景を実感させてくれる。

合板にリネンを貼ったケースは列車のキャビンに積載することを前提につくられた’30sのアーカイブ。持ち主というより、その従者が運ぶことが多かったそうだ。
コントラバスやチェロなどの弦楽器を運ぶために製作された輸送用のケースは20世紀初頭のもの。合板に木製の補強が施されている。
旅先での衣装を収納し、持ち運ぶためのワードローブケース。合板をコーデュロイで覆う形でつくられている。こちらも1900年代はじめに生まれたピース。
比較的新しい、’73年製のトランクはアルミ素材。〈リモワ〉のアイコンでもある凹凸状のグルーブデザインは’50年に登場したが、こちらは槌目のようなキャビア調の質感。貼られたステッカーから元のオーナーの人物像を想像するのも楽しい。
レトロモダンな表情がいま見ても魅力的な「ホリデイ」と銘打たれた若者向けのコレクション。素材はABS樹脂で、’88年に生産されたものだが既に現代の〈リモワ〉製品の面影も。
グルーヴ付きアルミニウムを使ったギターケースは2000年代につくられたオーダーメイドの一品。長い歴史の中で、こうした変わり種や専門性の高いアイテムも多数存在している。

リモワに新たな色を添えた、2人のアーティスト。

黄色いラインが引かれた床とカーブしたテーブルは、空港のバゲッジクレームをイメージしたもので、こんな見せ方にもブランドの根幹にある “旅” との蜜月が現れている。

そして、その手前のスペースではこのお披露目に際し、2人のアーティストをフィーチャー。カリグラフィやペインティングを得意とするUSUGROW さんと、モデルであり創作活動も行うCOLLIUさんという、性別も作風も異なる作家たちに白羽の矢が立った。そのキュレーションを務めたのはこれまでにさまざまなアートやストリートカルチャーを掘り下げてきたフリーマガジン『ヒドゥン・チャンピオン』の編集長を務める松岡秀典さんだ。

「今回の〈リモワ〉の企画ではブランドの過去のアーカイブをアーティストの作品と一緒に見せる、ということだったので、大きな空間をうまく使える作家さんがいいかなと思い、この2人にお声掛けしました。COLLIUさんは絵を仕上げるというよりもスペースを上手に使って表現をされることが多くて、平面的な人物の画風や色使いがレトロにも見えるしモダンにも見える。今回のようなヒストリカルな展示に、時代背景が特定しにくい彼女の作風が出会うのが面白いかなと思ったんです」と松岡さん。一方のUSUGROWさんの起用の理由はこうだ。

「以前、BCTION(ビクション)というアートプロジェクトで廃ビルを使ったエキシビションがあったんですが、彼はその壊れた床の全面にカリグラフィを描いていて、それがすごく格好良かったんです。広いスペースをうまく使っていたし、自分で展示も企画したりしているからプロデューサー的な視点も持っている。今回の〈リモワ〉の展示でもこの空間を上手に使うんだろうなという期待の上でのオファーです。それにカリグラフィっていうのは作家独自の文字で、国境という概念を越えるもの。スーツケースでの旅がキーワードになるこのブランドにはぴったりかなって」

そしていざ企画の発表前、でき上がった作品を前にして松岡さんは嬉しそうだ。

「男性と女性、モノクロとカラフル。“旅の異国感” みたいなイメージで、あえて対比が面白い2人にお声がけしたんですが正解だったなと思っています。でき上がったものが素直に僕の想像を超えてきたので、それがすごく嬉しかったですね」

それぞれの旅、それぞれのビジョン。

シンプルなカリグラフィでアレンジされた、USUGROWさんの作品。「実際に使うとしたら、というイメージでカスタムしました。剥げにくいエナメル塗料を使っているのもそのためです」とは本人の談。壁面にはダンサーのグラフィックと “Spirit beyond borders” というメッセージが。

「ここで掲げた言葉は、昔から抱いているぼく自身のテーマでもあるんです。芸術とか文化とかって、それ自体が旅をするようにあちこちに伝わって拡散していく。ダンスとか文字とか、歌でもそうだと思うんですが、歴史の中で思想弾圧に遭っても、史実から抹消されても、きっと残っていく。それは時代の有力者が書き残した書物なんかよりも真理に近いんじゃないかと思っています。だから、今回のオファーをもらってから閃いたというよりも、ずっと自分の中にあった考え方ですね。“border” っていうのは国境だけじゃなくて、エリアもそうだし人と人との境界だってそう。それを全部越えようっていうのが自分のテーマです。いつもフラットな気持ちでいたいから、ぼくの作品が普段は縁のない銀座の街で展示されるのだって全然違和感はないんです(笑)」とUSUGROWさん。

カラフルなシートを切り抜き、デコレートしていったスーツケースはCOLLIUさんの作品。彼女はでき上がった作品を前にして「モチーフ選びには風景をイメージした部分もありつつ、それ以上に全体のバランスとして成立させることを意識しました。小さいドローイングの集積みたいなイメージですね」と笑う。

一方のCOLLIUさんは、今回の企画への参加についてこう話す。「もともと、モデルの方のお仕事でお会いするヘアメイクさんたちで〈リモワ〉のトランクを使っている方が昔から多かったんですよ。だから、私にとってはハードな使用にも耐えてくれる、頑丈で機能的なものっていうイメージが強いです。スーツケースをカスタムする上で、ステッカー使いというのはすごく王道だけど、その発想で壁まで装飾したらスーツケースともリンクして面白いんじゃないかと思って、この形に行き着きました。私自身、旅が好きで、今年もイタリアとフランスに旅行に行ったり、それ以外でもモデルの仕事で海外に行かせていただくことも多いんです。旅先には自分が過ごしている日常とは違う風景やカルチャーが必ずあるから、そういうところの色彩や建築とか、大きな空間からインスピレーションをもらうことがよくあります。直接的に作品に活かされるというよりも、考え方とか視点とかにそういう経験が生きているような気がしています」

横に並んだ100年前のトランクはひとまずその役目を終えたが、その隣で未来を見据えて語るアーティストたちに、その遺産はきっと何かをもたらしている。いまと昔を結ぶ〈リモワ〉の旅は、きっとまだまだ終わらない。

Profile

山根敏史

COLLIU

武蔵野美術大学在学中からモデルとして活動をスタートし、現在はアーティストとモデルを兼業。小学生時代の3年間を香港で過ごし、映画や漫画に触れて育つ中で表現や創作に関心を深めている。ファッションブランドとのコラボレーションやミュージシャンへのアートワークの提供、商業施設のウィンドウディスプレイの制作など、多彩なフィールドで活躍する現代のイットガール。

山根敏史

USUGROW

福島出身。自身が10代から傾倒してきたハードコアパンクを筆頭に、アンダーグラウンドのミュージックシーンでのフライヤー制作などからキャリアを始めたのが90年代前半のこと。CDやレコードジャケットのアートワークやさまざまな企業とのコラボレーションなど、大規模な表現の場を多く得たいまでは、ルーツを感じさせつつ、型にはまらない自由な創作活動を続けている。

INFORMATION

RIMOWA Heritage Ginza(リモワ ヘリテージ ギンザ)

営業:11:00〜20:00(最終入場19:30)
住所:東京都中央区銀座7-9-17-3階

リモワ クライアントサービス

電話:072-994-5522
www.rimowa.com

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