流れに身を任せて、自然な進化を楽しんでいきたい。
ー 「I’M OK」の名刺代わりに当てはまるプロダクトを紹介してもらえますか?
ラリー:やっぱり〈カール・オーボック〉だろうね。「I’M OK」のために作ってもらったアイテムもあって。このヤカンには「I’M OK 1/1」と刻印されている。約100万円もする別注品なんだ(笑)。
ー この1点モノのヤカンを誰が買うのか興味深いですね(笑)。
ラリー:ぼくも楽しみにしているよ(笑)。カール・オーボックはオーストリアのモダニズムにおける非常に大きな功績を残した作家。ぼくは彼のヴィンテージ作品を持っていたんだけど、彼が亡くなった後、ウィーンの工房を息子さんが受け継いで制作していることを知人に教えてもらってね。それがきっかけで、「I’M OK」用の別注アイテムを作ってもらえるようになった。おそらく、〈カール・オーボック〉の作品がこんなに揃っているのって、日本だと「I’M OK」くらいなんじゃないかな。
ー 欧米のプロダクトだけじゃなく、日本の民芸品やクラフト品もセレクトしていますよね。ラリーさんにとって、年代だけでなく国も関係ないんだろうなと感じます。
ラリー:まさにそうだね。あえて言えば、スカンジナビアデザインと日本の初期のモダニズムに興味がある。イサム・ノグチの「AKARI」なんかはまさにそうだね。日本のプロダクトは自然と結びついているのが魅力だと思う。
あとは職人による手づくりのものが少なくないということ。いまの時代、世界中のどんな都市でも大量生産が根付いているけど、ハンドメイドには同じものでも手作りならではの微妙な違いがある。たとえば日本のティーカップは地域によって個性がまったく違ってユニークなんだ。そういうところが日本的だし、アメリカの自宅で友達を招いてお茶するときに、いろいろな産地のマグカップで出すと楽しめる。
もうひとつ、過去と現在と未来がつながっている製品が多いことも日本のプロダクトの特徴だね。「I’M OK」で扱っている400年前から伝わる京都の薫玉堂のお香、南部鉄器とかはそれを物語っていると思うよ。
ー 日本のプロダクトについて詳しいんですね。
ラリー:日本には何度も来ていてね。沖縄と岩手以外の都道府県には行ったことがあるんだ。基本的に商品探しの旅をしているんだけど、食と建築巡りを楽しみにしているよ。
昨日、都内のフランス料理店に行ったんだけど、パリよりも美味しかった。ぜひ各地の美味しいレストランの情報を教えてほしいな(笑)。
ー それでは、のちほど(笑)。ところで、世界中のプロダクトを仕入れているなかで、自分でもデザインしたいという気持ちは湧いてこないんですか?
ラリー:ぼくは自分のことをキュレーターだと思っているんだ。クリエイターではなくてね。だから、たとえぼくがひとつの作品をつくったとしても、その間に素晴らしい才能を持った作家たちは、きっと100個のいいプロダクトをつくっているはず。だから、自分で作ろうとは滅多に思わないかな。
ー であれば、世界中の作り手たちと、彼らが作ったプロダクトをプレゼンテーションしたい、と。
ラリー:そのとおり。
ー 「I’M OK」の今後のプランとして、どんな構想を考えていますか?
ラリー:お客さんを歓迎して、何に興味があるのかを知ったうえで、関係を構築して発展させていきたい。その先に、この場所独自のコミュニティをつくっていければと思っているよ。
お客さんから学ぶことがとにかく多い。お客さんの声ひとつで、もしかしたら子ども用品が増やしていくかもしれないし、そういった自然な進化を楽しんでいきたいね。「OK the store」はそうやって25年間育ててきたし、この空間にある多くのプロダクトは、「OK the store」のお客さんたちから影響を受けて仕入れたものでもあるから。
ー 自然な流れから素晴らしい人やプロダクトの出会いが生まれてくる。それもラリーさんが大切にしているポリシーなんですね。ところで、ラリーさんのコーディネート、とても素敵です。
ラリー:ありがとう。このベストは〈ドリス・ヴァン・ノッテン〉なんだけど、ぼくはドリスのベストしか着ないんだ。自宅のクローゼットには花柄のシャツとドリスのベストだけがたくさん収納されているスペースがあってね。ちなみにブレスレットは〈Black Barc〉というLAのブランドのもので、ぼくの友人がつくっていて。彼女は日本人の女性デザイナーなんだ。いまは「OK the store」にプロダクトを置かせてもらっているよ。
- 1
- 2