東京から3時間で行ける日本海の島、佐渡。

2018年からはじまった、地方の文化に焦点を当てる旅。
1958年に新潟で創業し、いまなお新潟に本社を構える〈スノーピーク〉。多くの製品を新潟で製造し全世界で販売、その収益はできる限り地元に還元していくという、いわば地域密着型グローバル企業。だからこそ、地方に息づく文化の素晴らしさを知っているし、消えゆく文化も間近で見てきた。その消えゆく文化に危機感を抱き、発案されたのが「LOCAL WEAR TOURISM」です。
昨年からスタートし、今年は5月中旬から岡山県・犬島、新潟県・佐渡島、岩手県・北上へと参加者たちと旅をしました。
フイナム編集部が参加したのは新潟県・佐渡島の回。
東京から最短3時間で到着する佐渡島はその昔、京都から流罪を言い渡された文人や政治家たちが流されてきた地。金山で栄えた歴史ももちます。

佐渡島の玄関口・両津港から10分の場所にある船小屋。

奥に見える加茂湖では牡蠣の養殖が盛んに行われている。
島に到着するなり案内されたのは船小屋。ここから1泊2日、地方の魅力を探るツアーがはじまりました。
船小屋での開会式を終えベースとなるキャンプ地へ。場所は神社の境内。〈スノーピーク〉主催のツアーなのだから、寝床はテント、食事はもちろん屋外で。

キャンプ地までは徒歩で。木々が生い茂るのどかな道を行く。

神社の境内に設置された〈スノーピーク〉の「アメニティドーム」。
ディナーと焚き火、そして伝統芸能を堪能する夜。

〈スノーピーク〉のギアでコーディネートされた食卓。
日も傾きかけてきた頃、待望のディナータイムがスタート。そこで腕をふるってくれたのがデンマークから来日したシェフ、アラン・ハウンストラップ氏。

シェフのアラン氏。その実力は折り紙付き。
このアラン氏、世界中の美食家を唸らせる革新的レストラン「noma」とともに、コペンハーゲンの新たな食文化の普及をけん引し、デンマーク王朝でも料理を振る舞うほどの実力者です。



調理方法は豪快そのもの。参加者およそ50人分を一気に仕上げる。
アウトドアという調理に不向きな環境で、焚き火やバーナーなどを使い、丁寧に豪快に調理していく。味付けや火入れは、アウトドアで作ったとは思えないほど繊細。屋外でこんな食事にありつけるのも「LOCAL WEAR TOURISM」の醍醐味です。なぜ彼が〈スノーピーク〉と接点をもったのかは、後半のインタビューで。




鬼太鼓を披露してくれたのは佐渡の中心、新穂地区の青年会の人たち。
20時からは、境内にある能舞台で佐渡の伝統芸能である鬼太鼓が披露されました。
能舞台自体めずらしいですが、佐渡には日本の3分の1、約200の能舞台があります。なぜ佐渡に、と思うでしょう。それが先述した流罪の地であったことに起因するのです。
この地に流された罪人は、いまの犯罪者とは少し違う。御上にとって都合の悪い文人や政治家たちが主で、大衆に影響力をもつ人たちだったのです。室町時代のスター猿楽師・世阿弥も佐渡に流れ着いています。そうした背景があり、高尚な文化がいまなお佐渡には残っているのです。
2日目に開催された、棚田での田植え体験。
世界遺産ならぬ世界農業遺産というものがあります。世界的に重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域を呼称するもの。世界57箇所しか認定されていませんが、佐渡の棚田がそのひとつ。

〈スノーピーク〉が借りている田んぼ。今回植えた稲は10月に収穫される。
佐渡島内には7つの棚田があり、〈スノーピーク〉は昨年、そのなかの岩首昇竜棚田の田んぼを1枚借り、米を育て、全国の店舗や「スノーピークイート」で提供していました。今回もその場所で、「LOCAL WEAR TOURISM」のメインイベントである田植え体験を開催。
眼下に日本海が広がり、とにかく美しい棚田。けれど地形上、ここで作物を育てようとすると、平地に比べて何倍もの手作業が必要になってくる。そのため後継者は不足し、棚田で働く人たちは高齢化しています。この原風景も失われる可能性があるのです。
- 1
- 2