証言1宇多丸 from RHYMESTER
(ラッパー、ラジオパーソナリティ)

「不良性とかスタイリッシュさとか、自分に無いものを持ってるから憧れる」
ー NITRO MICROPHONE UNDERGROUND(以下NITRO)との出会いについて、教えて下さい。
宇多丸:個々のメンバーで言えば、デビュー前から。チャンネル・ファイブ(’90年代にDABO・SUIKENが、K-Bomb、DJ HAZIMEとともに組んでいたユニット)のときから知ってて、DABOなんかはよくクラブで一緒になったりして遊んでたから、そのまま朝方一緒に「飯行こう」ってこともありました。トラくん(GORE-TEX)はさんピン(キャンプ)のときからで、MACKA-CHINはYOU THE ROCK☆のレコーディングのときに来てたり。どこが最初かよくわからないけど、あの界隈の若者たちとして、認識してました。
ー それぞれ別のタイミングで出会っていたんですね。
宇多丸:そうだね。後年になってから特に親しくなったのはMACKA-CHINかな。当時から俺のフィールドとも親和性が高い気がしてて、「話が合うよな〜」と思ってはいたんだけど。申し訳ないとで歌謡曲掛けてたときにバリバリ乗っかってきてくれたり、何なら俺抜きでそういうチームともつるんでたり。それを“NITROのMACKA-CHIN”がやってくれることの意味がどれだけデカいかってことですよね。嬉しいし、頼もしいしで。
ー 同じ日本のヒップホップシーンにいながら、RHYMESTERとはまったく違うスタイルのグループでしたし、そんなつながりを意外に思うリスナーやヘッズも多いかも知れませんね。
宇多丸:もちろん、みんなヒップホップが好きっていう共通点があるから、敵対するようなことはなかったけど、グループとしては正反対ですよね。3人組でチームプレーを是とするRHYMESTERと、8人いて、しかもみんなバラバラなNITROっていう。俺らでさえ大変なんだから、あれを維持する大変さはもう比じゃないと思うよ(笑)。多分、HAZIMEちゃんたちの仕切りも良いんだろうね。と、思うと同時に、NITROっていう磁場があって、一定期間に引き寄せられるんだろうなとも思う。NITROはさ、想像するのが楽しいグループじゃないですか。“今回は全員集まんのか?”とか、“ちゃんと練習してきてんのかな?”とか。そういう意味でもRHYMESTERとは対照的だね。でも、そういう不良性とかスタイリッシュさとか、自分に無いものを持ってるからこそ憧れるし、それこそ東京ヒップホップだよね、本当に。
ー 確かに、NITROは一挙手一投足が特に気になるグループですよね。
宇多丸:やっぱり東京の不良ですよ。親切じゃない粋さがあると言うか。ペイジャー(マイクロフォン・ペイジャー)イズムの正当な後継者で、それのさらに東京的純化版。俺らはわかりやすく、誰でもコミットできる普遍的な表現や整合性を重んじて、練習もして真面目にやるっていうグループだから。あっちはどう思ってるのかはわからないけど、俺たちは彼らをリスペクトしてますよ。何故なら、かっこいいから。
ー やはり活動再開の報せの突然さも、決して親切ではなかったですよね(笑)。
宇多丸:NITROはやりたいときにやってくれれば良いんですよ。いっぱい曲を出して欲しいとは言わないし、気まぐれなところが良いんだから。律儀になりすぎず、バイオリズムが合ったときにやるのがNITROらしいと思います。完全には途切れずに、「次は? やるの? やらないの?」みたいなことが続くくらいが。それを楽しめるNITROファンはドMですよね(笑)。これからもNITROからの過酷な仕打ちに耐えながら待ちましょう、って感じでいかがでしょうか?(笑)