代々受け継げる価値がある、時代を感じさせないものたちに囲まれて。

八幡通りに面した同店。壁沿いにグッズ、店内中央にラリーさんの選書が並ぶ。
ー LAのショップは「OK the store」ですが、日本のショップ名は「I’M OK」。キーワードになっているOKの由来について教えてもらえますか?
ラリー・シェーファー(以下ラリー):このショップには世界中の美しくて素晴らしいプロダクトが揃っているんだけど、ぼくらがお客さんに「I’m OK」と伝えることで、お客さんにもOKな状態になってほしいんだ。ここにいるすべての人たちに楽しんでもらいたいし、歓迎したい。OKにはそういったニュアンスが込められていて。
ー ラリーさんが思う美しいものとは?

オーナーのラリーさん。国外への出店は日本が初となる。
ラリー:たとえば椅子を買ったとして、使い続けて2、3年後には「なんだかな…」と思ってしまうことがあるよね。その点〈イームズ〉の椅子なんかは、70年前のものであっても、素敵なものが多い。
ぼくの専門はヴィンテージだけど、レトロなものや懐かしいものには興味がないんだ。心を動かされるのは、古いのにも関わらず、いまデザインされたように見えるもの。たとえば、ヴィンテージの〈リーバイス〉はいま見てもかっこいいだろう? 同じように「I’M OK」で扱っているプロダクトは、古くにデザインされたものなのに、いまだにモダンで古臭さをまったく感じさせない。きっと100年後もかっこいいに違いないはずだよ。
ー 「I’M OK」を語るうえで“タイムレス”も重要なキーワードのように感じます。

ラリーも自宅で使用している〈ユンハウス〉の時計。

世界各地から集めた木工品。スツールや器など多数取り扱っている。
ラリー:そう。まさに、そこに価値があると思ってる。ぼくらが仕入れているものは決して安くないけど、一生使えるものを選んでいるし、子どもや孫に譲れるほどの価値があるはずで。
ぼくは社会人になっても家族と暮らしていたんだけど、あるとき独り暮らしをしようと思って貯金をはじめたんだ。ところが、そのときにフランク・ロイド・ライトがデザインしたデスクを見つけてしまって。貯金額以上のものなのに、買ってしまってね(笑)。
ー 本当にインテリアを愛しているんですね。
ラリー:ぼくがアパートに引っ越したとき、家具はその机しかなかった。ほかの家具は借金して揃えたんだけど、35年前に買ったその机は、いまでもアメリカの自宅で使っているよ。自分の息子に譲っていきたいと思ってる。この考えがきっと、「OK the store」であり「I’M OK」の源流なんだ。
ー そういった価値観があることを踏まえて、「I’M OK」のコンセプトを聞かせてください。

日本のスタッフ宛にラリーが送ったメッセージが床にプリントされている。
すべてのメッセージがポジティブでいてポエティック。
ラリー:いまの時代って、誰かが何かのジャンルに特化しているでしょう。音楽が好きだとか、ファッションが好きだとか。ぼくは自分が興味あるものや詳しいものをお客さんにシェアしていきたい。
このショップはデザイナーだけが満足する場所じゃなく、誰でも手に入るもの、欲しいものが見つかる場所にしたいんだ。だから、高価なプロダクトから子どもが遊ぶおもちゃまで扱っている。そのすべてがぼくの美意識をフィルターにしてセレクトしたもの。ぼくはプロダクトを介して、いろいろな人たちが交わり、コミュニティが生まれるような場所をつくっていきたいんだ。お客さんが楽しんでくれると、ぼくもスタッフも楽しくなる。そうするとコミュニティができて、みんなが楽しめるスペースに育っていく。ぼくがまた日本に戻ってきたときに、「どんな面白いお客さんがいた?」とスタッフたちに聞くのを楽しみにしているよ。
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