鈴木:片山さんが〈オリジナルフェイク〉のお店の内装を手掛けていたので、展示会の時期に「一緒に行きませんか?」と誘われてお邪魔したんです。そこで今野くんを紹介していただいて、はじめて話をしました。そのとき今野くん〈YKK〉のファスナーに別注をしていて「これ、よくつくったね」なんて会話をした記憶があります。
ーなるほど、そうだったんですね。
鈴木:今野くんが古着に対する造詣が深いというのは当時から有名な話でしたから、噂に違わずこだわったアイテムをつくるなぁ、と。これはモノづくりをする人にしか分からないと思うんですけど、ファスナーひとつを別注するにしても、対価に見合わない相当な労力を払わないとできないんですよ。日本人が得意とする細かなディテールに対する情熱がしっかりと伝わってきたのをいまでも覚えています。
ー今野さんは鈴木さんのことをご存知だったんですよね?
今野:はい、雑誌などで鈴木さんのことを拝見していたので、実際にお会いする前から存じ上げていました。ちょうどその頃“吊り編み”というワードが気になっていた時期で、〈オリジナルフェイク〉でも日本のモノづくりをベースにしたクリエーションをやろうとしていたタイミングだったんです。
ーでは、その展示会の縁が〈ループウィラー〉との別注アイテムにつながったんですね。
今野:そうですね。でも、すぐにというわけではなく、〈ループウィラー〉へ辿り着くまでにもう少し時間がかかりました。正直に話すと、ほかのブランドからもスエットの別注をやりませんか? というオファーを頂いていたんですが、なんとなくどこか決め手に欠けていて…。そんなときに、たまたまうちに営業にこられた元生地屋の方から「吊り編み機にも優劣がある」という話を聞いたんです。そういった背景はぼくには見えないものだったので、じゃあどうしたらいいですか? と尋ねたところ「〈ループウィラー〉がしっかりとした生産背景を持っている」という返事が戻ってきて。